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内緒の思い⑴
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まんぷく屋を訪れると、もうお客さんは誰もいなくて、片付けをしていた友花里さんが「いらっしゃい」と笑顔で声をかけてくれた。もう、ラストオーダーの時間は終わっていたけど、クリームシチューなら出せるよと言ってくれて、お言葉に甘えることにする。
先生が何故あんな頑なに、知られることを嫌がるのか気になって、泰輔さんに連絡を取った。もちろん、先生には内緒で。
クリームシチューを食べ終わると、友花里さんが珈琲を出してくれて、片付けが一段落した泰輔さんが、向かいの席に座った。
「今日は春人に内緒で、相談したい事があったんだっけ?」
そう聞かれて、軽く頷き、この間の映画館での出来事を説明した。そして、先生から強く都築さんには言うなと言われていることも。
「うーん。春人らしいちゃ、らしいけど」
「やっぱり、先生は誰にも知られたくはないんですよね」
「いや……たぶん。春人が嫌と言うよりも、真野くんに嫌な思いをさせたくないんだと思うよ」
泰輔さんの言ってる意味がよくわからなくて、首を傾げると、さらに説明してくれた。
「あいつはさ、自分がゲイであることで学生時代、けっこう嫌な思いをしてるんだと思うんだよね。俺は大学からの付き合いだから、それ以前はわかんないんだけど、大学の頃も偏見的なことを言われてるの聞いたしさ」
「そうなんですか?」
「うん。だいぶ理解されるようにはなったと思うけど、やっぱり、誤解や偏見はまだあるよ」
確かに、そうなんだと思う。ボク自身、先生と付き合って嫌な思いはしてないけど、誰にでもサラッと男の人と付き合ってるとは言いにくい。
「でも、確か春人くんと泰輔は、それがキッカケで仲良くなったんじゃなかったけ?」
片付けを終えた友花里さんが、話に入ってくる。
「あぁ、春人がそういう陰口叩かれてるのを、聞いちゃって。放って置けなかったんだよね」
「泰輔さんは、その話を聞いて戸惑わなかったんですか?」
「あー。真野くんには言ってなかったけ?俺の兄貴もゲイなんだよね。うちの家族はけっこうオープンで、兄貴の彼氏が遊びに来てることもあったし、親も公認だったというか。男だからとか女だからっていうのをあんまり考えたことなかったんだよね。だから、春人のことも深く考えたことなかったな……って、話それちゃったけど、だからそういう思いを真野くんにはして欲しくないんじゃないかな」
「そうなんですかね……」
「でも、それは春人の考えで、真野くんは本当はどうしたいの?」
そう聞かれて、すぐには答えられず考え込んでしまう。ボクは全てをオープンにすることはできないけど、信頼してる人にはわかって欲しい。都築さんは、職場で凄く良くしてもらってるし、話すことも多いから出来ればあまり嘘はつきたくない。それに、都築さんも彼女のことで色々あるみたいだから、それぞれの形として理解してくれそうだとも思う。
「悪いことしてる訳じゃないし、嘘をつかないでいけたらいいなと思ってます」
「それなら、その思いはちゃんと春人に伝えた方がいいよ。そういうちょっとした引っ掛かりが、これから先大きな綻びの種になるかもしれないからさ」
「そうそう、夫婦でもそうだよね。泰輔」
「え、あぁ……」
「そんな、怖いこと言わないでくださいよ~」
「まあ、ちゃんと春人と話せってことだよ」
確か、前に都築さんに似たようなことを言われたような気がする。
「はい……話してみます」
「もし、2人で話しにくいならオレが間に入ってやってもいいしな」
先生が何故あんな頑なに、知られることを嫌がるのか気になって、泰輔さんに連絡を取った。もちろん、先生には内緒で。
クリームシチューを食べ終わると、友花里さんが珈琲を出してくれて、片付けが一段落した泰輔さんが、向かいの席に座った。
「今日は春人に内緒で、相談したい事があったんだっけ?」
そう聞かれて、軽く頷き、この間の映画館での出来事を説明した。そして、先生から強く都築さんには言うなと言われていることも。
「うーん。春人らしいちゃ、らしいけど」
「やっぱり、先生は誰にも知られたくはないんですよね」
「いや……たぶん。春人が嫌と言うよりも、真野くんに嫌な思いをさせたくないんだと思うよ」
泰輔さんの言ってる意味がよくわからなくて、首を傾げると、さらに説明してくれた。
「あいつはさ、自分がゲイであることで学生時代、けっこう嫌な思いをしてるんだと思うんだよね。俺は大学からの付き合いだから、それ以前はわかんないんだけど、大学の頃も偏見的なことを言われてるの聞いたしさ」
「そうなんですか?」
「うん。だいぶ理解されるようにはなったと思うけど、やっぱり、誤解や偏見はまだあるよ」
確かに、そうなんだと思う。ボク自身、先生と付き合って嫌な思いはしてないけど、誰にでもサラッと男の人と付き合ってるとは言いにくい。
「でも、確か春人くんと泰輔は、それがキッカケで仲良くなったんじゃなかったけ?」
片付けを終えた友花里さんが、話に入ってくる。
「あぁ、春人がそういう陰口叩かれてるのを、聞いちゃって。放って置けなかったんだよね」
「泰輔さんは、その話を聞いて戸惑わなかったんですか?」
「あー。真野くんには言ってなかったけ?俺の兄貴もゲイなんだよね。うちの家族はけっこうオープンで、兄貴の彼氏が遊びに来てることもあったし、親も公認だったというか。男だからとか女だからっていうのをあんまり考えたことなかったんだよね。だから、春人のことも深く考えたことなかったな……って、話それちゃったけど、だからそういう思いを真野くんにはして欲しくないんじゃないかな」
「そうなんですかね……」
「でも、それは春人の考えで、真野くんは本当はどうしたいの?」
そう聞かれて、すぐには答えられず考え込んでしまう。ボクは全てをオープンにすることはできないけど、信頼してる人にはわかって欲しい。都築さんは、職場で凄く良くしてもらってるし、話すことも多いから出来ればあまり嘘はつきたくない。それに、都築さんも彼女のことで色々あるみたいだから、それぞれの形として理解してくれそうだとも思う。
「悪いことしてる訳じゃないし、嘘をつかないでいけたらいいなと思ってます」
「それなら、その思いはちゃんと春人に伝えた方がいいよ。そういうちょっとした引っ掛かりが、これから先大きな綻びの種になるかもしれないからさ」
「そうそう、夫婦でもそうだよね。泰輔」
「え、あぁ……」
「そんな、怖いこと言わないでくださいよ~」
「まあ、ちゃんと春人と話せってことだよ」
確か、前に都築さんに似たようなことを言われたような気がする。
「はい……話してみます」
「もし、2人で話しにくいならオレが間に入ってやってもいいしな」
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