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番外編
番外編・その12
しおりを挟むさて、私の方のダメな妹ジュリエッタだが、これまた私は頭を悩ませていた。
「修道院に入れてもう1年ね…。お父様が倒れた時には、随分と大人しくなっていた印象だけど」
「どうする?学園に編入させる?それともこのまま修道院で18まで過ごしてもらうか?」
私とマルコ様はジュリエッタの今後について話し合っていた。
「そうねぇ…。私、1度ジュリエッタの面会に行ってみようかしら?」
と私が言えば、
「まぁ、実際に見てみるのが1番かもな。院長からも話を聞いてみたら?
一応月に1度は報告書を貰っているみたいだが、直接話す方が様子も良くわかるだろう」
私はマルコ様にそう言われ、少し考えた後に、
「そうね。そうするわ。陛下にお休みを頂いて、修道院へ行ってみる事にする」
と言った。
「なら、俺も一緒に行くよ。あの辺りに良い葡萄が採れる果樹園があるらしいんだ。
うちのワイン工場に新しい品種としてどうかと考えていたから、丁度良い機会だ」
とマルコ様は言うと、
「じゃあ、直ぐに手配しよう」
と言って部屋を出ていった。
…すっかり商人の顔だ。
私はそんな夫の背中を見送ると、1つのリストを引出しから取り出した。
これは、ジュリエッタの嫁ぎ先候補をピックアップしたものだ。
私の評価が上がった事に伴い、実はジュリエッタへの釣書が増えた。
昔はこのオーヴェル侯爵家を継ぐのがジュリエッタの夫になる人だと考えられていたから、かなり人選に難航していたのだが、ジュリエッタが嫁ぐとなれば話は別だ。
私としてはジュリエッタが子爵に嫁ごうが、男爵に嫁ごうが別に良いと思っている。
なんなら嫡男でなくても私としては問題ないと考えていたのだが、流石にセドリックから『お前と縁付く事を考えればもう少し慎重になった方が良い』と釘を刺されてしまった。
まぁ、確かにオーヴェル侯爵家に迷惑をかけるような相手では困るのだが、なんせ相手はジュリエッタ。貰ってもらえるのなら…とついハードルが低くなってしまうのは仕方ないだろう。
私はリストを見ながら考える。
と、1人の名前に丸印を付けた。
『ヴィンセント・ゴールドマン』
ゴールドマン伯爵を名乗る彼は、年齢が27歳とジュリエッタとは10歳以上の年齢差があるのだが、前妻と死別後誰とも再婚する事なく、ゴールドマン伯爵領で鉱山の管理をしている。
ゴールドマン伯爵領が王都とも離れている事から、王家主催の夜会でしか彼を見た事はない。
印象としては、ジュリエッタ好みの優男って感じではなく、武骨で無口な男って感じだった…と思う。
ゴールドマン伯爵領の鉱山からは良質なダイヤモンドが採れるし、うちの商会とも最近取引を始めたばかり。
が、逆を言えばそれぐらいの付き合いしかない。
そんな彼から釣書が送られて来た時にはビックリしたものだ。
私は執事を呼んで、ゴールドマン伯爵をもう少し詳しく調べるようにと頼んで、そのリストをまた机の引出しにしまった。
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