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過去の話〜幸司編⑺〜
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幸司の家に着くと3人でカレーを食べて、ゴーカートのテレビゲームをした。そのうち、おじさんも帰ってきて、気づいたら4人でチーム戦なんかもして、楽しい時間はあっという間に過ぎる。
9時を回り勇くんが舟を漕ぎ始めたので、今日のゲーム大会はお開きになり、今は幸司の部屋で漫画を読みながらまったりしている。
今日泊まりに来た本題を……と思うが、何て切り出していいか迷い、さっきからずっと同じページを眺めている。幸司の方を伺うと目が合う。
「幸也さ、何か言いたいことがあるんだろ?」
逸らしかけた視線を戻して幸司を見つめる。いつも誤魔化してばかりなのに、最終的には逃げも隠れもしないところは、いつもすごくカッコいいと思ってしまう。
「あぁ……うん。幸司は今、何か苦しんでるよね。それって、ぼくにも言えないことなのかな……ぼくは、今の幸司を見てるのがつらい……」
「ごめん……」
「責めてるんじゃなくて……今日幸司と勇くん見てて思ったんだけど、やっぱり勇くんが関係してる?自分と重ねちゃってる……とか」
幸司は、ビックリしたような困ったような、泣きそうな顔をして座っていたベットの上で膝を抱えて丸くなる。
「はぁ……何で、そんなことまでわかっちゃうんだよ……」
ボソッと呟いて、さらに小さく丸まっていく幸司。ぼくは、何て言っていいのか言葉が見つからない。
「勇のことは、まだ弟だっていう実感はあんまりないんだけど……かわいいと思うし、何かあったら守んなきゃとも思うし……勇がこの家に来たことは、良かったことで、大賛成なんだけど……だけど……」
「うん」
「たまに、勇を見てると……しんどくなる」
「うん」
「……幸也は……まだ、漏らしちゃうこと……ある?」
「えっ……は?今、その話関係な……幸司……漏らしちゃったの?」
「幸也はっ、ど……どうなの……」
消え入りそうな、切実な幸司の声に応えないとダメだと感じる。
「ぼくは……知ってると思うけど、他の人より膀胱が小さいからさ、日中はかなり意識してて、高校に入ってからはないかな。でも……夜は……いくら意識しててもね……試験とか何か大事なイベントの前後とか、何かプレッシャーがかかることがあるとね……それでも、高校に入ってからは、布団まで汚すことはないかな……」
「そっか……ごめん。言いづらいこと言わせた……オレもさ……この間……寝てる時にちょっと漏れて……飛び起きた。ちょっとだったんだけど……もう何年もなかったから。やっぱ、すごくショックで……勇を見てると、あの頃の自分をすごく思い出しちゃって……また前みたく……も、漏らしちゃったらって思うとすごく……こわい。だけど……誰にも言えないし。特に……勇には……こんな兄貴だって……知られたくない……」
ぼくはベットに上り、小さく小さく丸まった幸司を抱きしめる。
「幸司……なんでもかんでも、1人で抱え込むなよ……それに、ぼくの前では、お兄ちゃんでいる必要はないよ。不器用な部分もかっこ悪い部分も、全部見せてよ」
「うっ……」
「ぼくはさ、人は誰でも見せてないだけで、恥ずかしくて、めっちゃかっこ悪い部分を持ってるんだと思うんだよね。それを、誰にも気づかれない様に抱えておくのって、すっごくしんどいことだと思うんだ。だから、僕らのかっこ悪い部分はシェアしていこうよ。そうすれば、苦しいことは半分になりそうじゃん。ぼくは、幸司のかっこ悪い部分も含めて、全部知りたい」
「うっうっ…」
「泣くなよー。ぼく超いいこと言ったの、ちゃんと聞いてた?」
「う……うるさい。泣いてねーし」
「素直じゃないなぁ……」
次の朝、顔を洗い終わってタオルで拭いていると、後ろからボソッと声が聞こえる。
「久しぶりにぐっすり眠れた……ありがと……」
振り向くと、幸司はもう後ろを向いて出て行ってしまう。
こんな状態で言わなくてもいいのに……
ちゃんと顔を見て言ってくれてもいいのに……
本当に素直じゃないなぁ。
でも、そんなところは少しかわいく思っちゃうんだけどね。
9時を回り勇くんが舟を漕ぎ始めたので、今日のゲーム大会はお開きになり、今は幸司の部屋で漫画を読みながらまったりしている。
今日泊まりに来た本題を……と思うが、何て切り出していいか迷い、さっきからずっと同じページを眺めている。幸司の方を伺うと目が合う。
「幸也さ、何か言いたいことがあるんだろ?」
逸らしかけた視線を戻して幸司を見つめる。いつも誤魔化してばかりなのに、最終的には逃げも隠れもしないところは、いつもすごくカッコいいと思ってしまう。
「あぁ……うん。幸司は今、何か苦しんでるよね。それって、ぼくにも言えないことなのかな……ぼくは、今の幸司を見てるのがつらい……」
「ごめん……」
「責めてるんじゃなくて……今日幸司と勇くん見てて思ったんだけど、やっぱり勇くんが関係してる?自分と重ねちゃってる……とか」
幸司は、ビックリしたような困ったような、泣きそうな顔をして座っていたベットの上で膝を抱えて丸くなる。
「はぁ……何で、そんなことまでわかっちゃうんだよ……」
ボソッと呟いて、さらに小さく丸まっていく幸司。ぼくは、何て言っていいのか言葉が見つからない。
「勇のことは、まだ弟だっていう実感はあんまりないんだけど……かわいいと思うし、何かあったら守んなきゃとも思うし……勇がこの家に来たことは、良かったことで、大賛成なんだけど……だけど……」
「うん」
「たまに、勇を見てると……しんどくなる」
「うん」
「……幸也は……まだ、漏らしちゃうこと……ある?」
「えっ……は?今、その話関係な……幸司……漏らしちゃったの?」
「幸也はっ、ど……どうなの……」
消え入りそうな、切実な幸司の声に応えないとダメだと感じる。
「ぼくは……知ってると思うけど、他の人より膀胱が小さいからさ、日中はかなり意識してて、高校に入ってからはないかな。でも……夜は……いくら意識しててもね……試験とか何か大事なイベントの前後とか、何かプレッシャーがかかることがあるとね……それでも、高校に入ってからは、布団まで汚すことはないかな……」
「そっか……ごめん。言いづらいこと言わせた……オレもさ……この間……寝てる時にちょっと漏れて……飛び起きた。ちょっとだったんだけど……もう何年もなかったから。やっぱ、すごくショックで……勇を見てると、あの頃の自分をすごく思い出しちゃって……また前みたく……も、漏らしちゃったらって思うとすごく……こわい。だけど……誰にも言えないし。特に……勇には……こんな兄貴だって……知られたくない……」
ぼくはベットに上り、小さく小さく丸まった幸司を抱きしめる。
「幸司……なんでもかんでも、1人で抱え込むなよ……それに、ぼくの前では、お兄ちゃんでいる必要はないよ。不器用な部分もかっこ悪い部分も、全部見せてよ」
「うっ……」
「ぼくはさ、人は誰でも見せてないだけで、恥ずかしくて、めっちゃかっこ悪い部分を持ってるんだと思うんだよね。それを、誰にも気づかれない様に抱えておくのって、すっごくしんどいことだと思うんだ。だから、僕らのかっこ悪い部分はシェアしていこうよ。そうすれば、苦しいことは半分になりそうじゃん。ぼくは、幸司のかっこ悪い部分も含めて、全部知りたい」
「うっうっ…」
「泣くなよー。ぼく超いいこと言ったの、ちゃんと聞いてた?」
「う……うるさい。泣いてねーし」
「素直じゃないなぁ……」
次の朝、顔を洗い終わってタオルで拭いていると、後ろからボソッと声が聞こえる。
「久しぶりにぐっすり眠れた……ありがと……」
振り向くと、幸司はもう後ろを向いて出て行ってしまう。
こんな状態で言わなくてもいいのに……
ちゃんと顔を見て言ってくれてもいいのに……
本当に素直じゃないなぁ。
でも、そんなところは少しかわいく思っちゃうんだけどね。
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