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2.チェファタル島
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チェファタル県は、アマジヤ皇国の南端に位置する小島だ。
行政上は軍港都市ヴィリス州の管理下にあるが、皇都からは遠く離れた辺境の小島に軍事的な意味はほとんどない。白い砂浜と豊富な緑に囲まれた島は、その景観の美しさから「アマジヤの真珠」と称され、貴族や富裕層の保養地としては人気があった。
港のある島の北側は県長官の邸や貴族達の別荘が建ち並び、街並みも瀟洒で美しい。
高く昇った太陽が照りつける真昼、その邸宅通りを一人の若者が南へ向かって歩いていた。
暦の上ではもう秋だが、チェファタルの陽光は街路樹の枝越しにもまだまだ強く、豪華な邸宅の住人たちは暑さを避けて屋内に引きこもっているのか、石畳の道には人影が少ない。若者は、よく鞣された皮のサンダルの踵で、石畳を踏んでいく。足取りは軽い。頭を白い布で覆い、金糸の縁取りのある薄青の長衣に身を包んでいる。整った顔立ちの中で、目尻の上がった大きな瞳がくっきりと印象的だった。肌は濃く煮出した紅茶に、ほんの少しミルクを混ぜたような色。日焼けなのか、元の肌色が暗いのかは分からない。
朗らかに口笛を吹きつつ大股で歩く姿には気取ったところがなかったが、耳につけた鳥の形の耳飾りから、この若者が皇族の一人だと分かる。アマジヤ皇国で鳥の象徴を身につけられるのは、皇帝の血筋に連なる者だけなのだ。
若者はどんどん道を下っていく。いつの間にか石の舗装が途切れ、街路樹の代わりに露店が建ち並ぶのが見え始めた。島の北側の邸宅街とは打って変わって、南は庶民の街になっている。昼時の市場は、雑然と騒がしかった。
「ウムト様! ポロ桃はいかが? よく熟れたのが採れたんですよ!」
「お昼はもうお済み? ウチで食べていきなよ! 今日の定食はヒラウオの揚げたのと、すり身の潮汁ですよ」
路傍からは次々に声が掛かる。ウムトと呼びかけられた若者は
「ポロ桃? もちろんもらうよ。そっちの水瓜も欲しいな。一番大きいヤツ」
と、こぶし大の紫色の果実を三つほど掴んで長衣のポケットに突っ込み、人の頭ほどもある緑色の瓜を片手で抱えた。
「定食はまた今度いただくよ! これから行く場所があるんだ。ヒラウオの揚げたのだけちょうだい。あと、パンを一つ」
と大人の男の足裏ほどもあるフライを指先で摘まむ。
「アツッ!」
「そりゃ揚げたてですから熱いですよ! ほら、パンに挟みましたから」
薄いパンに挟んだフライを受け取り、若者は照れくさそうな笑みを浮かべて足を速めた。その後を、路地から飛び出してきた小さな子ども達が追いかける。
「ウムト、今日は遊べる!? こないだ教えてもらったコマ回し、すごく上手くなったから見てよ!」
「アタシも新しい踊りを覚えた! 今から踊るから見てて!」
「ウチの店に来て! すごく素敵な籠があるから! ウムトも絶対気に入るよ」
小さな手で四方から袖を引かれて、ウムトは困ったように眉を下げた。
「うーん、ごめんな、今日は用があるから、また今度」
断っても、子ども達は引き下がらない。
「何なに!? あたしたち手伝うよ!」
「君らには無理だよ。お仕事だから」
「お仕事? ムディク様も一緒?」
「ムディク様が来るなら、あとでウチに寄って欲しい……父ちゃんがひどい怪我したの」
「うちも! 妹が熱だしてて……」
ウムトは一度立ち止まってわざと怖い顔で腕組みをした。
「君たちねえ、どうしてオレのことは呼び捨てなのに、ムディクのことは様付けなんだよ」
怖い声で言ってみせても、足にまとわりついてくる子どもたちは全く怯む気配がない。
「ウムトはウムトだもん!」
「名前で呼んで良いってウムトが言った!」
「アンタたち、いい加減にしな! 殿下に失礼でしょうが!」
露店から身を乗り出した中年の女が、子どもたちを叱り飛ばした。ウムトは苦笑いで首を振る。
「構わないよ、名で呼んで良いって言ったのは確かにオレだから。でもホントにそろそろ行かなきゃ。さあ、みんな手伝いに戻れ!」
手を叩くと、子ども達はクモの子を散らすように逃げていく。母親らしき女は、申し訳なさそうに頭を下げていた。
ウムトは二年前、前任者の死を受けてこの島の長官に任命されたが、その頃のチェファタル島はひどい有様だった。
前任の県長官は私腹を肥やすことにしか興味がなく、島では賄賂と人身売買が横行していたのだ。前任が死ぬまで長く続いた暴政のおかげで、チェファタル島の治安は北部の別荘地を除いて最悪だった。
ウムトがやったことは、たった二つだ。
一つは賄賂を受け取らないようにしたこと。
もう一つは、野放しになっていた島の人身売買業者にアマジヤ本国での奴隷売買規則を当てはめ、違反した者には厳しい処罰を与えるようにしたこと。
たった二つの施策で、島は平和な賑やかさを取り戻しつつある。利権を剥ぎ取られた富裕層にはウムトを憎む者も多くいるが、若く気さくな新長官は島民の大多数から敬愛されていた。
ウムトは島民たちに愛想を振りまきながら市場を抜けていく。所々に溜まった汚物やゴミを蹴飛ばさないように気をつけながら人通りのない路地を抜け、一軒の廃屋に足を踏み入れた。
入り口の暗がりには、老人が一人うずくまっている。
「ハディ、イブン。客人の具合はどう?」
膝を抱えて居眠りをしている老人に声を掛けると、老人は不明瞭な発音で何かを呟いてから、枯れ木のような手で奥を指した。
低い天井に頭をぶつけないよう気を付けて奥へ進むと、外の眩しさとは打って変わってひどく薄暗かった。目が慣れるまで、砂まみれの床をサンダルの底でこすりながら慎重に進み、中庭に面した部屋に入る。
壁際には低い寝台があり、擦り切れた敷布の上には、腰布だけを身につけた男が横たわっていた。その傍らに、痩せた黒衣の男が跪いている。
「様子は?」
ウムトが問うと、黒衣の男は溜息をつきながら首を横に振った。男はムディクという名で、ウムトに仕える医者兼占術師だ。顔の下半分を布で覆っている。毛の一本残さず剃り上げた頭皮と目元の肌は、ウムトよりも濃い赤褐色だった。剃った頭は医術の心得を持つ者の印て、黒衣は皇族付き占術師の証だ。
「駄目でしょうね。衰弱するばかりで、薬水を飲ませても全て吐いてしまう。おそらく日暮れには息を引き取る。半日粘りましたが、何も聞き出せなかった」
ムディクが疲れた声で言うと、ウムトは残念そうにため息をついた。
「そうか……。汁だけでも飲めたらと思って水瓜を持ってきたけど、無駄だったかな」
「それは私にくださいよ! 昨日、晩飯前に急にここに連れてこられたせいで、私は半日以上食事をしてないんです!」
「ホント!? ごめん! イブンに金を渡して頼んでおいたんだけどな……」
ウムトがナイフで切り分けた瓜を手渡すと、ムディクはそれに勢いよくかぶりつき、
「あの爺さんはボケてますよ」
と肩をすくめた。
「ところで、この男は何なんです? 南の海岸に倒れてたんですよね? チェファタルの人間じゃないでしょう?」
ウムトの持ってきた食料を平らげたムディクはしかめ面でそう訊いた。ウムトはベッドの側にしゃがみ込み、男の二の腕のに彫られた入れ墨を確かめる。
「うん。昨日の夕方、オレが見つけた。この入れ墨、お前も知ってるだろ。本国の軍人だよ。羽根は近衛の印、二本線は指揮官級。でも体に傷がないし手の平が薄いから、実戦部隊じゃない」
と低く呟いた。ムディクは嫌そうに顔を歪める。
「なんでそんなのが流れ着くんです? しかも北じゃなくて南側に? ガルダニアとは休戦中でしょう?」
「分からないよ。船の難破や座礁なら他の船員や残骸も流れ着くはずだけど、それはなかった。この人だけが浜に打ち上げられてた」
「まさか、諜報ですか? でも、ウチを探ったって何にも出ないでしょう? アナタ、私に内緒で何か変なことしてないでしょうね?」
「そんなわけない!」
ウムトが大声で抗議した途端、男が呻き声を上げた。二人はピタリと会話をやめて男を注視する。
「フィ……様……に……、」
男の乾ききった唇がわずかに動き、隙間風のような声がした。ムディクは男の口元に耳を寄せる。
「何?」
「陸が見えたと……南に……」
かすれ声が聞こえる度に死の臭いが鼻先に強く漂って、胸が悪くなる。
「南に陸? ガルダニアのことか?」
口元の布をしっかりと巻き直しつつムディクが聞き返すと、男は低く唸った。
「ちが……暗黒海の……神の島……フィク……さまに…………」
それだけ言って身体をわずかに痙攣させ、男は二度と呼吸しなくなる。
「……息絶えた」
ムディクは男に覆い被さるようにしていた上体を起こし、首を左右に振った。
「何を言ってた?」
「フィクーフに何かを伝えろと言っていました。南に陸、暗黒海の神の島……それくらいしか聞き取れなかった」
ムディクは男の顔を撫でて光のなくなった半眼を閉じさせつつ答える。ウムトは
「暗黒海に島?」
と首を傾げた。
暗黒海とは、チェファタル島の南に広がる海のことだ。波の穏やかな海なのだが、沖に出た船は必ず姿を消してしまうため、船乗り達からは恐れられている。しかし、暗黒海を超えて別の国の船が近づくこともないので、アマジヤ南岸の安全は滅多なことでは脅かされない。チェファタルに軍事的意味がないのも暗黒海のおかげだ。
──その暗黒海に島がある?
ウムトは腕組みをして考え込んだ。
そんな話は聞いたことがないが、しかし大宰相フィクーフは底知れぬ力を持った占術師だ。暗黒海に異変があるのを占いで察知して、密かに調査を始めた可能性はある。
「ムディク、頼みごとがあるんだけど……」
年下の主君に声をかけられて、ムディクは目を剥いて悲鳴をあげた。
「徹夜した上にこれから死体を始末しなきゃいけない私を、さらに働かせるつもりですか!?」
「ごめん。君の有能さにはいつも感謝してる。君にしか頼めないことなんだ」
申し訳なさそうに大きな目で見上げられ、ムディクは
「褒めても何も出ないですよ!」
と顔を引きつらせつつも、
「頼みたい事って?」
と先を促す。いつでも頼みを聞いてくれる腹心に感謝しつつ、ウムトは
「暗黒海がいつもと変わりないかを占って欲しいんだ」
と言った。ムディクは意外そうに眉を上げる。
「暗黒海? 嵐が来るかどうかとか、そういうことですか?」
「違う。その男、息を引き取る前に言ったんだよな? 『暗黒海』『神の島』と」
「そうですよ。何のことかサッパリですけど……」
「それをフィクーフに伝えるようにと言って死んだ。つまり、この男はフィクーフの命で暗黒海を調べていたってことだろう? なぜ今頃? 暗黒海は何百年もほったからしにされてた。今になって急にフィクーフが気にかける理由がわからない。オレはフィクーフの目的が知りたい」
「フィクーフは私の手には負えない。当代きっての占術師ですよ。彼に関わることを占ったら、すぐに向こうに悟られてしまう」
「それは分かってる。直接フィクーフの目的を探るんじゃなくて、暗黒海に変化があるかどうかなら占えるだろう?」
「まあ……そう、ですけど……しかし占いでは具体的なことは分かりませんよ?」
「構わない。手がかりが欲しい」
ムディクは眉間にしわを寄せ、しばらく考え込んでいたが、
「……分かりました。でも先にこっちを始末しましょう」
と黒衣の懐からナイフを取りだして鞘を払った。そして躊躇いなく遺体の腕に刃を当て、刺青のある部分の皮膚を剥がして窓から中庭に放り投げる。刺青入りの皮はじきに野良犬にでも食われて、跡形もなくなるだろう。ムディクは次に遺体の顔の皮膚も器用に剥ぎ取り、ナイフの柄で死体の歯を折った。大宰相フィクーフの密偵がウムトの近くで死んだ分かると面倒だから、身元の分かりそうな部分を潰すのは当然の処置だ。
ウムトは躊躇なく死体を損壊するムディクの手際に舌を巻いた。
「……君がオレの見方になってくれて本当に良かったと思う」
感嘆を込めてそう言うと、ムディクは血で濡れたナイフを水差しの水で洗い流しながら、
「大したことじゃありません。生きた人間相手じゃないですからね」
と肩をすくめ、口元を覆った布をはずして頭に巻き直した。
二人は顔の分からなくなった死体をシーツにつつんでから、血と死の臭いが漂う部屋を後にする。去り際、ウムトが
「イブン、中の死体は海に沈めておいてくれ」
と居眠りしていた老人に小銭を渡して頼むと、老人はボンヤリと頷き、見た目よりもしっかりした足取りで奥へと入っていった。
「大丈夫なんです? あの爺さん」
「イブンはチェファタルの海の達人だよ。確実に死体が上がらない場所を知ってる。まあ、海のこと以外には気が回らないけど……例えば君に食べ物を用意するとか……」
ウムトが申し訳なさそうに微笑むと、ムディクはちょっと肩をすくめた。
貧民街を抜けると、すぐに海辺に出る。
濃い青の空には真っ白な入道雲が浮いていて、遠浅の海は穏やかなエメラルドグリーンに輝いていた。恐ろしい事など一つもなさそうな海辺の景色だが、霞む水平線の向こうには魔の暗黒海がある。
ムディクは波のかからない砂の上に、指で複雑な円模様を描き、黒衣の袖から取り出した透明な杯に海水を汲んで、円の中央に置いた。占いには手がかりがいる。今は海の水だ。人差し指を坏につけ、神妙な顔で何事かを小声で唱え始める。
ウムトは少し離れた場所でそれを見ていた。
ムディクとは幼い頃からの友人だ。出会った頃のムディクは医者を目指していたが、ウムトが皇族だと知って、目指す道を医者から占術師に替えたのだ。アマジヤの皇族は大抵自分専属の占術師を雇用する。本人は出世欲に目が眩んだと笑っていたが、そんなのは嘘だとウムトは分かっている。自分と道を共にしても、出世など望めない。ウムトは、ムディクが味方の少ない自分を側で支えるために、道を変えてくれたのだと分かっている。ムディクは昔も今もかわらず、頼れる年上の親友だった。
「……分からんな」
その頼れるムディクが、頭を振りながら立ち上がる。杯は倒れて、周りの砂が斑に濡れていた。
「どういう結果だったんだ?」
「占いが示したのは、『霧が晴れる』と、『大きな鳥』の二つ」
「南海に霧が出ることは滅多にないし、鳥はいつでも飛んでる」
ウムトは空を見上げて言った。今も沢山の海鳥が上空を舞っている。
「そうなんですが、『霧』の解釈が難しい。阻む物、隠す物と解釈すれば、暗黒海で今まで隠されていたものが現れるとも取れる」
「……何も見えないけど」
目を細めても、海の上には何も見えない。ムディクは肩をすくめた。
「陸から見える範囲は意外と狭いんですよ。大宰相フィクーフも同じようなことを占ったのかもしれない。向こうは私よりも具体的な結果を得たでしょう。その結果を気にして、暗黒海に興味を持ったのかもしれない」
砂に書いた模様を足で消しながらムディクが言うと、ウムトは頷いた。
「あり得るな。しかし暗黒海に関わることはヴィリスの管轄だ。フィクーフに勝手をされるわけには行かない」
ヴィリスはアマジヤ皇国本土の南端に位置する港湾都市だ。行政上チェファタルはヴィリスの飛び地として扱われているため、何かあればヴィリス総督の判断を仰ぐ必要がある。
「ヴィリスへ知らせる必要がありますね。ご自分で行かれますか?」
ムディクに上目遣いで問われ、ウムトは首を振った。ヴィリスにはウムトの異母姉・エルヴィラがいる。会えば毎回同じ繰り言を聞かされる羽目になるので、できるだけ近づきたくない。
「書状を書くから、君が運んでくれよ。ついでに何か土産を持って行って、姉上のご機嫌伺いも頼むよ」
「もちろんですとも!」
ムディクは喜色満面で頷いた。彼はエルヴィラの侍女の一人に惚れ込んでいるのだ。それを知っているウムトは、姉との連絡にはなるべくムディクを使ってやることにしていた。
「土産は多めに持っていっていいし、二、三日ヴィリスで遊んでくるといい」
「遊びはしませんが、あちらの様子はしっかり探ってきますよ!」
ムディクは跳ねるような足取りで浜辺を後にする。ウムトは水蒸気で煙る水平線をチラリと眺め、おもむろにムディクの後を追った。
行政上は軍港都市ヴィリス州の管理下にあるが、皇都からは遠く離れた辺境の小島に軍事的な意味はほとんどない。白い砂浜と豊富な緑に囲まれた島は、その景観の美しさから「アマジヤの真珠」と称され、貴族や富裕層の保養地としては人気があった。
港のある島の北側は県長官の邸や貴族達の別荘が建ち並び、街並みも瀟洒で美しい。
高く昇った太陽が照りつける真昼、その邸宅通りを一人の若者が南へ向かって歩いていた。
暦の上ではもう秋だが、チェファタルの陽光は街路樹の枝越しにもまだまだ強く、豪華な邸宅の住人たちは暑さを避けて屋内に引きこもっているのか、石畳の道には人影が少ない。若者は、よく鞣された皮のサンダルの踵で、石畳を踏んでいく。足取りは軽い。頭を白い布で覆い、金糸の縁取りのある薄青の長衣に身を包んでいる。整った顔立ちの中で、目尻の上がった大きな瞳がくっきりと印象的だった。肌は濃く煮出した紅茶に、ほんの少しミルクを混ぜたような色。日焼けなのか、元の肌色が暗いのかは分からない。
朗らかに口笛を吹きつつ大股で歩く姿には気取ったところがなかったが、耳につけた鳥の形の耳飾りから、この若者が皇族の一人だと分かる。アマジヤ皇国で鳥の象徴を身につけられるのは、皇帝の血筋に連なる者だけなのだ。
若者はどんどん道を下っていく。いつの間にか石の舗装が途切れ、街路樹の代わりに露店が建ち並ぶのが見え始めた。島の北側の邸宅街とは打って変わって、南は庶民の街になっている。昼時の市場は、雑然と騒がしかった。
「ウムト様! ポロ桃はいかが? よく熟れたのが採れたんですよ!」
「お昼はもうお済み? ウチで食べていきなよ! 今日の定食はヒラウオの揚げたのと、すり身の潮汁ですよ」
路傍からは次々に声が掛かる。ウムトと呼びかけられた若者は
「ポロ桃? もちろんもらうよ。そっちの水瓜も欲しいな。一番大きいヤツ」
と、こぶし大の紫色の果実を三つほど掴んで長衣のポケットに突っ込み、人の頭ほどもある緑色の瓜を片手で抱えた。
「定食はまた今度いただくよ! これから行く場所があるんだ。ヒラウオの揚げたのだけちょうだい。あと、パンを一つ」
と大人の男の足裏ほどもあるフライを指先で摘まむ。
「アツッ!」
「そりゃ揚げたてですから熱いですよ! ほら、パンに挟みましたから」
薄いパンに挟んだフライを受け取り、若者は照れくさそうな笑みを浮かべて足を速めた。その後を、路地から飛び出してきた小さな子ども達が追いかける。
「ウムト、今日は遊べる!? こないだ教えてもらったコマ回し、すごく上手くなったから見てよ!」
「アタシも新しい踊りを覚えた! 今から踊るから見てて!」
「ウチの店に来て! すごく素敵な籠があるから! ウムトも絶対気に入るよ」
小さな手で四方から袖を引かれて、ウムトは困ったように眉を下げた。
「うーん、ごめんな、今日は用があるから、また今度」
断っても、子ども達は引き下がらない。
「何なに!? あたしたち手伝うよ!」
「君らには無理だよ。お仕事だから」
「お仕事? ムディク様も一緒?」
「ムディク様が来るなら、あとでウチに寄って欲しい……父ちゃんがひどい怪我したの」
「うちも! 妹が熱だしてて……」
ウムトは一度立ち止まってわざと怖い顔で腕組みをした。
「君たちねえ、どうしてオレのことは呼び捨てなのに、ムディクのことは様付けなんだよ」
怖い声で言ってみせても、足にまとわりついてくる子どもたちは全く怯む気配がない。
「ウムトはウムトだもん!」
「名前で呼んで良いってウムトが言った!」
「アンタたち、いい加減にしな! 殿下に失礼でしょうが!」
露店から身を乗り出した中年の女が、子どもたちを叱り飛ばした。ウムトは苦笑いで首を振る。
「構わないよ、名で呼んで良いって言ったのは確かにオレだから。でもホントにそろそろ行かなきゃ。さあ、みんな手伝いに戻れ!」
手を叩くと、子ども達はクモの子を散らすように逃げていく。母親らしき女は、申し訳なさそうに頭を下げていた。
ウムトは二年前、前任者の死を受けてこの島の長官に任命されたが、その頃のチェファタル島はひどい有様だった。
前任の県長官は私腹を肥やすことにしか興味がなく、島では賄賂と人身売買が横行していたのだ。前任が死ぬまで長く続いた暴政のおかげで、チェファタル島の治安は北部の別荘地を除いて最悪だった。
ウムトがやったことは、たった二つだ。
一つは賄賂を受け取らないようにしたこと。
もう一つは、野放しになっていた島の人身売買業者にアマジヤ本国での奴隷売買規則を当てはめ、違反した者には厳しい処罰を与えるようにしたこと。
たった二つの施策で、島は平和な賑やかさを取り戻しつつある。利権を剥ぎ取られた富裕層にはウムトを憎む者も多くいるが、若く気さくな新長官は島民の大多数から敬愛されていた。
ウムトは島民たちに愛想を振りまきながら市場を抜けていく。所々に溜まった汚物やゴミを蹴飛ばさないように気をつけながら人通りのない路地を抜け、一軒の廃屋に足を踏み入れた。
入り口の暗がりには、老人が一人うずくまっている。
「ハディ、イブン。客人の具合はどう?」
膝を抱えて居眠りをしている老人に声を掛けると、老人は不明瞭な発音で何かを呟いてから、枯れ木のような手で奥を指した。
低い天井に頭をぶつけないよう気を付けて奥へ進むと、外の眩しさとは打って変わってひどく薄暗かった。目が慣れるまで、砂まみれの床をサンダルの底でこすりながら慎重に進み、中庭に面した部屋に入る。
壁際には低い寝台があり、擦り切れた敷布の上には、腰布だけを身につけた男が横たわっていた。その傍らに、痩せた黒衣の男が跪いている。
「様子は?」
ウムトが問うと、黒衣の男は溜息をつきながら首を横に振った。男はムディクという名で、ウムトに仕える医者兼占術師だ。顔の下半分を布で覆っている。毛の一本残さず剃り上げた頭皮と目元の肌は、ウムトよりも濃い赤褐色だった。剃った頭は医術の心得を持つ者の印て、黒衣は皇族付き占術師の証だ。
「駄目でしょうね。衰弱するばかりで、薬水を飲ませても全て吐いてしまう。おそらく日暮れには息を引き取る。半日粘りましたが、何も聞き出せなかった」
ムディクが疲れた声で言うと、ウムトは残念そうにため息をついた。
「そうか……。汁だけでも飲めたらと思って水瓜を持ってきたけど、無駄だったかな」
「それは私にくださいよ! 昨日、晩飯前に急にここに連れてこられたせいで、私は半日以上食事をしてないんです!」
「ホント!? ごめん! イブンに金を渡して頼んでおいたんだけどな……」
ウムトがナイフで切り分けた瓜を手渡すと、ムディクはそれに勢いよくかぶりつき、
「あの爺さんはボケてますよ」
と肩をすくめた。
「ところで、この男は何なんです? 南の海岸に倒れてたんですよね? チェファタルの人間じゃないでしょう?」
ウムトの持ってきた食料を平らげたムディクはしかめ面でそう訊いた。ウムトはベッドの側にしゃがみ込み、男の二の腕のに彫られた入れ墨を確かめる。
「うん。昨日の夕方、オレが見つけた。この入れ墨、お前も知ってるだろ。本国の軍人だよ。羽根は近衛の印、二本線は指揮官級。でも体に傷がないし手の平が薄いから、実戦部隊じゃない」
と低く呟いた。ムディクは嫌そうに顔を歪める。
「なんでそんなのが流れ着くんです? しかも北じゃなくて南側に? ガルダニアとは休戦中でしょう?」
「分からないよ。船の難破や座礁なら他の船員や残骸も流れ着くはずだけど、それはなかった。この人だけが浜に打ち上げられてた」
「まさか、諜報ですか? でも、ウチを探ったって何にも出ないでしょう? アナタ、私に内緒で何か変なことしてないでしょうね?」
「そんなわけない!」
ウムトが大声で抗議した途端、男が呻き声を上げた。二人はピタリと会話をやめて男を注視する。
「フィ……様……に……、」
男の乾ききった唇がわずかに動き、隙間風のような声がした。ムディクは男の口元に耳を寄せる。
「何?」
「陸が見えたと……南に……」
かすれ声が聞こえる度に死の臭いが鼻先に強く漂って、胸が悪くなる。
「南に陸? ガルダニアのことか?」
口元の布をしっかりと巻き直しつつムディクが聞き返すと、男は低く唸った。
「ちが……暗黒海の……神の島……フィク……さまに…………」
それだけ言って身体をわずかに痙攣させ、男は二度と呼吸しなくなる。
「……息絶えた」
ムディクは男に覆い被さるようにしていた上体を起こし、首を左右に振った。
「何を言ってた?」
「フィクーフに何かを伝えろと言っていました。南に陸、暗黒海の神の島……それくらいしか聞き取れなかった」
ムディクは男の顔を撫でて光のなくなった半眼を閉じさせつつ答える。ウムトは
「暗黒海に島?」
と首を傾げた。
暗黒海とは、チェファタル島の南に広がる海のことだ。波の穏やかな海なのだが、沖に出た船は必ず姿を消してしまうため、船乗り達からは恐れられている。しかし、暗黒海を超えて別の国の船が近づくこともないので、アマジヤ南岸の安全は滅多なことでは脅かされない。チェファタルに軍事的意味がないのも暗黒海のおかげだ。
──その暗黒海に島がある?
ウムトは腕組みをして考え込んだ。
そんな話は聞いたことがないが、しかし大宰相フィクーフは底知れぬ力を持った占術師だ。暗黒海に異変があるのを占いで察知して、密かに調査を始めた可能性はある。
「ムディク、頼みごとがあるんだけど……」
年下の主君に声をかけられて、ムディクは目を剥いて悲鳴をあげた。
「徹夜した上にこれから死体を始末しなきゃいけない私を、さらに働かせるつもりですか!?」
「ごめん。君の有能さにはいつも感謝してる。君にしか頼めないことなんだ」
申し訳なさそうに大きな目で見上げられ、ムディクは
「褒めても何も出ないですよ!」
と顔を引きつらせつつも、
「頼みたい事って?」
と先を促す。いつでも頼みを聞いてくれる腹心に感謝しつつ、ウムトは
「暗黒海がいつもと変わりないかを占って欲しいんだ」
と言った。ムディクは意外そうに眉を上げる。
「暗黒海? 嵐が来るかどうかとか、そういうことですか?」
「違う。その男、息を引き取る前に言ったんだよな? 『暗黒海』『神の島』と」
「そうですよ。何のことかサッパリですけど……」
「それをフィクーフに伝えるようにと言って死んだ。つまり、この男はフィクーフの命で暗黒海を調べていたってことだろう? なぜ今頃? 暗黒海は何百年もほったからしにされてた。今になって急にフィクーフが気にかける理由がわからない。オレはフィクーフの目的が知りたい」
「フィクーフは私の手には負えない。当代きっての占術師ですよ。彼に関わることを占ったら、すぐに向こうに悟られてしまう」
「それは分かってる。直接フィクーフの目的を探るんじゃなくて、暗黒海に変化があるかどうかなら占えるだろう?」
「まあ……そう、ですけど……しかし占いでは具体的なことは分かりませんよ?」
「構わない。手がかりが欲しい」
ムディクは眉間にしわを寄せ、しばらく考え込んでいたが、
「……分かりました。でも先にこっちを始末しましょう」
と黒衣の懐からナイフを取りだして鞘を払った。そして躊躇いなく遺体の腕に刃を当て、刺青のある部分の皮膚を剥がして窓から中庭に放り投げる。刺青入りの皮はじきに野良犬にでも食われて、跡形もなくなるだろう。ムディクは次に遺体の顔の皮膚も器用に剥ぎ取り、ナイフの柄で死体の歯を折った。大宰相フィクーフの密偵がウムトの近くで死んだ分かると面倒だから、身元の分かりそうな部分を潰すのは当然の処置だ。
ウムトは躊躇なく死体を損壊するムディクの手際に舌を巻いた。
「……君がオレの見方になってくれて本当に良かったと思う」
感嘆を込めてそう言うと、ムディクは血で濡れたナイフを水差しの水で洗い流しながら、
「大したことじゃありません。生きた人間相手じゃないですからね」
と肩をすくめ、口元を覆った布をはずして頭に巻き直した。
二人は顔の分からなくなった死体をシーツにつつんでから、血と死の臭いが漂う部屋を後にする。去り際、ウムトが
「イブン、中の死体は海に沈めておいてくれ」
と居眠りしていた老人に小銭を渡して頼むと、老人はボンヤリと頷き、見た目よりもしっかりした足取りで奥へと入っていった。
「大丈夫なんです? あの爺さん」
「イブンはチェファタルの海の達人だよ。確実に死体が上がらない場所を知ってる。まあ、海のこと以外には気が回らないけど……例えば君に食べ物を用意するとか……」
ウムトが申し訳なさそうに微笑むと、ムディクはちょっと肩をすくめた。
貧民街を抜けると、すぐに海辺に出る。
濃い青の空には真っ白な入道雲が浮いていて、遠浅の海は穏やかなエメラルドグリーンに輝いていた。恐ろしい事など一つもなさそうな海辺の景色だが、霞む水平線の向こうには魔の暗黒海がある。
ムディクは波のかからない砂の上に、指で複雑な円模様を描き、黒衣の袖から取り出した透明な杯に海水を汲んで、円の中央に置いた。占いには手がかりがいる。今は海の水だ。人差し指を坏につけ、神妙な顔で何事かを小声で唱え始める。
ウムトは少し離れた場所でそれを見ていた。
ムディクとは幼い頃からの友人だ。出会った頃のムディクは医者を目指していたが、ウムトが皇族だと知って、目指す道を医者から占術師に替えたのだ。アマジヤの皇族は大抵自分専属の占術師を雇用する。本人は出世欲に目が眩んだと笑っていたが、そんなのは嘘だとウムトは分かっている。自分と道を共にしても、出世など望めない。ウムトは、ムディクが味方の少ない自分を側で支えるために、道を変えてくれたのだと分かっている。ムディクは昔も今もかわらず、頼れる年上の親友だった。
「……分からんな」
その頼れるムディクが、頭を振りながら立ち上がる。杯は倒れて、周りの砂が斑に濡れていた。
「どういう結果だったんだ?」
「占いが示したのは、『霧が晴れる』と、『大きな鳥』の二つ」
「南海に霧が出ることは滅多にないし、鳥はいつでも飛んでる」
ウムトは空を見上げて言った。今も沢山の海鳥が上空を舞っている。
「そうなんですが、『霧』の解釈が難しい。阻む物、隠す物と解釈すれば、暗黒海で今まで隠されていたものが現れるとも取れる」
「……何も見えないけど」
目を細めても、海の上には何も見えない。ムディクは肩をすくめた。
「陸から見える範囲は意外と狭いんですよ。大宰相フィクーフも同じようなことを占ったのかもしれない。向こうは私よりも具体的な結果を得たでしょう。その結果を気にして、暗黒海に興味を持ったのかもしれない」
砂に書いた模様を足で消しながらムディクが言うと、ウムトは頷いた。
「あり得るな。しかし暗黒海に関わることはヴィリスの管轄だ。フィクーフに勝手をされるわけには行かない」
ヴィリスはアマジヤ皇国本土の南端に位置する港湾都市だ。行政上チェファタルはヴィリスの飛び地として扱われているため、何かあればヴィリス総督の判断を仰ぐ必要がある。
「ヴィリスへ知らせる必要がありますね。ご自分で行かれますか?」
ムディクに上目遣いで問われ、ウムトは首を振った。ヴィリスにはウムトの異母姉・エルヴィラがいる。会えば毎回同じ繰り言を聞かされる羽目になるので、できるだけ近づきたくない。
「書状を書くから、君が運んでくれよ。ついでに何か土産を持って行って、姉上のご機嫌伺いも頼むよ」
「もちろんですとも!」
ムディクは喜色満面で頷いた。彼はエルヴィラの侍女の一人に惚れ込んでいるのだ。それを知っているウムトは、姉との連絡にはなるべくムディクを使ってやることにしていた。
「土産は多めに持っていっていいし、二、三日ヴィリスで遊んでくるといい」
「遊びはしませんが、あちらの様子はしっかり探ってきますよ!」
ムディクは跳ねるような足取りで浜辺を後にする。ウムトは水蒸気で煙る水平線をチラリと眺め、おもむろにムディクの後を追った。
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★☆★毎週金曜20時前後と火曜20時前後に投稿予定★☆★
前作「エロゲ世界のモブに転生したオレの一生のお願い!」はAmazon Kindle(Unlimited対象)でもお読み頂けます!加筆修正完全版で描き下ろし多数ありますので、どうぞよろしく~
上巻 ・ 下巻 ・ 番外編
紙の文庫本上下巻
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