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番外編

番外編・その16

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「あの日、一報が入った後、ジュリエッタは泣きながら『実家に帰っても良いか?必ずここに戻ってくるから』と私に頼みに来ました。
修道院は刑務所ではありません。
何をそんなに怯えているのかと不思議におもいましたが…彼女は震える声で、『もう私の居場所はここしかない』と言っていました。
お父上の庇護の元、自分がオーヴェル家に君臨していた事に気づいたのでしょう」
と言う院長に、

「ジュリエッタは父の様子を見て直ぐにこの修道院へと戻って行きました。私に父を頼むと頭を下げて。
きっと、この修道院からも居場所を失うのが怖かったのかもしれませんね」
と私は答えた。

…ジュリエッタは案外繊細だったようだ。だからと言って、彼女の今までの行いが無くなるわけではないが。

「彼女はオーヴェル家から帰ってから随分と大人しくなりました。そして…極めつけがお母上の失踪です。
あの当時、ジュリエッタは荒れていましたよ。余程お母上の事が許せなかったのでしょう。そして、そのお母上に似ていると自分を愛してくれていたお父上に合わせる顔がないと…。
きっとお父上からも嫌われてしまった。そう思い込んで、彼女は塞ぎ込むようになりました」

確かにジュリエッタは母に似ている事で父から溺愛されていたものね。
それは彼女にも自覚があったんだわ。

「でも、少し経って…お父上が起き上がれるようになって直ぐに、震える字の手紙が届いてから…彼女は変わりました。その手紙を何度も何度も読み返していましたよ。震える字で『愛している』と書かれたあの手紙を」
と院長は微笑んだ。

ナラから聞いた。まだ力の入らない手でジュリエッタに父が手紙を書いたと。

それがジュリエッタを変えるきっかけになっていたようだ。

「院長。ジュリエッタは此処で過ごす事を望んでいます。私は彼女の選択を尊重したいのですが…」
と私が改めて院長に問えば、

「もちろんお預かりしますよ。オーヴェル侯爵、心配されなくてもジュリエッタは毎日きちんと学び、成長しています。
もう少し見守ってあげて下さい」
との院長の言葉に私は頭を下げた。


私は院長に最後の挨拶を終えると、修道院の庭へ出た、そこには、子ども達と遊ぶマルコ様の姿が。


「マルコ!」
と私が声を掛ける。
マルコ様はその声に顔を上げて笑顔になると、

「お疲れ様!迎えに来たんだが、まだ話し中だったみたいだから、ここで皆と遊んでいたんだ」
というマルコ様の回りには子ども達が、

「ねぇ!もう1度かくれんぼしよう!」

「今度はおじちゃんが鬼ね!」
とまとわりついていた。

マルコ様は、

「あ~ごめんな。もう帰る時間なんだ。お前達もそろそろ帰らなきゃ、親が心配するだろう?」
と子ども達に謝っている。子ども達からはブーイングだ。

この修道院では週に3回程、礼拝の後で子ども達に勉強を教えたりしているらしい。まだまだここら辺では平民が学ぶ場所が少ない。もっと、私も頑張らなければ。

子どもと楽しそうにしているマルコ様を見ながら、私はふと不安になる。

マルコ様と結婚してもう半年。今のところ妊娠の兆しは見られない。

前世、私は妊娠しにくい体だと言われていた。それでも可能性は低いだけでゼロではない。
最初は呑気に考えていたが、その内、私は焦るようになった。
不妊治療をしてみたいと旦那に言った時には、『焦る必要なくね?』と言われ、喧嘩になった。


いつの間にか夫婦の間に出来ていた溝。
見て見ぬふりをしていたら、浮気された。

あんな思いはもう2度としたくない。
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