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番外編
番外編・その3〈sideセドリック〉
しおりを挟む〈セドリック視点〉
アレクセイ殿下は国王になるには、優し過ぎる。
デイビット殿下とはかなり違うタイプだ。
決して頭が悪い訳ではないが…ちょっと心配だな…と俺はついついアレクセイ殿下に構うようになってしまった。
そしてそれよりも大きな問題は…エリザベート嬢より他の女に現を抜かしている事だ。これは…荒れる。
あのプライドの塊みたいな女が、これを許すとは思えない。
このまま、セリーナ嬢を側妃に…とアレクセイ殿下は考えるかもしれないが、それにはエリザベート嬢と結婚しても子を作らない事が条件となる。
王妃に子どもが出来たら、側妃は持てないからだ。…所謂、『お飾りの王妃』になれとエリザベート嬢に言うのと同じこと。
もしかすると…これは使えるかもしれない。
俺はその日から、色々と慎重に事を運んだ。
しかし、これは大きな賭けだ。
そして、それは俺の失恋を意味した。
俺は、ふと現実に戻ると、陛下と仲良く話す元婚約者を眺める。
アレクセイ陛下を今のように、立派な国王へと導いたのはクロエの力が大きい。
クロエはデイビット殿下の夢も叶えた。
…陛下がクロエにここまで惹かれたのは少し予想外だったが。
クロエもきっと陛下を慕っていた筈だ。だが、クロエは無意識に俺との約束を守ったんだ。
あの時俺に『立派なお飾りの王妃になる』と宣言した言葉はクロエの柔らかい心を縛り付けた。
わかってたんだ、クロエがそれを守る事を。
わかっていて俺はそれを望んでしまった。
…陛下にクロエの心も体も渡してしまうのはしゃくだったからだ。
夫の立場を譲っただけ、有り難く思って欲しい。そう思ったのは俺のエゴだ。
俺はその縛り付けた鎖を解く事なく、陛下の『クロエを自由にしたい』という提案に乗った。
…もしかすると、クロエが俺を選んでくれるかもしれないと…ほんの少しの望みを持って。
陛下とクロエの間には、しっかりと見えない絆がある。
しかし、それについては俺も負けていない。俺とクロエの間にも絆はある…筈だ。
選ばれたのは、俺ら2人ではなかった。それだけだ。
俺は2人に、
「それが終わったら、こちらも確認して下さいね」
と書類を机に置く。
陛下は恨みがましい目で見ているが、仕方ない。仕事は山のようにあるんだ。
王妃としての最低限の執務は、ライラ様が肩代わりしている。その分、陛下の仕事は増えた。
クロエはライラ様がセイン様と仕事出来るよう、ライラ様の執務室にセイン様と乳母達の部屋を作った。
そこに、陛下もクロエもよく顔を出していて、セイン様と遊んでいるらしい…そして仕事が滞るのだ。
部屋を出ようとする俺に、クロエは、
「そうだ!セドリック、婚約おめでとう!直ぐにお祝いを送るわ」
と笑顔を向けた。
俺はそれに、
「ああ。ありがとう。デボラとも仲良くしてやってくれ」
と軽く手をあげて応えた。
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