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私の存在意義⑶
しおりを挟む「クレール卿。待て。」
後ろから静かに、それでいて存在感のある声が聞こえる。
忙しなく動かしていた足を止めて振り返ると、思っていた通りバシュロ卿がいた。
「クレール卿。先ほどはらしくなかったが、何かあるのか。」
「何がです?」
「その、いつもはどんな無理難題でも一言目には返事をしているではないか。」
「聖女召喚の儀には何人の魔法士が必要か知っていますか?」
「いきなりなんだ。……その代によって変わるが数十人だと聞いた。多いときは三桁を超えていたこともあると。」
私のいきなりの質問に戸惑いつつも、しぶしぶ答えるバシュロ卿。
「そうです。では、毎回何人の魔法士が命を落としていると思いますか?」
「っ」
「聖女召喚の儀は魔法士にとって死刑宣告のようなものなんです。」
ほとんどの人は聖女の力のことしか知らない。その裏での魔法士の努力と犠牲なんて誰も気にしてなんてくれない。
それでも
「ただでさえ魔法士の扱いは未だに酷いものです。家族に捨てられた者、日常的に暴力を振るわれていた者、奴隷のように働かされていた者。それでも私たちは気にせず、今を生きています。やっと、やっとこの首輪をつけることで普通の人のような生活を送れるようになったんです。そんな団員達に私はあのような命令はしたくはありません。」
「……では独断というのは」
「私が聖女を召喚します。そのための団長ですから。」
はっきりと宣言をした。
私がなんとかする。そうでなければ、こんなにも膨大な魔力を有する意味なんてないじゃないか。
「クレール卿!」
「お話は以上でしょうか。時間がないので失礼しますね。」
何か言いたげなバシュロ卿に背を向けて、私は私にできることをしに行く。
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