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招かれざる来訪者⑴
しおりを挟む仕事に追われているある日の午後、営業部に招かざる客の来訪があった。
経理部の部長だ。何かと目の敵にするこの人は、営業部を訪れては嫌味を含んだお小言を言って帰って行く、迷惑極まりない人なのだ。
相手にしないのが一番。
「はぁー本当御堂、部下の尻拭い位ちゃんとしてくれません?しわ寄せが来るのはこっちなんですけど?」
主語もなしにいきなり突っかかられて、理解できないが…
「そうですね…その話はまた詳しく聞きますので、アポイントを取ってからにしてくれませんか?申し訳ないんですが、今抱えているプロジェクトがかなり大掛かりで会社の名前に泥を塗る訳にはいかないでしょう?それは室伏さんも本望ではないでしょう?」
遠回しにあなたに構っている暇はないと告げる。会社の名前まで出したら、引きさがるだろうと思っていた私が甘かった。
「そうやって毎回何かと理由をつけて俺を懸念しようとしていることは分かっているんですよ。…全く、上司も上司なら部下も部下ってことですね。」
貴方はそれでストレスが発散できるかもしれないが、私たちは貴方の相手をするごとに残業の時間増えることをご存じない?
と言いたいところだが、どうにか堪えて流すことにす…
「あなたのどうでもいい小言のせいで部長の仕事が遅れて残業になるんです。その他営業部の人はぎりぎりでしてるんですけど、見て分からないんですか?言いたいことは分かりますが、社会人ならちゃんと時間を取って来てくれませんか?それなら仕事として時間をさけるので…正直いきなり来ておなじような内容を話されると嫌がらせとしか思えないのですが。」
ノンブレスで噛むことなく言い切ったのは達哉。
面倒なことになると思う反面、私のことを見てくれていると思うとどうしようもなく喜んでしまっている自分がいる。
「なっ、なんです君は!」
案の定興奮してしまった室伏さんだが、ここは相手にせずスルーをして各自の仕事を促す。
誰も相手にしなかったらその内帰って行くだろう。
「なんです、ここは揃いも揃って俺のことを無視して。」
「…無視じゃなくて相手にしてないだけなんですけどね。」
「なっ!…フンッ!」
ボソッと言ってしまった内容がどうやら聞こえてしまったらしい。大きく声を上げた後、勢いよくドアをあげて帰って行ってしまった。
本当に何がしたかったんだろうか。
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