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番外編

番外編・その13

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「お久しぶりです。お姉様」

私の前に現れたジュリエッタは見た目こそ変わらないが、今までのようなガサツな振る舞いは見られない。

私の前で完璧なカーテシーをしてみせて微笑みをたたえる姿に私は心の中で『どなた様?』と突っ込んでいた。
もちろん顔には出さない。

「久しぶりね。元気そうで安心したわ」

「はい。お姉様もお元気そうで。お父様のお加減はいかがでしょうか?」

「随分と良くなったのよ?貴女に会いたがっていたけど、流石に此処に連れてくる事は出来なかった。
それでも、車椅子で庭を散歩したり、芸術家の方達とサロンでお話したりと、なるべく寝台の住人にならないように、お父様も頑張っていらっしゃるわ。
貴女からのお手紙をとても楽しみにしていらっしゃるし」

ジュリエッタは私には手紙を書くことは殆んどない(用事がある時だけだ)が、父には月に1度は手紙を書いていた。
私も読ませて貰った事があるが、最初は『帰りたい』『寂しい』ばかりだったのを覚えている。

「お姉様には感謝しているのです。お父様の面倒を全て看て下さって。
お仕事もお忙しいのでしょう?本当にありがとうございます」
と私に頭を下げるジュリエッタに、私は再び心の中で『どなた様?』と突っ込んでいた。

「貴女はそんな事を心配しなくて大丈夫よ。それにお父様にはナラ…お義母様が付いているし」
と私が言えば、

「1度私も新しいお義母様にご挨拶をしたいと考えておりましたが、中々それも叶いません。
お手紙だけは送らせて頂いたのだけど、読んで下さったかしら?」

「ええ、もちろん。お返事を預かってきたわ」
と私はナラから預かった手紙をジュリエッタに手渡した。

私達からジュリエッタに手紙を送る事は出来ない。
徒に、俗世と関わらないようにとの戒律があるからだ。
この手紙は先ほど院長に確認して貰って、この内容なら渡しても良いと許可された物だ。

ジュリエッタはそれに急いで目を通すと、

「お父様の字…。懐かしい。お義母様と仲良くされているのね」
と目に涙を浮かべた。

「ええ。とてもね。それと…お母様が見つかったわ。いえ、見つかったというより、戻って来たの」
と私が言えば、ジュリエッタは手紙から顔を上げて、

「今さらノコノコと?まさか…オーヴェル家で暮らしているのでは…」
と目を丸くした。

「大丈夫。離縁した女を屋敷に住まわせるような事はしないから。ご実家に戻って貰ったわ。もう関わる事はないでしょう」

院長からの報告書にジュリエッタに変化があったのは、母が失踪した事を知らせた時からだと書いてあった。

母が病床の父を捨てて家出した事はジュリエッタに大きな傷を残した。…ジュリエッタはあんな風だったが、父をとても愛していたのだろう。

「そう…。お父様にあんな仕打ちをしておいて、よく顔を出せたものだと思うけれど…お父様が今お元気で幸せならそれで良いわ」
と再度、父とナラからの手紙に目を落として、そこに父がいるかのように微笑んだ。
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