【完結】俺は遠慮します。

約束の日

卒業式当日―――――

「白い光のなーかに～山並みは萌えて～遥かな空の果てまーでも～君は飛び立つ～」

はい、お馴染みの歌を合唱しておりますね。チラホラ泣いている人を見かけるけど、ここ男子校だからな。そんな感動モノではない。

合唱も歌う人がほとんどいないからってＣＤ流してるし。それじゃあ出る涙も出ないわ。

そんな俺はばっちり立たされるところ以外は夢の中でした、はい。今、在校生の合唱が始まるがために立たされて、強制的に起こされた感じですね。まぁ立たされていても起きない勇者が隣にいるんですけど。

「おい、栄人。徹起こした方がいいんじゃ…」

その勇者を尊と思う人が多いと思うが、残念ながら変態はさっきから目をランランにさせて卒業生に釘づけだ。また妄想やらなんやらをしているんだろう。飽きないねぇ。

そんな感じで終わってしまった卒業式。最後、卒業生が退場するとき、響先輩がこちらをガン見していることに気づいたけど、気づかないフリをしておく。

正門のとこは覚えてるから心配しなくても良いのに。

卒業生退場後、体育館の片づけを在校生で手分けして終わらす。外では来場されていた家族と話すにぎやかな声が聞こえる。

こんな学園でも一応進学校になるからな。よっぽどの問題がなければ、エスカレーター式で大学へ行くことになる。約束された将来と言うものだ。

そう言えば、宗也と瑠季の姿が見えない。生徒会の仕事か、と思いながらパイプ椅子や床のシートを片付ける。

「栄人～絶対あの先輩とあの先輩、いい感じだわ～。俺去年からずっと追ってたんだよなぁ。卒業前にくっついて良かった。」

隣が少々、いやかなりうるさいが俺はこの後響先輩との約束があるから急いでるんんだ。
お前の変態な妄想話は後にしてくれ。

いつになくテキパキ動いている俺を訝し気に見る尊だったが結局は手伝ってくれるって言うね。
勇者は未だに夢の中だ。いいよ、徹は育ち盛りだもんな。仕方ない。

「うっし、終わったな。じゃあ俺用事あるから先行くわ。」

「うぇ！？栄人行っちゃうのか？こいつと俺を置いて行かないでよ…」

寝てる勇者と変態を置いて俺は先を急ぐ。
体育館の前では家族や友達を写真を撮ったり、別れを惜しんだりする卒業生であふれていた。
人の合間を縫って正門に辿りつく。








「遅かったじゃねぇかぁ。」







そこには気だるげな雰囲気で佇む男が1人。