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夏山の深い緑の間を、無駄に広く整備された対向二車線の県道が、蛇行しながら貫いている。
道は山を巻いて上っていく。進むほどに日射しが強くなり、白のプリウスを軽快に走らせる[[rb:田辺嘉文 > たなべよしふみ]]は、運転用のサングラスの奥で目を細めた。
ナビの左上に浮かぶ時計は午前十時、その隣の外気温は+32℃だ。目的地に着く頃には、きっと今より暑くなっているだろう。嘉文はうんざりしながら首元のネクタイを緩め、アクセルを踏み込む。車は静かに加速し、目的地までの距離を着々と減らした。
対向車とすれ違うことも無いまま、嘉文の運転する車は県道から逸れ、短い橋を渡って集落の中へ入る。古びた郵便局や町役場の並ぶメインストリートを越え、更に細い農道に入ると、棚田の間に無愛想なコンクリート二階建ての町内会館があった。灰色の壁には『山内家葬式場』の案内看板が掛かり、観音開きのガラス戸は外へ向かって開け放たれている。
嘉文はだだっ広い駐車場の端に車を止め、後部座席のハンガーにかけてあった喪服のジャケットを羽織って外に出た。サングラスを外すと目が痛くなるくらい眩しい。
町内会館の入り口前には、葬儀の受付用に年季の入ったテントが立てられ、喪服姿の男達が数人タバコを吹かしていた。
近づく嘉文に、真っ先に気付いた初老の男が、
「嘉文君! わざわざ来てくれたんか」
と慌てたたようにテントの外に飛び出してきて、胡麻塩頭を下げた。男の胸には喪章が着いている。喪主の山内だ。
「この度は誠にご愁傷様でございました……」
嘉文は分厚い香典袋を鞄から取り出して深々と頭を下げる。山内は
「こりゃ過分なお悔やみを、どうも申し訳ない。立派なお花も頂いたし、和田先生にはどうお礼を言ったら良いか……」
と、何度も頭を下げた。
和田というのは嘉文の雇い主だ。もう三十年来政治家として活動し続けている与党の代議士で、嘉文はその私設秘書として働いている。
「善三さんにはひとかたならぬご恩がありますから。お亡くなりになる前に会いに行けなかったのが心残りだと、先生も嘆いていらっしゃいました。直接お別れに足を運びたいとも言っていたのですが、国会前ですので……」
嘉文が整った顔に沈痛な色を浮かべて軽く頭を下げると、山内は大げさに手を振り、
「いやいや! お忙しい中、親父の葬儀程度で先生にご足労願うわけにはいかんよ! 嘉文君が代理で来てくれただけでも十分! どうせ親父はボケて何も分からんようになってたからね、あっさり逝ってくれてこっちは感謝したいくらいなんだよ」
とペコペコ頭を下げる。そうして喪服の袖で額に浮いた汗を拭い、
「まだ坊さんが来るまで時間もあるし、中で涼んでいってくださいよ」
と嘉文を会館の中へと誘った。
会館は小学校の教室程度の広さで、正面には臨時の祭壇が作られ、その前にパイプ椅子がびっしりと並べられている。
隅の一席に座ると、冷えた茶が運ばれてきた。一口飲んだ嘉文は、祭壇の一番目立つ所に「衆議院議員 和田盛雄」の名入りの花が飾られていることを確認し、胸中のチェックリストに一つ○を書き込む。そして、その隣に和田雄一と書かれた花がある事に気がついて、僅かに眉を寄せた。
和田雄一は和田盛雄の唯一の息子だ。しかし、父子の間柄は良好とは言いがたかった。
盛雄は一人息子に後を継がせるつもりでいたのに、雄一の方は父に逆らって留学先で行方をくらませたのだ。そのまま失踪するのかと思われたが、海外で問題を起こした雄一は父親へと泣きつき、盛雄は日本へ帰ってくる事を条件に放蕩息子を助けた。
日本に戻ってきた雄一は、父親と揉めたことなど一度もないような顔をして和田の跡取りに返り咲き、一人前の政治家気取りであちこちへ顔を出すようになっている。
盛雄の娘と結婚して和田家の婿養子になっている嘉文にとって、雄一は愉快な相手ではない。
嘉文の視線に気付いたのか、山内が
「雄一君はどうなの。今度の選挙、盛雄先生はどうするつもりなのか、嘉文君は聞いてる?」
と微かに非難の色を滲ませた声音で聞いてきた。
改選を来年に控えているが、盛雄の健康は思わしくない。長年盛雄の後援会長を務めてくれている山内は、後を雄一に譲るつもりなら、早めに知らせて欲しいのだろう。和田の選挙地盤には、二人の立候補者を支える力はないからだ。
「情報が入り次第、山内さんには一番にお知らせしますので」
嘉文は当たり障りの無い言葉で質問を退け、茶を飲み干した。山内は苦い物でも噛んでしまったような顔をして、
「嘉文君が盛雄先生の後を継ぐっていう話は……」
と、小声で囁いた。嘉文は思い切り顔を顰めたいのをこらえて微笑する。
「雄一さんがおられますから」
山内はまだ何か言いたげに口元をうごめかせていたが、嘉文は空いた茶碗を持って立ち上がり、逃げるように奥へと足を向けた。
雄一が海外で行方をくらませた時、嘉文は踊り出したいほどに喜んだ。やっと自分の番が回って来た、やっと盛雄の目が自分に向くのだと思うと、嬉しさで身震いしそうだった。
実際、実の息子という一番の手駒を失った盛雄は、嘉文をその身代わりにした。嘉文は盛雄の期待に全力で応えようとした。だから好きでもない盛雄の娘と結婚し、ひたすら地味に地元とのパイプ役を務めてきたのだ。
しかし、実の息子が手元に戻った途端、盛雄はそちらを優先し始めた。
嘉文には盛雄を怨むことはできないが、血縁というのはそんなにも重い物かと唾を吐きたくなる気持ちはあった。代替わりに向けて動き始めていた後援会長の山内としても、納得できない物はあるだろう。しかし、結局全ては盛雄の思うとおりに動いていく。それが長年掛けて盛雄が手に入れた権力というものなのだった。
嘉文が奥の炊事場へ茶碗を持って行くと、それまで声高に喋っていた小母さん連中がピタリと黙り、一斉に振り向いた。
「嘉文君! そんなん置いててくれれば良いのに」
慌てて嘉文の手から茶碗を取り上げる女は、たしか婦人会の副会長だ。嘉文は愛想の良い笑みを浮かべ、
「いいえ、早く着きすぎてしまって手持ち無沙汰ですので……なにかお手伝いすることはありませんか?」
と首を傾げる。自分が比較的見た目の整った若い男である事を分かった上での、あざとい仕草だ。手伝えることなどないと知ってはいるが、愛想を振りまくのが仕事なのだから仕方ない。
副会長は急に若やいだ笑顔を見せ、
「こっちは人足りてますから、嘉文さんはゆっくりしてて下さいな。葬儀の後の精進落としも、いらっしゃるんでしょう? ご馳走ありますし、お酒も沢山出ますよ」
と媚びを含んだ声で言う。
「ありがとうございます。是非お邪魔させて頂きます」
にこやかに頭を下げて嘉文が背を向けると、途端に
「あれ和田先生とこの婿の……」
「ああ、聡美ちゃんに逃げられた……」
と、女達の声高な噂話が再開された。土地は広いが人間関係の狭い田舎のことだ。和田家の内情など、誰でも知っている。聡美というのは和田の娘だ。嫁に逃げられた嘉文は格好の話題の種になるようだ。
「離婚したんだっけ? 聡美ちゃんは外国行ったままよね? 男一人で、気の毒よねえ……」
「離婚したとは聞いてないけど。まあ窮屈だったんじゃないの。聡美ちゃん、派手な子だったから……」
「和田先生は偉い方だけど、お子さん達はちょっとねえ……」
「だから嘉文さんを婿になさったんじゃないの?」
「でも雄一君帰ってきたでしょ……盛雄先生は調子悪そうだし、次の選挙はどっちが立候補するんかねえ。嘉文さんのほうが賢そうに見えるけど……」
「どっちにせよ、和田の人に入れれば良いのよ。誰が当選しても大して変わらないんだから」
薄暗い廊下に響く声は嘉文の背をどこまでも追いかけてくる。肺から絞り出すように長く息を吐き出した嘉文は、炊事場の奥の勝手口から外へ出た。
外は狭い空き地だ。剥き出しの土が白く乾いて真昼の日射しを照り返している。錆びたフェンスに絡んだ朝顔は熱気に負けて花も葉も萎れ、あまりの暑さに蝉も鳴くのを止めている。
眩しさに耐えきれず、嘉文は内ポケットからサングラスを出して耳にかけ、タバコを一本咥えた。遙か昔に盛雄から貰った年代物のジッポで火を付ける。表面に彫られた火蜥蜴の模様を親指でなぞりながら、深く煙を吸い込んだ。表から流れてくる線香の微かな香りと、タバコの濃密な匂いが混じり合って嘉文を包む。
───聡美はタバコの香りを嫌っていたな……
煙を細く吐き出しながら、長いこと会っていない妻の顔を思い出そうとしたが、記憶の中の面影はボンヤリとして定まらない。
聡美はタバコの香りどころか、嘉文自体を嫌っていたのかも知れない。聡美が最後に笑ったのはいつのことだったか。覚えていない。最初から覚えておく気もなかった。聡美のことなど最初からどうでも良かった。和田の一族に名を連ねるため、聡美が必要だっただけだ。
聡美と雄一の父・盛雄が現当主を務める和田家は、江戸まで遡る地主の家だ。七期連続で衆議院議員に当選し続けている盛雄は、地元の圧倒的支持を受けている熟練の政治家だった。
その和田の遠縁の家に、田辺嘉文は生まれた。
嘉文の父は素行の悪い放蕩者だった。和田のコネで入れてもらった土木会社で現場作業員として働いていたが、嘉文が小学校三年の時に交通事故であの世へ行った。勤務中に酒を飲んで、会社の軽トラごと谷底へ落ちたのだ。
残された嘉文とその母は、盛雄の指示で和田家の片隅に引き取られることになった。
単純に遠縁に対する本家からの気遣いだったのかもしれないし、当時まことしやかに囁かれた噂のとおり、嘉文の母が盛雄の「お手つき」であったからかもしれない。
幼い嘉文には大人の事情は分からなかったが、毎晩酔って帰ってきては暴力を振るう実父よりは、三つ揃いの瀟洒なスーツに身を包み、常に理知的な口調で話す盛雄の方が余程親しみやすかった。
幼い日の嘉文にとって、盛雄は父のようでもあり、師のようでもあった。身近で唯一心から頼れる大人の男だったのだ。
少しでも盛雄に恩を返せるようにと、嘉文は必死に学業に取り組んだ。文武両道の優等生として県内一の高校に入学した頃、母親が死んだ。梅雨時に増水した川に流され、溺死したのだ。
地元の者ならその時期に川に近づく事など、まずありえない。警察の調べの結果、単なる事故として処理されたが、「愛人に嫉妬した盛雄の正妻が、人を使って殺させた」、「盛雄に酷くされて自殺した」、「ヨソの男と逃げるつもりで事故に遭った」などと言う悪い噂は、嘉文の心に深く傷をつけた。
その傷から嘉文を救ってくれたのも、また盛雄だった。
盛雄は噂を一切取り合わず、残された嘉文にそれまで以上に目をかけてくれたのだ。盛雄は嘉文の学費や生活費を全て負担してくれ、時折、展覧会や演奏会等の文化的な催しや、旅行にも連れ出してくれた。二人きりで遠出する時は、嘉文は「和田議員のご子息」として扱われたし、盛雄もそれを否定しなかった。そうしていつの間にか、嘉文は心の全てを盛雄へと向けるようになっていた。
今、冷静になって振り返ると、盛雄は嘉文を持ち上げることで、実の息子の素行不良を咎めようとしていたのかもしれないと思うが、当時の嘉文にはそんな事はわからなかった。
高校を卒業した嘉文は、盛雄がかつて通った国立大学の政治経済学部へと進学した。敬愛する盛雄と同じ道を辿れることは、嘉文にとって大きな喜びだったし、盛雄もそれを喜んでくれたものだった。
その頃、和田盛雄はすでに還暦を超え、後を継がせる人間を表に立たせる時期に差し掛かっていたが、実の息子の雄一は何度呼び戻そうとも留学先から帰ってこない。
大学卒業後に使節秘書として働き始めた嘉文は、周囲からは当然の如く盛雄の後継と目された。盛雄自身もそう考えてくれていたのだと嘉文は信じている。でなければ、聡美との結婚を勧められたりはしないだろう。
嘉文と聡美の結婚生活は三年経たずに破綻した。盛雄のことしか考えていない夫に愛想を尽かした聡美が、外に男を作ってオーストラリアに逃げたのだ。
『貴方がいくら良い子でいたって、父さんは貴方を愛したりはしないわよ』
聡美の言い捨てた冷たい言葉は、未だに嘉文の胸に刺さったままだ。
───知っているとも
嘉文は唇を歪めて笑う。盛雄が欲しいのは思い通りに動いてくれる駒だけだ。嘉文は、盛雄に愛して欲しいとは思っていない。ただ、あの人の役に立てればそれで良い。
ただ、役に立てているかどうか、近頃は少しわからなくなってしまっていて、それが苦しいのだ。
タバコ一本を吸い終えると同時に、嘉文の苦い回想は打ち破られた。
重たいエンジン音を響かせて表から車が入ってくる。シルバーブラックのクーペ。駐車場ではなく、会館のすぐ裏手のここへ車を停めるのは、ここへ集まる人々の中で自分が一番偉いのだという示威行為だ。虚勢でしかないが、虚勢も張り続ければ威厳に変わる時が来る。それを待つだけの胆力と体力は、嘉文にはないものだ。
嘉文はすかさずサングラスを外してポケットにしまい、運転席側に回って頭を下げた。
「雄一先生、お疲れ様です」
本革仕様のシートから降りてくるのは喪服姿の和田雄一だった。父の盛雄と同じように中肉中背で筋肉質な身体の持ち主だが、容貌は凡庸で、垂れた目尻と締まりの無い口元がだらしない性格を物語っている。雄一はパーマを当てた長めの前髪をしきりに触りながら、
「おい」
と嘉文に片手を伸ばした。嘉文は片手にぶら下げたままだった鞄から、袱紗に包んだ香典と数珠を揃えて雄一に差し出す。
「いくら入ってんの?」
「三十万です」
「ふうん……」
雄一は興味なさげにそれらを受け取り、表へと足を向ける。
「お前、しばらくこっちにいるんだろ。今晩相手してやる」
背中越しにそう言われ、三歩後ろを着いていく嘉文の胃は、鉛を飲んだように重くなった。
和田雄一は、嘉文と同じ高校を卒業してすぐ、アメリカへ留学した。留学と言えば聞こえは良いが、実際はほとんど出奔だった。雄一は、盆暮れにも日本へ帰らず放蕩三昧に暮らしていたようだ。時折、年配の秘書の一人が、雄一の尻拭いに渡米していたことを嘉文は記憶している。
そんな雄一が日本に戻ってきたのは、ほんの一年前の事だ。聡美が日本を出るのと入れ違いだった。
兄妹の間でどんなやり取りがあったかどうか、嘉文には分からない。ただ、自分を一人前の女として扱わなかった嘉文への意趣返しとして、聡美が兄を呼び戻した可能性は大いにあった。
雄一が本腰を入れて二代目を継ぐ気になったのなら、嘉文の未来は暗い。書類の上では嘉文と聡美の婚姻関係は未だ続いているが、和田家の婿としては失格したも同然だ。
盛雄が最近嘉文を冷遇しているのも関係者には明らかなことで、和田陣営の中で嘉文の影は日に日に薄くなってきていた。
町内会館へ入った雄一は、弔問客達と愛想良く挨拶を交わし、喪主の山内へとお悔やみの言葉をかけている。手を取って涙を流さんばかりの雄一の様子に、山内はすっかり心を開いているようだった。
自分の心が伴わなくても泣いて見せ、相手が欲しい言葉を汲み取って投げかける。田舎出身の二代目代議士に必要なのは、雄一のような無責任な厚顔さであり、それは嘉文には持ち得ないものだった。
『貴方がいくら良い子でいたって……』
聡美の言葉がリフレインする。うるさい、聞きたくない。
嘉文は唇を噛んで俯く。祭壇の前には金襴の袈裟を被った坊主が座り、長々と経を読み始めていた。
焼香が済んで出棺が終わると、雄一はさっさとその場を辞し、銀色に輝くクーペを飛ばしてどこかへ消えた。
嘉文は葬式組の男達が祭壇を解体し、並んだ椅子を物置へ入れるのを手伝う。労働で恩を売るのも仕事の内だった。
入り口の扉が大きく開け放たれた町内会館は、空調が付いているにもかかわらず酷い暑さだ。
「若い時は不良だったけど、雄一さんも立派になったもんだねえ」
「あれなら盛雄先生の後を立派に継げるだろうよ」
のんびりと椅子を運んでいる男達の無責任な言葉が、嘉文の神経を逆なでする。
「嘉文君も、そろそろ雄一さんのとこに移るんだろ?」
無遠慮な質問を投げかけられ、嘉文は内心切れそうになりながら、やんわりとした苦笑を返した。
「盛雄先生のご指示があれば、そうなるかもしれません」
そう答えつつも、自分はその指示には従わないだろうと思う。雄一の下に着くくらいなら、死んだ方がマシだ。
雄一の話題に飽きた男達は、田んぼの稲の生育具合について話し始め、それにも飽きて話題は秋祭りの段取りへと変わっていく。声高に話し続ける男達の間で、嘉文は暴れ出したいような鬱屈を胸の底へを押し込めて、黙々と身体を動かし続けた。
片付けが終わって、薄く漂う香の匂い以外いつも通りの姿を取り戻した町内会館では、精進落としの宴会が始まる。
婦人会の小母さんが作った煮物とバラ寿司を少し食べた嘉文は、一緒に飲んで行けという山内の誘いを断って、駐車場の端に停めた自分のセダンに乗り込んだ。
和田の屋敷は、ここから農道を上っていった先にある。
昼間は快晴だった空は油照りに変わり、向かう山の端には重苦しい暗い雲がかかっていた。向こうは雨かも知れないと思うと、胸に飲んだ鉛がまた少し重さを増したような気がして、嘉文は深いため息を吐いた。
道は山を巻いて上っていく。進むほどに日射しが強くなり、白のプリウスを軽快に走らせる[[rb:田辺嘉文 > たなべよしふみ]]は、運転用のサングラスの奥で目を細めた。
ナビの左上に浮かぶ時計は午前十時、その隣の外気温は+32℃だ。目的地に着く頃には、きっと今より暑くなっているだろう。嘉文はうんざりしながら首元のネクタイを緩め、アクセルを踏み込む。車は静かに加速し、目的地までの距離を着々と減らした。
対向車とすれ違うことも無いまま、嘉文の運転する車は県道から逸れ、短い橋を渡って集落の中へ入る。古びた郵便局や町役場の並ぶメインストリートを越え、更に細い農道に入ると、棚田の間に無愛想なコンクリート二階建ての町内会館があった。灰色の壁には『山内家葬式場』の案内看板が掛かり、観音開きのガラス戸は外へ向かって開け放たれている。
嘉文はだだっ広い駐車場の端に車を止め、後部座席のハンガーにかけてあった喪服のジャケットを羽織って外に出た。サングラスを外すと目が痛くなるくらい眩しい。
町内会館の入り口前には、葬儀の受付用に年季の入ったテントが立てられ、喪服姿の男達が数人タバコを吹かしていた。
近づく嘉文に、真っ先に気付いた初老の男が、
「嘉文君! わざわざ来てくれたんか」
と慌てたたようにテントの外に飛び出してきて、胡麻塩頭を下げた。男の胸には喪章が着いている。喪主の山内だ。
「この度は誠にご愁傷様でございました……」
嘉文は分厚い香典袋を鞄から取り出して深々と頭を下げる。山内は
「こりゃ過分なお悔やみを、どうも申し訳ない。立派なお花も頂いたし、和田先生にはどうお礼を言ったら良いか……」
と、何度も頭を下げた。
和田というのは嘉文の雇い主だ。もう三十年来政治家として活動し続けている与党の代議士で、嘉文はその私設秘書として働いている。
「善三さんにはひとかたならぬご恩がありますから。お亡くなりになる前に会いに行けなかったのが心残りだと、先生も嘆いていらっしゃいました。直接お別れに足を運びたいとも言っていたのですが、国会前ですので……」
嘉文が整った顔に沈痛な色を浮かべて軽く頭を下げると、山内は大げさに手を振り、
「いやいや! お忙しい中、親父の葬儀程度で先生にご足労願うわけにはいかんよ! 嘉文君が代理で来てくれただけでも十分! どうせ親父はボケて何も分からんようになってたからね、あっさり逝ってくれてこっちは感謝したいくらいなんだよ」
とペコペコ頭を下げる。そうして喪服の袖で額に浮いた汗を拭い、
「まだ坊さんが来るまで時間もあるし、中で涼んでいってくださいよ」
と嘉文を会館の中へと誘った。
会館は小学校の教室程度の広さで、正面には臨時の祭壇が作られ、その前にパイプ椅子がびっしりと並べられている。
隅の一席に座ると、冷えた茶が運ばれてきた。一口飲んだ嘉文は、祭壇の一番目立つ所に「衆議院議員 和田盛雄」の名入りの花が飾られていることを確認し、胸中のチェックリストに一つ○を書き込む。そして、その隣に和田雄一と書かれた花がある事に気がついて、僅かに眉を寄せた。
和田雄一は和田盛雄の唯一の息子だ。しかし、父子の間柄は良好とは言いがたかった。
盛雄は一人息子に後を継がせるつもりでいたのに、雄一の方は父に逆らって留学先で行方をくらませたのだ。そのまま失踪するのかと思われたが、海外で問題を起こした雄一は父親へと泣きつき、盛雄は日本へ帰ってくる事を条件に放蕩息子を助けた。
日本に戻ってきた雄一は、父親と揉めたことなど一度もないような顔をして和田の跡取りに返り咲き、一人前の政治家気取りであちこちへ顔を出すようになっている。
盛雄の娘と結婚して和田家の婿養子になっている嘉文にとって、雄一は愉快な相手ではない。
嘉文の視線に気付いたのか、山内が
「雄一君はどうなの。今度の選挙、盛雄先生はどうするつもりなのか、嘉文君は聞いてる?」
と微かに非難の色を滲ませた声音で聞いてきた。
改選を来年に控えているが、盛雄の健康は思わしくない。長年盛雄の後援会長を務めてくれている山内は、後を雄一に譲るつもりなら、早めに知らせて欲しいのだろう。和田の選挙地盤には、二人の立候補者を支える力はないからだ。
「情報が入り次第、山内さんには一番にお知らせしますので」
嘉文は当たり障りの無い言葉で質問を退け、茶を飲み干した。山内は苦い物でも噛んでしまったような顔をして、
「嘉文君が盛雄先生の後を継ぐっていう話は……」
と、小声で囁いた。嘉文は思い切り顔を顰めたいのをこらえて微笑する。
「雄一さんがおられますから」
山内はまだ何か言いたげに口元をうごめかせていたが、嘉文は空いた茶碗を持って立ち上がり、逃げるように奥へと足を向けた。
雄一が海外で行方をくらませた時、嘉文は踊り出したいほどに喜んだ。やっと自分の番が回って来た、やっと盛雄の目が自分に向くのだと思うと、嬉しさで身震いしそうだった。
実際、実の息子という一番の手駒を失った盛雄は、嘉文をその身代わりにした。嘉文は盛雄の期待に全力で応えようとした。だから好きでもない盛雄の娘と結婚し、ひたすら地味に地元とのパイプ役を務めてきたのだ。
しかし、実の息子が手元に戻った途端、盛雄はそちらを優先し始めた。
嘉文には盛雄を怨むことはできないが、血縁というのはそんなにも重い物かと唾を吐きたくなる気持ちはあった。代替わりに向けて動き始めていた後援会長の山内としても、納得できない物はあるだろう。しかし、結局全ては盛雄の思うとおりに動いていく。それが長年掛けて盛雄が手に入れた権力というものなのだった。
嘉文が奥の炊事場へ茶碗を持って行くと、それまで声高に喋っていた小母さん連中がピタリと黙り、一斉に振り向いた。
「嘉文君! そんなん置いててくれれば良いのに」
慌てて嘉文の手から茶碗を取り上げる女は、たしか婦人会の副会長だ。嘉文は愛想の良い笑みを浮かべ、
「いいえ、早く着きすぎてしまって手持ち無沙汰ですので……なにかお手伝いすることはありませんか?」
と首を傾げる。自分が比較的見た目の整った若い男である事を分かった上での、あざとい仕草だ。手伝えることなどないと知ってはいるが、愛想を振りまくのが仕事なのだから仕方ない。
副会長は急に若やいだ笑顔を見せ、
「こっちは人足りてますから、嘉文さんはゆっくりしてて下さいな。葬儀の後の精進落としも、いらっしゃるんでしょう? ご馳走ありますし、お酒も沢山出ますよ」
と媚びを含んだ声で言う。
「ありがとうございます。是非お邪魔させて頂きます」
にこやかに頭を下げて嘉文が背を向けると、途端に
「あれ和田先生とこの婿の……」
「ああ、聡美ちゃんに逃げられた……」
と、女達の声高な噂話が再開された。土地は広いが人間関係の狭い田舎のことだ。和田家の内情など、誰でも知っている。聡美というのは和田の娘だ。嫁に逃げられた嘉文は格好の話題の種になるようだ。
「離婚したんだっけ? 聡美ちゃんは外国行ったままよね? 男一人で、気の毒よねえ……」
「離婚したとは聞いてないけど。まあ窮屈だったんじゃないの。聡美ちゃん、派手な子だったから……」
「和田先生は偉い方だけど、お子さん達はちょっとねえ……」
「だから嘉文さんを婿になさったんじゃないの?」
「でも雄一君帰ってきたでしょ……盛雄先生は調子悪そうだし、次の選挙はどっちが立候補するんかねえ。嘉文さんのほうが賢そうに見えるけど……」
「どっちにせよ、和田の人に入れれば良いのよ。誰が当選しても大して変わらないんだから」
薄暗い廊下に響く声は嘉文の背をどこまでも追いかけてくる。肺から絞り出すように長く息を吐き出した嘉文は、炊事場の奥の勝手口から外へ出た。
外は狭い空き地だ。剥き出しの土が白く乾いて真昼の日射しを照り返している。錆びたフェンスに絡んだ朝顔は熱気に負けて花も葉も萎れ、あまりの暑さに蝉も鳴くのを止めている。
眩しさに耐えきれず、嘉文は内ポケットからサングラスを出して耳にかけ、タバコを一本咥えた。遙か昔に盛雄から貰った年代物のジッポで火を付ける。表面に彫られた火蜥蜴の模様を親指でなぞりながら、深く煙を吸い込んだ。表から流れてくる線香の微かな香りと、タバコの濃密な匂いが混じり合って嘉文を包む。
───聡美はタバコの香りを嫌っていたな……
煙を細く吐き出しながら、長いこと会っていない妻の顔を思い出そうとしたが、記憶の中の面影はボンヤリとして定まらない。
聡美はタバコの香りどころか、嘉文自体を嫌っていたのかも知れない。聡美が最後に笑ったのはいつのことだったか。覚えていない。最初から覚えておく気もなかった。聡美のことなど最初からどうでも良かった。和田の一族に名を連ねるため、聡美が必要だっただけだ。
聡美と雄一の父・盛雄が現当主を務める和田家は、江戸まで遡る地主の家だ。七期連続で衆議院議員に当選し続けている盛雄は、地元の圧倒的支持を受けている熟練の政治家だった。
その和田の遠縁の家に、田辺嘉文は生まれた。
嘉文の父は素行の悪い放蕩者だった。和田のコネで入れてもらった土木会社で現場作業員として働いていたが、嘉文が小学校三年の時に交通事故であの世へ行った。勤務中に酒を飲んで、会社の軽トラごと谷底へ落ちたのだ。
残された嘉文とその母は、盛雄の指示で和田家の片隅に引き取られることになった。
単純に遠縁に対する本家からの気遣いだったのかもしれないし、当時まことしやかに囁かれた噂のとおり、嘉文の母が盛雄の「お手つき」であったからかもしれない。
幼い嘉文には大人の事情は分からなかったが、毎晩酔って帰ってきては暴力を振るう実父よりは、三つ揃いの瀟洒なスーツに身を包み、常に理知的な口調で話す盛雄の方が余程親しみやすかった。
幼い日の嘉文にとって、盛雄は父のようでもあり、師のようでもあった。身近で唯一心から頼れる大人の男だったのだ。
少しでも盛雄に恩を返せるようにと、嘉文は必死に学業に取り組んだ。文武両道の優等生として県内一の高校に入学した頃、母親が死んだ。梅雨時に増水した川に流され、溺死したのだ。
地元の者ならその時期に川に近づく事など、まずありえない。警察の調べの結果、単なる事故として処理されたが、「愛人に嫉妬した盛雄の正妻が、人を使って殺させた」、「盛雄に酷くされて自殺した」、「ヨソの男と逃げるつもりで事故に遭った」などと言う悪い噂は、嘉文の心に深く傷をつけた。
その傷から嘉文を救ってくれたのも、また盛雄だった。
盛雄は噂を一切取り合わず、残された嘉文にそれまで以上に目をかけてくれたのだ。盛雄は嘉文の学費や生活費を全て負担してくれ、時折、展覧会や演奏会等の文化的な催しや、旅行にも連れ出してくれた。二人きりで遠出する時は、嘉文は「和田議員のご子息」として扱われたし、盛雄もそれを否定しなかった。そうしていつの間にか、嘉文は心の全てを盛雄へと向けるようになっていた。
今、冷静になって振り返ると、盛雄は嘉文を持ち上げることで、実の息子の素行不良を咎めようとしていたのかもしれないと思うが、当時の嘉文にはそんな事はわからなかった。
高校を卒業した嘉文は、盛雄がかつて通った国立大学の政治経済学部へと進学した。敬愛する盛雄と同じ道を辿れることは、嘉文にとって大きな喜びだったし、盛雄もそれを喜んでくれたものだった。
その頃、和田盛雄はすでに還暦を超え、後を継がせる人間を表に立たせる時期に差し掛かっていたが、実の息子の雄一は何度呼び戻そうとも留学先から帰ってこない。
大学卒業後に使節秘書として働き始めた嘉文は、周囲からは当然の如く盛雄の後継と目された。盛雄自身もそう考えてくれていたのだと嘉文は信じている。でなければ、聡美との結婚を勧められたりはしないだろう。
嘉文と聡美の結婚生活は三年経たずに破綻した。盛雄のことしか考えていない夫に愛想を尽かした聡美が、外に男を作ってオーストラリアに逃げたのだ。
『貴方がいくら良い子でいたって、父さんは貴方を愛したりはしないわよ』
聡美の言い捨てた冷たい言葉は、未だに嘉文の胸に刺さったままだ。
───知っているとも
嘉文は唇を歪めて笑う。盛雄が欲しいのは思い通りに動いてくれる駒だけだ。嘉文は、盛雄に愛して欲しいとは思っていない。ただ、あの人の役に立てればそれで良い。
ただ、役に立てているかどうか、近頃は少しわからなくなってしまっていて、それが苦しいのだ。
タバコ一本を吸い終えると同時に、嘉文の苦い回想は打ち破られた。
重たいエンジン音を響かせて表から車が入ってくる。シルバーブラックのクーペ。駐車場ではなく、会館のすぐ裏手のここへ車を停めるのは、ここへ集まる人々の中で自分が一番偉いのだという示威行為だ。虚勢でしかないが、虚勢も張り続ければ威厳に変わる時が来る。それを待つだけの胆力と体力は、嘉文にはないものだ。
嘉文はすかさずサングラスを外してポケットにしまい、運転席側に回って頭を下げた。
「雄一先生、お疲れ様です」
本革仕様のシートから降りてくるのは喪服姿の和田雄一だった。父の盛雄と同じように中肉中背で筋肉質な身体の持ち主だが、容貌は凡庸で、垂れた目尻と締まりの無い口元がだらしない性格を物語っている。雄一はパーマを当てた長めの前髪をしきりに触りながら、
「おい」
と嘉文に片手を伸ばした。嘉文は片手にぶら下げたままだった鞄から、袱紗に包んだ香典と数珠を揃えて雄一に差し出す。
「いくら入ってんの?」
「三十万です」
「ふうん……」
雄一は興味なさげにそれらを受け取り、表へと足を向ける。
「お前、しばらくこっちにいるんだろ。今晩相手してやる」
背中越しにそう言われ、三歩後ろを着いていく嘉文の胃は、鉛を飲んだように重くなった。
和田雄一は、嘉文と同じ高校を卒業してすぐ、アメリカへ留学した。留学と言えば聞こえは良いが、実際はほとんど出奔だった。雄一は、盆暮れにも日本へ帰らず放蕩三昧に暮らしていたようだ。時折、年配の秘書の一人が、雄一の尻拭いに渡米していたことを嘉文は記憶している。
そんな雄一が日本に戻ってきたのは、ほんの一年前の事だ。聡美が日本を出るのと入れ違いだった。
兄妹の間でどんなやり取りがあったかどうか、嘉文には分からない。ただ、自分を一人前の女として扱わなかった嘉文への意趣返しとして、聡美が兄を呼び戻した可能性は大いにあった。
雄一が本腰を入れて二代目を継ぐ気になったのなら、嘉文の未来は暗い。書類の上では嘉文と聡美の婚姻関係は未だ続いているが、和田家の婿としては失格したも同然だ。
盛雄が最近嘉文を冷遇しているのも関係者には明らかなことで、和田陣営の中で嘉文の影は日に日に薄くなってきていた。
町内会館へ入った雄一は、弔問客達と愛想良く挨拶を交わし、喪主の山内へとお悔やみの言葉をかけている。手を取って涙を流さんばかりの雄一の様子に、山内はすっかり心を開いているようだった。
自分の心が伴わなくても泣いて見せ、相手が欲しい言葉を汲み取って投げかける。田舎出身の二代目代議士に必要なのは、雄一のような無責任な厚顔さであり、それは嘉文には持ち得ないものだった。
『貴方がいくら良い子でいたって……』
聡美の言葉がリフレインする。うるさい、聞きたくない。
嘉文は唇を噛んで俯く。祭壇の前には金襴の袈裟を被った坊主が座り、長々と経を読み始めていた。
焼香が済んで出棺が終わると、雄一はさっさとその場を辞し、銀色に輝くクーペを飛ばしてどこかへ消えた。
嘉文は葬式組の男達が祭壇を解体し、並んだ椅子を物置へ入れるのを手伝う。労働で恩を売るのも仕事の内だった。
入り口の扉が大きく開け放たれた町内会館は、空調が付いているにもかかわらず酷い暑さだ。
「若い時は不良だったけど、雄一さんも立派になったもんだねえ」
「あれなら盛雄先生の後を立派に継げるだろうよ」
のんびりと椅子を運んでいる男達の無責任な言葉が、嘉文の神経を逆なでする。
「嘉文君も、そろそろ雄一さんのとこに移るんだろ?」
無遠慮な質問を投げかけられ、嘉文は内心切れそうになりながら、やんわりとした苦笑を返した。
「盛雄先生のご指示があれば、そうなるかもしれません」
そう答えつつも、自分はその指示には従わないだろうと思う。雄一の下に着くくらいなら、死んだ方がマシだ。
雄一の話題に飽きた男達は、田んぼの稲の生育具合について話し始め、それにも飽きて話題は秋祭りの段取りへと変わっていく。声高に話し続ける男達の間で、嘉文は暴れ出したいような鬱屈を胸の底へを押し込めて、黙々と身体を動かし続けた。
片付けが終わって、薄く漂う香の匂い以外いつも通りの姿を取り戻した町内会館では、精進落としの宴会が始まる。
婦人会の小母さんが作った煮物とバラ寿司を少し食べた嘉文は、一緒に飲んで行けという山内の誘いを断って、駐車場の端に停めた自分のセダンに乗り込んだ。
和田の屋敷は、ここから農道を上っていった先にある。
昼間は快晴だった空は油照りに変わり、向かう山の端には重苦しい暗い雲がかかっていた。向こうは雨かも知れないと思うと、胸に飲んだ鉛がまた少し重さを増したような気がして、嘉文は深いため息を吐いた。
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