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終章

エピローグ.3 ※

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【直接的な性描写があります。苦手な方は飛ばしてください】



***********



 最初から遠慮のない深いキスで息を乱された。夢中で応えている内に、たくし上げられたシャツの裾から手が入り込む。温かくて硬い手のひらが、オレのへなちょこな筋肉を確かめるように腹や胸を彷徨う。

「んん……」

 息苦しくて鼻を鳴らすと、濡れた音を立てて唇が離れた。オレはもう完全に息が上がってたし、カレルもちょっとだけ呼吸が速い。
 長い器用な指がオレのシャツのボタンを外して前をはだけさせる。首に腕を回すと、耳元に唇が落ちてきた。首筋に鼻を埋められて匂いを嗅がれ、恥ずかしくて顔をそらす。

「か、嗅ぐなよ……」

「花の香りがする」

「あ……ジョヴァンナが石鹸をくれて、それ使ったからかも」

 カレルは顔を上げ、不満げに唇を尖らせた。

「花の香りも良いが、アキオの匂いが薄い」

「ギャッ! だから嗅がないでってば!」

 項や喉元を辿って、脇まで高い鼻先でくすぐるように嗅ぎ回られる。動物めいた仕草に、そういやカレルの本性は熊なんだと思い出した。

 匂いを気にするのは本性のせいだと分かっても、恥ずかしいものは恥ずかしい。
 オレは必死で脇を隠そうとしたけど、簡単に肘を押さえ込まれてバンザイするように片腕を上げさせられる。二の腕の内側の薄い皮膚を舐められて、くすぐったさに背中が丸まった。

「やめ……くすぐった……っ!」

 腕の付け根の窪みを舌先で辿られ、こっちの世界に来てからちょっとだけ付いた胸筋を甘く噛まれた。すぐ横に唇が移動すると、なんの役にも立たない乳首に行き着く。米粒みたいなそれを口に含まれてると、特に気持ち良くはないけど変な気分になる。空いた手で腰骨の辺りを服の上から撫でられて、じんわり下腹が重くなった。
 オレは押さえられた肘を曲げてカレルの腕に触れる。手触りの悪いシャツが邪魔だった。

「は……、はぁ……これ、脱いでよ……じゃま……」

 袖を引っ張ると、カレルが小さく唸って上体を起こした。首元だけボタンを外してもがくようにしてシャツを脱ぎ、下半身に着ているものも躊躇なく全部脱ぐ。
 下まで脱ぐと思わなかったオレがポカンとそれを見ていると、背中を抱き起こされて中途半端に腕に絡まってたシャツを剥ぎ取られた。下履きごとズボンも簡単に取り去られて、丸裸にされる。

「あ! ちょ……! 待って!」

 股間に戻ってきてるブツを隠す間もなく見られて、オレは今更ながら足を閉じて両手でそこを隠した。
 カレルは一瞬固まった後、オレの両膝に手をかけて脚を開かせる。脚を閉じようと力を入れても、間に身体を入れられて阻まれた。裸の太腿が触れあう。そんな場所に人の体温を直に感じたことがないので、ギョッとして脚が跳ねた。

「わーっ! わっ……! その、オレのそれね! なんでか分かんないけど、も、戻ってきたんだよね! ビックリするよね!? なんかごめんね!?」

 もう隠してもしょうがないし、両手をそこから外して代わりに顔を覆う。上ずった声でわめくと、指の背でそっとまだ柔らかいそれに触れられた。

「なぜ謝る? 取り戻せて良かったな」

 顔を隠す両手を優しく外されて、口づけられる。ついばむように唇を吸われながら、下を緩く擦られると、あっという間に気持ち良くなってしまった。
 自分でするのとは全然違う触り方、自分の手とは全然違う手。意識すればするほど感覚が鋭くなって腰が震えた。

 バカみたいに正直に立ち上がったソレをあやすように撫でつつ、カレルの唇は再び喉を掠めて胸元へと下がっていく。
 円を描くように亀頭を撫でられながら、同じように乳首を丸く舌で愛撫されて、気持ちいいのがどっちなのか分からなくなる。

「あっ! うぁっ!」

 指先で先っちょの穴を強く擦るのと同時に、乳首を舌で押しつぶされて、思わず高い声が漏れた。

「あっ……あ、や、なに……? なんでっ……!」

 上と下が電線で繋がったみたいに、同じタイミングでピリピリした快感に襲われる。思わず仰け反ると、もう一度、教え込むように同じ事をされた。一度良さを覚えてしまうと、もう元には戻れなくなる。

「あ……あぅ」

 唇が離れると、ふやけかけた肌が冷える感触にも感じてしまう。カレルは涙目で口元を押さえるオレを見て目を細め、微かに笑った。捕えて喰う側の笑みだ。

「ううぅ~」

 両手で顔を隠して呻くと、逆の乳首に吸い付かれた。もう良いって!と言いたいのに、オレの口からはだらしない喘ぎばかりが漏れる。片方は吸われて、片方は指先で捏ねられ、下は下で執拗に軽い力で撫でられ続ける。
 全部良いのに、全部中途半端で泣きたくなる。
 自分でする時は、雑にしごいて出して終わりだから、こんな風に焦らされると頭がおかしくなりそうだ。
 焦れて、先走りで濡れた手のひらに硬くなったものを押しつけると、なだめるように腹を撫でられた。それすら気持ち良くて腰を浮かせると、同じように立ち上がったカレルのものに、オレの先が触れた。

「っ……」

 お互いのものを押しつけ合うようにすると、カレルが息を詰めてわずかに背中を丸める。もっと強い刺激が欲しくて脚をカレルの腰に絡めて引き寄せると、

「焦るな」

 と軽く髪を引かれた。閉じていた目を開けると、眉間に皺を寄せたカレルがオレを見下ろしていた。

「だってぇ~……はやく楽になりたい……」

 苦しい、と首に縋ると、カレルは大きく息を吸い、上体を起こした。裸の身体の間に溜まった温かい空気が逃げて、汗ばんだ肌が冷える。
 呆れられたんだろうかと怖々様子を伺うと、カレルはベッドサイドのチェストから小瓶を取りだして、蓋を開けているところだった。粘度の高そうな液体が手のひらの窪みに溜まる。
 何に使うのかと目で追いかけると、カレルは液体を指に絡め、オレの尻の間に塗りつけてきた。

「ぁひっ! 何!?」

「濡らさないと傷つけるから……」

 尻の下にクッションを宛がわれ、脚を大きく開かれる。ぬめる指先全部を使って尻の穴の周りをほぐすように撫で回され、身体が強ばった。

 早くして欲しかったのはそっちじゃなくて……!と抗議したかったけど、後ろの方を撫でられながら前を口に含まれて、訳が分からなくなった。

「あぁっ……あふ……っあ、あっ! ん! んん!」

 熱く濡れた口の中で強弱をつけて、吸っては舐められる。前を口に含まれる恥ずかしさも、後ろを触られる嫌悪感も、あんまり強い気持ちよさの前に消し飛んだ。
 勝手に涙が湧いてきて視界がぼやける。自分の声だと思いたくない喘ぎに混じって、ひどい水音が聞こえた。

 元々そんなに保つ方じゃないので、あっという間に追い詰められる。強い快感の合間に後ろの穴に指を入れられた気がしたけど、もう、なんだか全然分からない。

「あーっ! あぅ……あ、は、……あっ……! だ、だめ! も、でる……!」

 カレルの髪に指を差し込んで止めようとすると、一際強く吸い上げられて、呆気なく果てた。全身から汗が噴き出して、射精の余韻に脚が震える。
 呆然と息を弾ませていると、額にキスをされた。瞬きで溜まった涙を払うと、満足げに目を細めたカレルの顔が見えた。

「戻って来て本当に良かったな。オレも嬉しい。アキオが良くなってるのが分かるから」

 回らない頭でゆっくり考えて、何を言われたのかを理解すると、途端に猛烈に恥ずかしくなった。多分真っ赤になってるだろう頬に、カレルがチュッと音を立てて吸い付いてくる。同時にイったばかりの前を撫でられて、入り込んだ指を後ろが勝手に締め付けた。

「う……」

 違和感に眉を寄せると、獰猛な笑みを浮かべた唇に口をふさがれた。青臭く苦い味がして、口でイかされて、出したものを飲まれたんだと、ようやく理解が追いついた。

───飲んだの!? そんなもんを!?

 驚きと若干の後悔と、訳の分からない興奮で頭が破裂しそうだった。

───もしかしてセックスって、とんでもないことなんじゃないの?

 今更怖くなってくる。それでも身体は勝手にどんどん快楽を拾い始める。

「……んっ!」

 口から食われてるみたいなキスの合間に、後ろに入った指がゆっくり動き出す。探るような動きに痛みは感じないけど、内臓をいじくられる怖さで身体がすくむ。それを察してくれたのか、深くまで押し込まれていた指が一旦抜けて、浅いところを広げるようになぞられた。

「痛いか?」

 耳に直接掠れた声を吹き込まれ、背中にぞくりとした感覚が走った。

「い、痛くはないけど……」

「なら少し我慢してくれ……」

 頷いてカレルの背中に腕を回すと、汗で微かに湿っていた。息も荒い。ずっと我慢させていたのに、今も先を急がずに耐えてくれてると思うと、愛しさで胸がキュッとなった。
 ついでに後ろの方もキュッとしてしまったらしく、「アキオ」と名前を呼ばれて尻を軽く叩かれた。

「力を抜いて」

 言われてできるものでもないけど、なるべく脱力を心がける。浅い場所をほぐしていた指はいつのまにか二本に増えて、穴の縁を広げにかかっている。優しいけど容赦のない手つきに、オレはひたすら翻弄された。

 尻をいじられる違和感に萎えていた前を緩く擦られて、頭がボンヤリしてきたところで、すかさず後ろの指を増やされた。痛みはないけど、ひたすらキツイ。短い息を繰り返していると、入り込んだ指が届く限りの奥から手前までを何度も往復する。

「……っ! ふっ、う……く……あっ! あ? あっ!?」

「ここか?」

 何度か出し入れされる内に、良い場所を探し当てられた。確かめるように中を指先で押し上げられると、強い快感に襲われて急に前が立ち上がるのが分かった。

「あっ! や、何これ!? ヤダ! あっ、あぁっ……んっく!」

 未知の感覚に悲鳴を上げると、深い口づけでなだめられる。口も前も気持ちいいし、後ろは異様な感覚で、体中震えが止まらない。
 口づけが解かれると、カレルは上気したしかめっ面で、

「入れてもいいか……?」

 と聞いてくる。オレはもうどうにでもしてくれと何度も頷いた。

 瞬間、後ろから指が引き抜かれて腰が跳ねた。なくなったものを探すように穴の縁が勝手にうねる。そこへ、指とは別の熱と質量を持ったものが押し当てられた。ごくゆっくりと先だけ押し込まれる。異物感に一気に冷や汗が吹き出した。

「痛かったら言ってくれ……っ」

 そう言うカレルも辛そうだけど、オレのほうも、相手を気遣うどころじゃなかった。

 頭の中では「無理! 無理無理!」と赤信号が激しく点滅し続けている。丁寧にほぐされたおかげで裂けそうな痛みはないんだけど、とにかく一杯一杯だった。腹の中に、熱く脈打つ別の生き物が入りこんでくる。閉ざしておかなきゃいけない場所を開かれてる。

 恐ろしさに震えながら両手を伸ばすと、指を絡めて握られた。

 一番太いところが通り過ぎると、カレルが一旦進むのを止めた。オレは身体の内側を圧迫される感覚に慣れようと深呼吸を繰り返す。
 ちょっとだけ余裕を取り戻して目を開けると、すぐ側に眉を寄せて荒い息を吐いているカレルの顔があった。

「……カレル……」

 呼ぶと綺麗な緑色の目がオレを見る。繋いでいた手を離して、カレルの額にかかる髪をかき分ける。頬を包んで引き寄せて口づけると、中のものが脈打つのが分かった。

「ぁ……っく……」

 ほんの少し引き出されて、もう一度緩く押し込まれる。キツイのはかわらないけど、耐えられないほどじゃない。

「う、うぐ……うん……っ」

 前を触られながらゆっくりと出入りされると、悪くないような気もしてくる。
 オレのちんちん戻ってきてて本当に良かった。なかったらキツイばっかりになるとこだった。

 徐々に中を抉る動きに遠慮がなくなってくる。仰け反って逃げると、脚を抱え込まれて引き戻された。息が上がって心臓が口から飛び出しそうに早く打ち始める。辛いのと気持ちいいのが半分ずつ。

「あ゛っ、あ……、う、う、ぅ……」

「アキオ……アキオ……」

「あっ……ふぁ……!」

 名前を呼ばれて、覆い被さられた。肌がぴったりくっつくと、多幸感で頭がしびれる。キスをねだるとすぐに応えてもらえて、幸せすぎて苦しくて、涙が零れた。
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