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番外編
番外編・その19 sideマルコ
しおりを挟む〈マルコ視点〉
ライバルにそこまで言われて、俺は腹を括った。
「私もチャンスをみすみす他人に譲るほど、お人好しではありません。
例え、クロエ様が私を選ばなくても、嫌われても、私はお側を離れるつもりはありませんし。当たって砕けろです」
との俺の言葉に、
「その台詞だけ聞くと、お前、結構ヤバい奴だな」
と宰相は苦笑いした。
俺は、
「随分前に手放したのに、ずっと想いを燻らせている人に言われたくありません」
と言い返した。
すると、
「おい。まだ離縁が成立した訳じゃないからな。今はまだ私の妻だ。
目の前で妻を取り合われるのも、何だか釈然としないんだが…」
と陛下は微妙な顔をした。
「すみませんでした」「申し訳ございませんでした」
俺と宰相は同時に陛下へと頭を下げる。
そんな俺たちに陛下は苦笑いすると、
「…まぁ、いい。とにかく、お前達の気持ちはわかった。
しかし、どちらにしろ、クロエを不幸にしてみろ、命はないと思えよ。それだけは肝に命じておけ。
あとは…クロエ本人の気持ち次第って訳だな」
と陛下は少し寂しそうな顔をした。
そして、
「マルコ、この事はまだ極秘事項だ」
と部屋を出る前の俺に改めて念を押した。
もちろん口外などするつもりはなかったのだが、あの後、クロエに何の用だったのか訊ねられて、思わず顔を見れなくなってしまった自分を思い出す。
きっとクロエの目には挙動不審に見えた事だろう。
一方の俺は、クロエを意識し過ぎて、爆発しそうな想いを抱えたまま、あのプロポーズの日まで過ごす事になったって訳だ。
結局、あの後すぐに、侯爵が倒れて…クロエは陛下と離縁しオーヴェル侯爵となった。
王宮を離れる前の日。
陛下と宰相に『天はお前の味方をした』と言われたっけ。
前オーヴェル侯爵が倒れたのは、本当に偶然であったし、あの事で離縁の決定も早まったのは事実。
もちろん、人の病気を喜ぶ訳ではないが、あの事柄に意味があったとするならば、やはり天は俺に味方してくれたのではないか…とそう思う。
俺は少し昔を思い出しながら、馬車で、自分の向かいに座って窓の外を眺めるクロエに目をやる。
彼女は美しく、聡明で、誇り高く、そして誰よりも可愛らしい。
完璧なように見えて、どこか抜けている所もあるし、それが、より一層彼女を人間らしく見せてくれるのだ。
隙のない女性より、ほんの少し隙のある女性の方がモテる。
隙だらけは逆にヤバいけど。
俺の自慢の妻だが、何故か今だに自分だけのものになった気がしない。
ライバルが多すぎて、俺は全然、気が抜けない。
だけど、彼女以上の女性はこの世に存在しないのだから…そういう女性を妻に持つというのは、こういう事なのだと、諦めるしかないのだろう。
だって、どう考えても俺は、彼女から離れる事など、例え天地がひっくり返ったとしても出来やしないのだから。
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