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少し遅刻の年明け

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「はぁ~寒い!寒いです!肇さん、暖めてください。」

「達哉、こっちへおいで?」

12月31日、大晦日。




年々寒さが増す冬の季節に備えて、今年初めて買ったコタツ。大の大人が二人だ入るには少しばかり小さいけれど、二人でギュっとなるのも悪くない。

『続いてはこちらのアーティストです。どうぞ。』

テレビをつけて、コタツで温もりながら

「達哉、みかん取って。」

「はい、どうぞ。あ、ちょっと待ってください。…はい、あーん。」

「え、ちょっと待ってくれ。それは恥ずかしい。」

「恥ずかしがる顔が見たくてしているところはありますね。」

こうしてくだらないやり取りをする時間が、私はとてつもなく愛おしく感じる。

「肇さん、もうすぐ今年が終わりますよ。来年はどうしたいですか?」

「どう…って、私はこれからも達哉とこうして同じ時間を過ごしたい。」

「フフ、それは俺もです。仕事でも、もう少し肇さんのお手伝いが出来たらと思ってるんですけど…」

何て可愛いこと言われたら、オジサンの心臓は容易くたきってしまうわけで…

隣に並んで座っていた達哉に思わず抱き着いてしまう。

「うわっ、びっくりした。どうしたんですか?甘えたですか?ふふ、俺もぎゅーってします。」

そうして、二人並んでコタツに入りながら抱きしめ合うという何ともシュールな構図が出来てしまった。

この一年は本当に色んなことがあった。何年も思いを募らせていた相手と付き合うことが出来て、こうして今同じ時間を過ごすことが出来ている。そう、まさに奇跡が起こった。

『カウントダウン始まります!』

「達哉…私と出会ってくれてありがとう。」

『10…9…8…』

「私を好きになってくれてありがとう。」

『7…6…5…』

「私と付き合ってくれてありがとう。」

『4…3…2…』

「肇さん?」

『1…新年あけましておめでとうございます!』

「達哉…一緒に住まないか?」

「えっ、それって…」

「同棲…になるのかな?この部屋でもいいし、新しく探してもいい。同じ場所に帰ってこられるように…」

「……………………」

思い切ってずっと考えてたことを提案してみる。新年の挨拶なんてそっちのけで…
思っていたよりも沈黙が続いて、なん反応もない達哉に少しばかりか不安になって来る。もしかしたら一緒に住んだりは嫌なのかな…やっぱりオジサンと二人で暮らすのは辛いかな…

「…た、達哉?もしかして嫌だったかい?別に無理にとは…言わないんだけど。」

「そんなの嬉しいに決まってるじゃないですか!なんでそんなにカッコいいんですか!俺もかっこいい所見せたいのに!」

そんな私の言葉に被せる様に、口早に若干見当違いな内容を話す達哉は可愛くて。やっぱり年下なんだなぁと再確認しつつ

「肇さん、そんなこと言われたら俺調子に乗っちゃいますよ?」

「達哉、大好きだよ。ううん、愛してる。だから、調子に乗ってもいいんだよ?」

「っもう!俺も大好きです!ずっと愛してます!」

そうして交わした今年初めてのキスはだんだんと熱を帯びていき……
恋人になって初めての年越しは、寒い冬にも負けない熱い夜になってしまった。






************
新年あけましておめでとうございます!抹茶らてです。
年越しはこの二人を書いてみました。大分遅刻をしてしまいましたが、二人のフワッとした年越しを見て和んでいただけると幸いです(笑)
今年も小説投稿続けていきたいと思いますので引き続きよろしくお願いします✨

抹茶らて
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