家族のかたち

yoyo

文字の大きさ
上 下
13 / 50

言えなくて⑴

しおりを挟む
「勇。はい、これ。プレゼント」

 広くんは抱えるくらいの四角い紙袋をボクに手渡す。

「なん……デスカ?これ?」

「開けてごらん」

 中には、お空みたいな水色の座布団が入っていた。


「学校の椅子にちょうどいいと思って、買ってきた」

 ボクの学校は、椅子に座布団を敷いてもいいことになっている。

「いいの!?お誕生日じゃないけど、プレゼントもらっていいん……デスカ!?」

「もちろん。勇は、いつもお勉強もお手伝いも頑張ってるから、ご褒美だよ」

「ありがとう……広くん……」

「どういたしまして」


 その座布団は、とってもふかふかで気持ち良くて、次の日から学校が前よりも楽しくなった。






 今日は、朝起きた時から凄く寒い。広くんとのいつもの朝の日課が終わって、広くんがタンスから出したスパッツを手渡す。

「今日は、お外すごく寒いから、スパッツ履いていこうか」

「うん」

 スパッツを履くとお尻が少しモコモコとしちゃうけど、とっても温かい。




 外に出ると冷たい風が、体に吹きつきつけてくる。スパッツを履いていたけど、ものすごく寒くて、学校に着く頃には、すっかり体が冷えてしまった。でもボクの椅子には、あのふかふかの座布団があって、じんわりと冷え切ったお尻を温めてくれた。


   1時間目は、算数で足し算と引き算の文章問題だ。教科書の問題をそれぞれ解いてる時、担任の葉山智子はやまともこ先生は、グルグルと教室の中を歩き、みんなの様子を見てまわる。


 葉山先生は、とても優しく、先生を見てるとほわ~とした気持ちになる。ボクの家のことも知っていて、転校してきて慣れないボクに、たくさん声をかけてくれた。他の先生には、なかなか声を掛けられなかったけど、葉山先生には自分からお話ができた。


 前の席のじゅんくんが、何度も後ろを向いて話しかけてきたけど、葉山先生が注意してくれて、時間内に全ての問題を終えることができた。
 ホッとしたら、少しおしっこがしたくなったけど、すぐにチャイムも鳴る。



 トイレに行こうと教室を出ようとしたら、雅也まさやくんに呼び止められた。
「ねぇ、勇くん見て。ぼくの座布団、昨日ママに買ってもらったの」


 雅也くんはお話好きで、1度話し出したら止まらなく、もう座布団から昨日のアニメの話になってる……
   おしっこはまだ余裕があったし、ボクは友達の話を止めたり、遮ったりするのが苦手で、そのまま雅也くんの話を聞いていていると、花音かのんちゃんが入ってきた。
   雅也くんが花音ちゃんと話し始めたから、今のうちに……とボクはそっと抜けて、教室を出ようとする。



「勇くん、どこ行くの?もう、次の勉強始まるよ」
 花音ちゃんに後ろから声をかけられた。


「あっ……えっと……」

「ほら、長い針がもう6になりそうだよ」
 2時間目は、9時30分からで、時計はすでに9時28分だ。

「あー、うん」


 確かにチャイムが鳴るまでに戻ってこれないかもしれない……考えてるうちにチャイムが鳴り、もう自分の席に戻るしかなかった。まだ、そんなにしたくないし、大丈夫だよね……




 2時間目は国語だ。いつも葉山先生は、チャイムが鳴るとすぐに来ていたけど、今日はなかなか来ない。クラス全体がザワザワし出した頃、男の先生が教室に入ってきた。

 確か、岩田いわた先生。いつも職員室にいて、全校集会をやる時とか、ステージの上でとても大きな声で話す先生だ。体も大きくて、すこしおっかない……。

「葉山先生は用事で少し遅れるから、それまで先生が国語の授業をするぞ。はい、日直!号令!」
 教室の中でもやはり、岩田先生の声は大きく響き、みんなが少し緊張する。


 ボクは、葉山先生が来ないことに、ドキン……と不安が押し寄せる。さっきまでそうでもなかったのに、急におしっこがしたい気持ちが強くなった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

バレー部入部物語〜それぞれの断髪

S.H.L
青春
バレーボール強豪校に入学した女の子たちの断髪物語

お兄ちゃんはお医者さん!?

すず。
恋愛
持病持ちの高校1年生の女の子。 如月 陽菜(きさらぎ ひな) 病院が苦手。 如月 陽菜の主治医。25歳。 高橋 翔平(たかはし しょうへい) 内科医の医師。 ※このお話に出てくるものは 現実とは何の関係もございません。 ※治療法、病名など ほぼ知識なしで書かせて頂きました。 お楽しみください♪♪

熱のせい

yoyo
BL
体調不良で漏らしてしまう、サラリーマンカップルの話です。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?

すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。 翔馬「俺、チャーハン。」 宏斗「俺もー。」 航平「俺、から揚げつけてー。」 優弥「俺はスープ付き。」 みんなガタイがよく、男前。 ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」 慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。 終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。 ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」 保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。 私は子供と一緒に・・・暮らしてる。 ーーーーーーーーーーーーーーーー 翔馬「おいおい嘘だろ?」 宏斗「子供・・・いたんだ・・。」 航平「いくつん時の子だよ・・・・。」 優弥「マジか・・・。」 消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。 太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。 「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」 「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」 ※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。 ※感想やコメントは受け付けることができません。 メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。 楽しんでいただけたら嬉しく思います。

落ち込んでいたら綺麗なお姉さんにナンパされてお持ち帰りされた話

水無瀬雨音
恋愛
実家の花屋で働く璃子。落ち込んでいたら綺麗なお姉さんに花束をプレゼントされ……? 恋の始まりの話。

処理中です...