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番外編
番外編・その5〈side セドリック〉
しおりを挟む〈セドリック視点〉
「あ、そうだ。ご婚約おめでとうございます。ローウェル王国の公爵令嬢だそうですね」
「公表したのは今朝なのに、相変わらず情報が早いな。そうだ、フローラ様の姪に当たる」
「情報は宝ですからね。クロエが楽しそうにお祝いの品を選んでましたよ。すでに届けるよう手配していた筈です。
確かフローラ様の妹君のご息女でしたね。フローラ様も離縁後、よくクロエに会いに来ていますよ」
我がラインハルト王国で王族の離縁が認められるようになって、その権利を行使した者は2名。クロエと…そしてフローラ様だ。
フローラ様は王族としての務めを殆んど果たしていなかった事から、離縁後ローウェル王国へ戻る事も許可したのだが、
彼女は、
『離縁は望むけれど、ローウェル王国へ戻るつもりはないわ。そんな厚顔無恥ではないつもり。許可されるのなら、私はこのラインハルト王国への滞在を求めます』
とハッキリと言い切った。
フローラ様が離宮を去る時に何故かたくさんの若い男性の護衛が付いていたのは記憶に新しい。
…あんなにローウェル王国から護衛を連れて来ていたかな?と不思議に思ったものだ。
「フローラ様にまで好かれているんだな、クロエは」
と俺が言うと、マルコは少し顔を強張らせる。…呼び捨てが気に入らないのだろうが、これぐらいは許せと言いたい。狭量な男は嫌われるぞ?
マルコは、
「そうですね。彼女はみんなを魅了してしまう。困ってしまいますよ」
と苦笑した。
「確か…アランからも手紙が来ていると?」
「ええ。強制労働が終わったら会いたいらしいですよ。どんだけモテるんですかね…あの人は」
と眉を下げるマルコに、
「良いじゃないか。魅力的な彼女を手に入れたんだから」
と言うと、マルコは、
「そうですね。自慢の妻ですから。…ジュネ宰相もお幸せに」
と俺に言う顔は、どこか『本当に吹っ切れたのですか?」と訊ねているようだった。
同じ女性を好きな者の気持ちには敏感なのだろう。俺だって同じだ。
「あぁ。まぁ…幸せにするつもりだよ。俺は女性には優しいんだ」
と俺が答えると、
「ジュネ宰相自身も幸せになって下さい…きっとクロエもそれを願っている」
と真剣な顔で、マルコは俺に言った。
「そう…だな。頑張るよ。…1つ言っとくけど、俺はこうして腹を括ったが、俺の婚約を知った陛下が何と言ってたか分かるか?」
と俺は少し意地悪な質問をする。
「陛下が…ですか…。見当もつきませんが…」
と返答に困るマルコに、
「陛下は俺が『陛下もいつの日か諦めなければならない日がやってきますよ』と言ったら『知ってるか?マルコは私より5つも歳上だ』って言ってたよ」
と俺が笑うと、
「俺が先に逝くのを待ってるって事ですか……正直引くんですけど」
とマルコは苦笑した。
「それは、俺も同意見だ。…引くよな」
と言って、俺も一緒に笑った。
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