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番外編
番外編・その4〈side セドリック〉
しおりを挟む〈セドリック視点〉
陛下の執務室の扉を閉め、廊下に目をやると、向こうから見知った顔が歩いてくる。
元騎士らしい、逞しい体と、それに比べると少しアンバランスに見えるベビーフェイス。
この甘いルックスはきっと今までたくさんの女性を虜にしてきたのだろうが、今は愛妻家で有名だ。
「どうも。ご無沙汰しております。ジュネ宰相」
「あぁ、マルコ殿。久しぶりだな。確かミラス王国へ行っていたとか?」
「『マルコ殿』なんて止めて下さいよ。昔のように呼び捨てで構いません。ミラス王国からは、昨日の夜遅くに戻ったばかりで」
と微笑む男、マルコ・オーヴェル。
オーヴェル侯爵の夫で、『ヴィヴォン商会』の会長。…そして、クロエに『選ばれた男』だ。
「ミラス王国に商会の支店を作るとか?羽振りが良いんだな。剣の腕だけでなく、商才もあったとは驚きだ」
「支店はうちの信用のおける者を数名置いてきました。あとはミラス王国の者を使う予定ですが、まだまだ軌道に乗るには時間が必要で。
商才なんてないですよ。クロエに先見の明があるだけです。
俺は彼女の頭の中にあるモノを実現させるのに手を貸しているって感じですかね」
…『クロエ』ねぇ。…幸せそうな顔しちゃって。
「今や我が国でヴィヴォン商会の名を知らぬ者など居ないだろう。確かミラス王国のルードリヒ殿下とも取引を?」
「ええ。今回はどうしても『精米機』が欲しいと言うんでね。運べる程小型化するのに時間がかかりましたが、やっと納品出来ました。
ルードリヒ殿下の『クロエ信仰』にも困ったものです。クロエが薦めれば何でも買ってしまいそうだ」
とマルコは笑った。
「ところで…今日は王宮にどのような要件で?」
「あぁ、今日は前国王陛下に車イスの納品です」
車イス。これもクロエのアイデアだ。前国王は離宮の自室ぐらいなら、杖をついて歩けるが長い距離の移動が大変だとライラ様に聞いたクロエが考えたらしい。
前国王の体調は一時とても危なかったが、何とか持ち直した。
ただ寝てる期間が長かった為に、足が弱ってしまったのだ。
クロエが言うには『リハビリ』とやらが必要らしい。
「そうか。気に入って貰えたかな?」
「ええ。腕の力はまだ使えますからね、自走する事も可能でした。これでライラ様と庭を散歩出来ると喜んでいましたよ」
もうすっかり商人の顔だな。クロエの教育の賜物ってところか。
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