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流星群⑶
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「郁島くん。あ、起きてた?朝也から、パーカー貰った?夜は冷えるから、着込んで行こう」
湖城はベッドの背を上げて、サイドボードの上に置いておいたパーカーを手渡し、その間に車椅子を用意している。
「着れた?じゃあ、こっちに移ろうか」
颯の足を動かして、ベッドサイドに下ろす。1度検査の為に、車椅子に乗せられたことがあったけど、その時は湖城が休みで朝也に抱えられた。颯よりも10㎝は背が高く、お姫様抱っこも軽々しそうな朝也と比べて、湖城は颯と背丈も体格もそんなに変わらない。失礼だけど、大丈夫なのだろうかと思ってしまう。だけど、そんな想いは杞憂に終わり、手を湖城の首に巻きつかせて、どこにそんな力があるのと不思議になるくらいヒョイと抱き上げて車椅子に座らせた。
「クッションは敷いてあるけど、痛いところとかない?」
「大丈夫です」
その時、振動する音が聞こえて、湖城がポケットから出したスマホ画面を確認して、ニヤッと笑う。どうやら電話ではなくて、メッセージのようだ。
「よし。井口さんは見回りに出たから、詰所には今、朝也しかいない。今のうちに行くよ」
屋上に行くためには、ナースステーションの真正面にあるエレベーターに乗らないといけない。どんなにコッソリ行ったとしても、エレベーターを待ってる間に、他の看護師にバレてしまう。昼間の不審者を発見しやすくする為とか、夜間の抜け出しを防止するために理にかなった構造であるが、今回は大きなネックだ。だから湖城は朝也に協力を頼んでいたのだ。
夜勤は基本、看護師2人で行い、見回りの際は1人が見回って、もう1人がナースステーションに残ることになっていて、朝也にはナースステーションに残ってもらい、もう1人が見回りに出たら、連絡を入れてもらうことにしていたと、屋上までの道すがら説明してくれた。
湖城の策略通りか、屋上にはアッサリと到着する。見つかりそうになってドキドキというドラマ的な展開は何も起こらなかった。何か期待していた訳ではないけど、現実世界なんてこんなもんだよなと思う。
「郁島くん、これ持っててくれる?」
そう言って手渡してきたのは、懐中電灯だった。辺りを照らすと小さな公園のようにベンチや花壇がひっそりと浮かびあがってきた。屋上は、昼間は患者に解放されていて、天気の良い日はそこそこ人で賑わっているらしいが、今は颯と湖城の2人きりで静寂に包まれていた。
「この辺でいいかな……郁島くん、明かり消して」
持っていた懐中電灯を消すと、一気に真っ暗になる。「ほら」指されて上を見上げると星が見えた。普段より周りが暗いせいかいつも見る星空より、綺麗に見える。
「街中だと、夜中でも街灯があるからな。こんなもんか……流れるかな……あ、寒くない?やっぱり夜はもう風が冷たいな」
「あ……」
湖城が颯の膝掛けをかけ直している時、星の1つがスーッと流れる。そしてまたすぐに、もう一つ流れた。
あぁ……前にも見たことがある……いつだったっけ?
「おぉ……今流れた……俺は前にキャンプに行った時に見て、感動したんだよね」
キャンプ……
そうか……前に家族でキャンプに行ったときに父さんと見たんだ……
湖城はベッドの背を上げて、サイドボードの上に置いておいたパーカーを手渡し、その間に車椅子を用意している。
「着れた?じゃあ、こっちに移ろうか」
颯の足を動かして、ベッドサイドに下ろす。1度検査の為に、車椅子に乗せられたことがあったけど、その時は湖城が休みで朝也に抱えられた。颯よりも10㎝は背が高く、お姫様抱っこも軽々しそうな朝也と比べて、湖城は颯と背丈も体格もそんなに変わらない。失礼だけど、大丈夫なのだろうかと思ってしまう。だけど、そんな想いは杞憂に終わり、手を湖城の首に巻きつかせて、どこにそんな力があるのと不思議になるくらいヒョイと抱き上げて車椅子に座らせた。
「クッションは敷いてあるけど、痛いところとかない?」
「大丈夫です」
その時、振動する音が聞こえて、湖城がポケットから出したスマホ画面を確認して、ニヤッと笑う。どうやら電話ではなくて、メッセージのようだ。
「よし。井口さんは見回りに出たから、詰所には今、朝也しかいない。今のうちに行くよ」
屋上に行くためには、ナースステーションの真正面にあるエレベーターに乗らないといけない。どんなにコッソリ行ったとしても、エレベーターを待ってる間に、他の看護師にバレてしまう。昼間の不審者を発見しやすくする為とか、夜間の抜け出しを防止するために理にかなった構造であるが、今回は大きなネックだ。だから湖城は朝也に協力を頼んでいたのだ。
夜勤は基本、看護師2人で行い、見回りの際は1人が見回って、もう1人がナースステーションに残ることになっていて、朝也にはナースステーションに残ってもらい、もう1人が見回りに出たら、連絡を入れてもらうことにしていたと、屋上までの道すがら説明してくれた。
湖城の策略通りか、屋上にはアッサリと到着する。見つかりそうになってドキドキというドラマ的な展開は何も起こらなかった。何か期待していた訳ではないけど、現実世界なんてこんなもんだよなと思う。
「郁島くん、これ持っててくれる?」
そう言って手渡してきたのは、懐中電灯だった。辺りを照らすと小さな公園のようにベンチや花壇がひっそりと浮かびあがってきた。屋上は、昼間は患者に解放されていて、天気の良い日はそこそこ人で賑わっているらしいが、今は颯と湖城の2人きりで静寂に包まれていた。
「この辺でいいかな……郁島くん、明かり消して」
持っていた懐中電灯を消すと、一気に真っ暗になる。「ほら」指されて上を見上げると星が見えた。普段より周りが暗いせいかいつも見る星空より、綺麗に見える。
「街中だと、夜中でも街灯があるからな。こんなもんか……流れるかな……あ、寒くない?やっぱり夜はもう風が冷たいな」
「あ……」
湖城が颯の膝掛けをかけ直している時、星の1つがスーッと流れる。そしてまたすぐに、もう一つ流れた。
あぁ……前にも見たことがある……いつだったっけ?
「おぉ……今流れた……俺は前にキャンプに行った時に見て、感動したんだよね」
キャンプ……
そうか……前に家族でキャンプに行ったときに父さんと見たんだ……
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