168 / 215
番外編
番外編・その3〈sideセドリック〉
しおりを挟む〈セドリック視点〉
アレクセイ殿下は国王になるには、優し過ぎる。
デイビッド殿下とはかなり違うタイプだ。
決して頭が悪い訳ではないが…ちょっと心配だな…と俺はついついアレクセイ殿下に構うようになってしまった。
そしてそれよりも大きな問題は…エリザベート嬢より他の女に現を抜かしている事だ。これは…荒れる。
あのプライドの塊みたいな女が、これを許すとは思えない。
このまま、セリーナ嬢を側妃に…とアレクセイ殿下は考えるかもしれないが、それにはエリザベート嬢と結婚しても子を作らない事が条件となる。
王妃に子どもが出来たら、側妃は持てないからだ。…所謂、『お飾りの王妃』になれとエリザベート嬢に言うのと同じこと。
もしかすると…これは使えるかもしれない。
俺はその日から、色々と慎重に事を運んだ。
しかし、これは大きな賭けだ。
そして、それは俺の失恋を意味した。
俺は、ふと現実に戻ると、陛下と仲良く話す元婚約者を眺める。
アレクセイ陛下を今のように、立派な国王へと導いたのはクロエの力が大きい。
クロエはデイビッド殿下の夢も叶えた。
…陛下がクロエにここまで惹かれたのは少し予想外だったが。
クロエもきっと陛下を慕っていた筈だ。だが、クロエは無意識に俺との約束を守ったんだ。
あの時俺に『立派なお飾りの王妃になる』と宣言した言葉はクロエの柔らかい心を縛り付けた。
わかってたんだ、クロエがそれを守る事を。
わかっていて俺はそれを望んでしまった。
…陛下にクロエの心も体も渡してしまうのはしゃくだったからだ。
夫の立場を譲っただけ、有り難く思って欲しい。そう思ったのは俺のエゴだ。
俺はその縛り付けた鎖を解く事なく、陛下の『クロエを自由にしたい』という提案に乗った。
…もしかすると、クロエが俺を選んでくれるかもしれないと…ほんの少しの望みを持って。
陛下とクロエの間には、しっかりと見えない絆がある。
しかし、それについては俺も負けていない。俺とクロエの間にも絆はある…筈だ。
選ばれたのは、俺ら2人ではなかった。それだけだ。
俺は2人に、
「それが終わったら、こちらも確認して下さいね」
と書類を机に置く。
陛下は恨みがましい目で見ているが、仕方ない。仕事は山のようにあるんだ。
王妃としての最低限の執務は、ライラ様が肩代わりしている。その分、陛下の仕事は増えた。
クロエはライラ様がセイン様と仕事出来るよう、ライラ様の執務室にセイン様と乳母達の部屋を作った。
そこに、陛下もクロエもよく顔を出していて、セイン様と遊んでいるらしい…そして仕事が滞るのだ。
部屋を出ようとする俺に、クロエは、
「そうだ!セドリック、婚約おめでとう!直ぐにお祝いを送るわ」
と笑顔を向けた。
俺はそれに、
「ああ。ありがとう。デボラとも仲良くしてやってくれ」
と軽く手をあげて応えた。
応援ありがとうございます!
11
お気に入りに追加
8,420
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。