忘れられない思い

yoyo

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内緒の思い⑸

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「え?いいんですか?」

「あぁ...」


   泰輔さんに言われた様に先生とちゃんと話をしようと思って、先生の家に来ていた。先生に貰った合鍵を使って、先生の部屋でご飯を作って待っていたのだ。
   もちろん、先生にはメッセージを送って。

   お惣菜で買ってきたカツに玉ねぎと卵を煮込んだ時短カツ丼を一緒に食べて、ちょうど片付けが終わった時に先生が言ってきた。

「オレたちのこと都築さんに話していいよ」と。

「えっと、でもどうして?」

「いや、まあ、都築さんならいいんじゃないかな……と」

   理由は言わず、やや歯切れが悪い。


「でも……」

「真野も話したいって言ってたし、いいんじゃない」



   何だかはぐらかされた感じで、それが顔に出ていたのか先生に手招きされる。先生は、甘えてくるときにこうやって、ボクを呼ぶことが多い。近づくと腕を引っ張られて、先生の足の間に入れらる。

   ここがボクの定位置だ。後ろから先生が腕を回してきて、ボクも先生の腕を抱きしめながら、泰輔さんの話を思い出していた。



「先生は、ゲイだってことあまり知られたくないですか?」

「ん?んー。まぁ、積極的には言いたくないかなぁ」

   先生はボクを後ろから抱きしめながら、少し考えて答える。


「それって、今まで色々嫌な思いをしたってことですか?」

「どうした?急に」

「本当は都築さんに言うのも無理してるのかなって」

   急に都築さんに話していいよと言ってくれたのは、ボクに合わせて無理させてしまっているのではと心苦しくなる。


「んーまぁ、この性癖で確かに、嫌なことは多々あったかな。理解されにくいしね。でも、都築さんのことは、無理してないよ。やっぱりどうしてもまわりに隠してることが多いから、カミングアウトできそうな人は貴重かなと思って」

「泰輔さんみたいな?」

「あーうん、そうだな。泰輔には何も隠さずいられるから、一緒にいて楽だよ」


   先生にとって、泰輔さんは特別な存在であることはわかってるけど、ボクも先生のそういう存在でいたいなと思う。
   首を回して、先生の顔を見ると目が合う。ボクの気持ちが伝わってしまったかの様に「真野は泰輔よりもずっと大事で、オレにとって必要だよ」とさらに力強く抱きしめられる。
   そう言うと、先生の顔がボクの顔に近づいてきた。
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