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第十六話〈惑いの響き〉
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十分待っても相楽福之助は来なかった。
仕方なく諒は詰め所を出て持ち場である城内の西地区へ入り、紅緒と合流するため二の門へ向かう。
ふわりと建物の屋根に上がり諒は駆け出した。
地を行くより遮るものがないので移動が楽なことと、高い場所からのほうが広範囲を見渡せるためだ。
眼下には所々に柱のある灯籠や吊り灯篭、足元を照らすために柱のない置灯篭があり、淡い光を放っていた。
見えてきた二の門に紅緒の姿を確認し、諒は地面に降りた。
「相楽は来なかったか」
堅い表情の紅緒に諒は頷きながら尋ねた。
「六班の屋敷にもいなかったんですか?」
「ああ。昼間の宴会から帰った後、相楽の姿を誰も見ていないそうだ。一度屋敷には帰っているが、それからいつ出かけたのかは誰も知らなくてな。夜警当番だったから早飯に師団専用の食堂へ行ったのだろうと思われてもいたようだが。とにかく行方が分かっていないのは問題だ。夜警の代理はいいから六班で相楽を捜索するように話をしてきた。あとは六班に任せて夜警に集中しよう」
はい、と返事をしかけた諒がハッと顔を上げ空を見上げた。
「……紅緒隊長」
「どうした?」
「聞こえませんか?───あの音」
鈴の音が聞こえていた。
音は遠く小さいが、それは幾つもの鈴の音が重なり合うような響きだった。
「善き音ではないな」
紅緒は言った。
「なにか術の気配がする。しかも二方向からか」
諒が頷いたときだった。
空気を裂くような警笛の音が鳴り響いた。
「あれは───」
紅緒の視線が天へ向いた。
「すみれ達の持ち場からだな」
そして鈴の音が聞こえてくる方向の一つでもある。
警笛を鳴らすなど、よほどの非常事態でなければありえない。
妖霊? 霊鬼?それとも……。
「でも隊長、おかしくないですか。妖気がしない」
変形体化した妖霊なら気配があるはず。
護闘士にはそれを感じ取れる闘魄がある。
城内は広いが、すみれ達の持ち場からであれば距離的にも妖気は感じ取れるはずだった。
紅緒は暫し目を閉じていたが、再び目を開くと視線を諒へと向けて言った。
「二手に分かれよう。私は警笛の方角へ行く」
「じゃあ俺は鈴音を追います」
「深追いはするなよ、諒。あの響きには惑いがある」
「惑い?」
「聴くものを混乱させる……とでも言うか。そんな感じだ。気をつけなさい」
「わかりました」
諒と紅緒はそれぞれの方向へ駆け出した。
♢♢♢
紅緒と別れ、諒は再び屋根に上がって進んだ。
警笛は一度だけ、あれから鳴らされていない。
気になるが今は鈴音に集中しなければならない。
響きは風音に邪魔され、向かうべき方向を間違えそうになる。
度々足を止め音の波動を確認するのだが。
鈴音を追いかけ、この方向で進むとなると。
今夜担当していた夜警の持ち場からは外れる。そしてまだ距離はあるがこの先には第九班隊の屋敷があるのだ。
響きは移動し、自分はそれを追っているのだと感じる。ということは響かせる音を───それを所持している何者かが目的を持ってどこかに向かっているのか?
考えながら、もっと走る速度を上げようとしたときだった。
鈴の響きがピタリと止んだ。
突然のことに驚き、呆然と立ち尽くす諒の耳に今度は人の───それもなにやら言い争うような声が聞こえた。
(どこだ。……近いが)
屋根から降り、少しずつ移動しながら様子を伺う。
この辺りの建物は倉庫ばかりで夜半に人など出歩かない場所だ。
灯篭も少なく、声のする方向は暗い。
人の気配が更に近くなり、諒は建物の陰に隠れ動くのをやめた。
「なんとか言ったらどうです?」
発せられた男の声に覚えはない。
吊り灯篭の下でぼんやりと照らされた衣服は藍染の隊服だが背中に上番隊の証である『上』の白文字が入っていた。
(もう一人は……)
ここからでは男の後ろ姿しか見えない。
男の前にも誰かいるのだ。風に揺れて見え隠れする羽織りや袴の裾。藍色の隊服を着た誰かがいる。
「黙ってたら分からないじゃないですかぁ。相変わらずですね、福之助サン。あなたちっとも変わってない」
男はクスッと笑った。
(───今なんて? ふくのすけ……と聞こえたよな)
「後番隊になってもおんなじだ。……メソメソとみっともない。それでも護闘士ですかぁ? あんたが?後番隊? あり得ねぇんだよッ!」
ガシッという音がした。どうやら男は目の前の者に蹴りを入れたようだ。
蹴られた側は横に飛び出すようによろけて地面に膝をつき、諒はその姿を見ることができた。
眼鏡をかけた小柄な男子。
隊服は後番隊、護闘士のものだ。
「……もう一度聞きますよ。福之助サン、こんなところで何をしてるんです?」
「ぼ、僕は今夜……夜警で……」
「へぇ。偶然ですね、オレも同じです。持ち場はどこです?
「そ、それは……」
「どうして答えられないんですかぁ? ちゃんと詰め所に行きました?」
諒の場所から男の表情は見えない。けれどその口調や声音からは愉し気な様子を感じた。
一方で福之助と呼ばれている護闘士の表情は暗く、怯えているように見える。
「いく、予定が……遅れてしまって。……い、行こうと思ってたんだ。探し物を見つけたらすぐに……た、大切なもの、だからっ、どうしても……」
「さがしもの?───ぅふふ。もしかして、それってこういうやつですかぁ?」
───シャン!
袖口に隠れていた右腕を男が福之助の目の前に出した途端、音が響いた。
手には鈴の束。
たくさんの小さな鈴、そしてそこに通された細紐が幾重にも男の手首に巻き付いている。
諒が追っていた鈴音が再び鳴り響いた。
(あいつ、どうやって鈴音を?)
鈴が鳴っているのに、男は腕を動かしていない。
「───か、返せ!僕の鈴っ」
手を伸ばした福之助を男は簡単に避けた。
「これはあんたのじゃない。あんたの鈴なんて知らねぇな」
「……だって同じ音が。……ぁ、アレがないと!あの音が無くなってしまったら僕はっ……!」
「ふふふ。怖いんだ。……ですよねぇ。この響きは不安な想いとか忘れさせてくれますから。無いと困りますよねぇ。福之助サンの場合は特に。弱いのになんでか後番隊に昇格ですものねぇ。しかも破魔の力の目覚めもないから闘剣も所持してないって。噂、本当ですかぁ?」
男の言葉に福之助の表情が歪んだ。
(───まずい、あいつ!)
諒は福之助の中にかなり強い負の感情を感じた。
そして一瞬、妖霊の気配も。
(鈴音がうるさい)
まるで響きが邪魔をするように、諒の集中力を鈍らせる。
───紅緒隊長の言ってた通り、惑わせるんだ。
鈴束を持つ男の身体が動いて、遠目だがその横顔を見ることができた。
男は笑っていた。
嗤いながらゆっくりと鈴束が巻き付いた右手を高く上げる。
鈴の響きに包まれそうになり、諒は咄嗟に両手で両耳を塞いだ。
音を遮断する陣術を使えなくもないが、こちらに気付かれてしまう可能性がある。
目を閉じて自身の体内に流れる音を聴く。血の巡り、心臓の響き。自身の呼吸。
その音だけに耳を傾ける。周囲の音を一時的に遮断する。数分しか使えない技を諒は試した。
これで妖気を探れたら。
妖霊の気配は福之助からなのか、鈴の男のものなのか。
答えはすぐにわかった。
鈴の男が掲げた右腕に黒い濁りの色が集まっている。
そこに溜まっている妖気を感じた。
諒は物陰から駆け出した。
こちらを向いた鈴の男と視線が重なる。狐のような細目顔だった。
驚きのない、微笑を浮かべたようにも見えるその表情に諒は舌打ちし、高く宙へ舞った。
気付かれていた───けれど諒は攻撃を選ぶ。
闘剣の柄に手を添え、下降しながら狙いを定める。
男が掲げた鈴束は武器にもなるのかもしれない。
ギリギリの距離で剣を抜き振ると決めた瞬間、男の左手に光るものが見えて諒は息を呑む。
見逃していた左手首にも数個、鈴が巻き付いていた。そこから鋭い刃のような影が形を成していく。
もしも男があの左手を振り上げたら。あの位置からでは福之助の腹部を裂いてしまうだろう。
どうする? 攻撃を奴の右手から左……だめだっ───間に合わないッ。
「避けろっ!」
諒は叫んだ。
福之助がなんとか俊敏に逃げてくれたなら───。
鞘から抜いた諒の太刀が男の真上で銀色の輝きを放つ。
振り下ろしたその瞬間、なにかとてつもない力が割り込み、諒はまるで強い突風に弾かれるように体勢を崩した。
地面に転がりそうになるところをなんとか回避し、よろけながらも着地する。
荒い息を繰り返しながら、いったい何が起こったのか気配の残る前方に目を凝らす。
妖霊の気配を纏う男が右手を抑えながら苦しそうに顔を歪めていた。
自分の一撃が効いているようだ。
(あの護闘士は⁉)
そこに福之助の姿は見えない。
見えるのは……。
舛花色の着物に樺茶色の帯という着流し姿。肩にかかる黒髪がふわりと風に揺れて。
全体的に闇色を纏ったようないで立ちの男の姿がそこにあった。よく見れば片脇にはあの護闘士、福之助を抱えている。
「……隊長!」
「───諒。夜警当番、ご苦労さん」
嵯牙 黎紫は視線だけ諒に向け微笑んだ。
仕方なく諒は詰め所を出て持ち場である城内の西地区へ入り、紅緒と合流するため二の門へ向かう。
ふわりと建物の屋根に上がり諒は駆け出した。
地を行くより遮るものがないので移動が楽なことと、高い場所からのほうが広範囲を見渡せるためだ。
眼下には所々に柱のある灯籠や吊り灯篭、足元を照らすために柱のない置灯篭があり、淡い光を放っていた。
見えてきた二の門に紅緒の姿を確認し、諒は地面に降りた。
「相楽は来なかったか」
堅い表情の紅緒に諒は頷きながら尋ねた。
「六班の屋敷にもいなかったんですか?」
「ああ。昼間の宴会から帰った後、相楽の姿を誰も見ていないそうだ。一度屋敷には帰っているが、それからいつ出かけたのかは誰も知らなくてな。夜警当番だったから早飯に師団専用の食堂へ行ったのだろうと思われてもいたようだが。とにかく行方が分かっていないのは問題だ。夜警の代理はいいから六班で相楽を捜索するように話をしてきた。あとは六班に任せて夜警に集中しよう」
はい、と返事をしかけた諒がハッと顔を上げ空を見上げた。
「……紅緒隊長」
「どうした?」
「聞こえませんか?───あの音」
鈴の音が聞こえていた。
音は遠く小さいが、それは幾つもの鈴の音が重なり合うような響きだった。
「善き音ではないな」
紅緒は言った。
「なにか術の気配がする。しかも二方向からか」
諒が頷いたときだった。
空気を裂くような警笛の音が鳴り響いた。
「あれは───」
紅緒の視線が天へ向いた。
「すみれ達の持ち場からだな」
そして鈴の音が聞こえてくる方向の一つでもある。
警笛を鳴らすなど、よほどの非常事態でなければありえない。
妖霊? 霊鬼?それとも……。
「でも隊長、おかしくないですか。妖気がしない」
変形体化した妖霊なら気配があるはず。
護闘士にはそれを感じ取れる闘魄がある。
城内は広いが、すみれ達の持ち場からであれば距離的にも妖気は感じ取れるはずだった。
紅緒は暫し目を閉じていたが、再び目を開くと視線を諒へと向けて言った。
「二手に分かれよう。私は警笛の方角へ行く」
「じゃあ俺は鈴音を追います」
「深追いはするなよ、諒。あの響きには惑いがある」
「惑い?」
「聴くものを混乱させる……とでも言うか。そんな感じだ。気をつけなさい」
「わかりました」
諒と紅緒はそれぞれの方向へ駆け出した。
♢♢♢
紅緒と別れ、諒は再び屋根に上がって進んだ。
警笛は一度だけ、あれから鳴らされていない。
気になるが今は鈴音に集中しなければならない。
響きは風音に邪魔され、向かうべき方向を間違えそうになる。
度々足を止め音の波動を確認するのだが。
鈴音を追いかけ、この方向で進むとなると。
今夜担当していた夜警の持ち場からは外れる。そしてまだ距離はあるがこの先には第九班隊の屋敷があるのだ。
響きは移動し、自分はそれを追っているのだと感じる。ということは響かせる音を───それを所持している何者かが目的を持ってどこかに向かっているのか?
考えながら、もっと走る速度を上げようとしたときだった。
鈴の響きがピタリと止んだ。
突然のことに驚き、呆然と立ち尽くす諒の耳に今度は人の───それもなにやら言い争うような声が聞こえた。
(どこだ。……近いが)
屋根から降り、少しずつ移動しながら様子を伺う。
この辺りの建物は倉庫ばかりで夜半に人など出歩かない場所だ。
灯篭も少なく、声のする方向は暗い。
人の気配が更に近くなり、諒は建物の陰に隠れ動くのをやめた。
「なんとか言ったらどうです?」
発せられた男の声に覚えはない。
吊り灯篭の下でぼんやりと照らされた衣服は藍染の隊服だが背中に上番隊の証である『上』の白文字が入っていた。
(もう一人は……)
ここからでは男の後ろ姿しか見えない。
男の前にも誰かいるのだ。風に揺れて見え隠れする羽織りや袴の裾。藍色の隊服を着た誰かがいる。
「黙ってたら分からないじゃないですかぁ。相変わらずですね、福之助サン。あなたちっとも変わってない」
男はクスッと笑った。
(───今なんて? ふくのすけ……と聞こえたよな)
「後番隊になってもおんなじだ。……メソメソとみっともない。それでも護闘士ですかぁ? あんたが?後番隊? あり得ねぇんだよッ!」
ガシッという音がした。どうやら男は目の前の者に蹴りを入れたようだ。
蹴られた側は横に飛び出すようによろけて地面に膝をつき、諒はその姿を見ることができた。
眼鏡をかけた小柄な男子。
隊服は後番隊、護闘士のものだ。
「……もう一度聞きますよ。福之助サン、こんなところで何をしてるんです?」
「ぼ、僕は今夜……夜警で……」
「へぇ。偶然ですね、オレも同じです。持ち場はどこです?
「そ、それは……」
「どうして答えられないんですかぁ? ちゃんと詰め所に行きました?」
諒の場所から男の表情は見えない。けれどその口調や声音からは愉し気な様子を感じた。
一方で福之助と呼ばれている護闘士の表情は暗く、怯えているように見える。
「いく、予定が……遅れてしまって。……い、行こうと思ってたんだ。探し物を見つけたらすぐに……た、大切なもの、だからっ、どうしても……」
「さがしもの?───ぅふふ。もしかして、それってこういうやつですかぁ?」
───シャン!
袖口に隠れていた右腕を男が福之助の目の前に出した途端、音が響いた。
手には鈴の束。
たくさんの小さな鈴、そしてそこに通された細紐が幾重にも男の手首に巻き付いている。
諒が追っていた鈴音が再び鳴り響いた。
(あいつ、どうやって鈴音を?)
鈴が鳴っているのに、男は腕を動かしていない。
「───か、返せ!僕の鈴っ」
手を伸ばした福之助を男は簡単に避けた。
「これはあんたのじゃない。あんたの鈴なんて知らねぇな」
「……だって同じ音が。……ぁ、アレがないと!あの音が無くなってしまったら僕はっ……!」
「ふふふ。怖いんだ。……ですよねぇ。この響きは不安な想いとか忘れさせてくれますから。無いと困りますよねぇ。福之助サンの場合は特に。弱いのになんでか後番隊に昇格ですものねぇ。しかも破魔の力の目覚めもないから闘剣も所持してないって。噂、本当ですかぁ?」
男の言葉に福之助の表情が歪んだ。
(───まずい、あいつ!)
諒は福之助の中にかなり強い負の感情を感じた。
そして一瞬、妖霊の気配も。
(鈴音がうるさい)
まるで響きが邪魔をするように、諒の集中力を鈍らせる。
───紅緒隊長の言ってた通り、惑わせるんだ。
鈴束を持つ男の身体が動いて、遠目だがその横顔を見ることができた。
男は笑っていた。
嗤いながらゆっくりと鈴束が巻き付いた右手を高く上げる。
鈴の響きに包まれそうになり、諒は咄嗟に両手で両耳を塞いだ。
音を遮断する陣術を使えなくもないが、こちらに気付かれてしまう可能性がある。
目を閉じて自身の体内に流れる音を聴く。血の巡り、心臓の響き。自身の呼吸。
その音だけに耳を傾ける。周囲の音を一時的に遮断する。数分しか使えない技を諒は試した。
これで妖気を探れたら。
妖霊の気配は福之助からなのか、鈴の男のものなのか。
答えはすぐにわかった。
鈴の男が掲げた右腕に黒い濁りの色が集まっている。
そこに溜まっている妖気を感じた。
諒は物陰から駆け出した。
こちらを向いた鈴の男と視線が重なる。狐のような細目顔だった。
驚きのない、微笑を浮かべたようにも見えるその表情に諒は舌打ちし、高く宙へ舞った。
気付かれていた───けれど諒は攻撃を選ぶ。
闘剣の柄に手を添え、下降しながら狙いを定める。
男が掲げた鈴束は武器にもなるのかもしれない。
ギリギリの距離で剣を抜き振ると決めた瞬間、男の左手に光るものが見えて諒は息を呑む。
見逃していた左手首にも数個、鈴が巻き付いていた。そこから鋭い刃のような影が形を成していく。
もしも男があの左手を振り上げたら。あの位置からでは福之助の腹部を裂いてしまうだろう。
どうする? 攻撃を奴の右手から左……だめだっ───間に合わないッ。
「避けろっ!」
諒は叫んだ。
福之助がなんとか俊敏に逃げてくれたなら───。
鞘から抜いた諒の太刀が男の真上で銀色の輝きを放つ。
振り下ろしたその瞬間、なにかとてつもない力が割り込み、諒はまるで強い突風に弾かれるように体勢を崩した。
地面に転がりそうになるところをなんとか回避し、よろけながらも着地する。
荒い息を繰り返しながら、いったい何が起こったのか気配の残る前方に目を凝らす。
妖霊の気配を纏う男が右手を抑えながら苦しそうに顔を歪めていた。
自分の一撃が効いているようだ。
(あの護闘士は⁉)
そこに福之助の姿は見えない。
見えるのは……。
舛花色の着物に樺茶色の帯という着流し姿。肩にかかる黒髪がふわりと風に揺れて。
全体的に闇色を纏ったようないで立ちの男の姿がそこにあった。よく見れば片脇にはあの護闘士、福之助を抱えている。
「……隊長!」
「───諒。夜警当番、ご苦労さん」
嵯牙 黎紫は視線だけ諒に向け微笑んだ。
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