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ご褒美
しおりを挟む次の日の昼下がり、生徒会メンバーと旅館の周辺を観光している。
そしてこの場に悠希先輩はいない。両親と話してくると言ってた。
俺が言ったことだからなんか余計に緊張する。無事に終わったらいいけど……
「そんなに心配するな。悠希なら大丈夫だ。」
会長はそう言うけど心配なものは心配なんだから仕方ない。
心ここにあらずな俺は会長たちに進められてカフェに入って一休みする。
数分後、カフェのドアが開いたと思ったら悠希先輩が勢いよく俺に抱き着いてきた。なんて熱烈な!じゃなかった、何かあったんだろうか…聞くのが怖いが固唾を呑んで先輩が話始めるのを待つ。
「ありがとう…ありがとう栄人君。」
先輩はそれだけ言うとまた口を閉ざした。
皆はちょっとホッとしたような顔をして、やっぱりみんなも心配だったんじゃんって思った。
「うん、よかったです。」
そんな俺もちょっと泣きそうになりながらもそれだけ返して悠希先輩の腕の温もりを堪能する。今夏で暑いんだけど…
それから、もう一度今度は悠希先輩も一緒に観光をする。目一杯楽しんでから旅館へ帰ると悠希先輩のご両親が出迎えてくれた。
「おかえりなさいませ。…栄人君、ありがとうね。本当にありがとう。」
ひたすらにお礼を言うご両親と握手をして部屋へ戻る。
夕ご飯まで時間があるからと、昨日みたいに悠希先輩と隣り合って座ってたのに……いつの間にか悠希先輩の膝の上に。お腹には先輩の腕がギュッと巻き付いており、さっきからずっとこの状態でどちらも一言も話さない。
きっと俺に話した時以上に勇気がいったんだろうなって思うともうちょっとこのままでもいいかなって思って…
詳しいことは先輩が話さないなら聞くつもりはない。
「………栄人君、本当にありがとうございました。やっぱり栄人君話して良かったです。今思うと物凄くしょうもないことで悩んでたんだなって思って、ちょっと恥ずかしいですけど…」
「そんなことないです!先輩にとって大事なことだったんだろうし、今回だって俺は何もしてないので…悠希先輩が頑張ったから解決したことであって…」
俺の勢いにポカーンとした表情の先輩の顔が自分の肩越しに見える。
「…ふふ、そうですか。じゃあ、ご褒美貰ってもいいですか?」
美人の上目遣いは心臓に悪い!
「もちろん!」
よろこんで!
二つ返事で了承した悠希先輩のご褒美は………
「じゃ、じゃあ…いきますよ。目絶対閉じといて下さいね!」
そのキレイな顔に唇に、自分の顔を近づける。ゆっくりと近づくたびに心臓が鼓動するのを感じる。
そう、ご褒美は俺からキスをしてほしいのだそうだ。俺から誰かにキスをしたことがないから、ちょっと緊張する。
あと数ミリのところで俺も目を瞑って、唇が触れたと思ったら……
ガシッと後頭部を固定され、驚いて口を開いて抗議しようとした俺の声は悠希先輩の口の中に消える。
その後のことはみんなの想像にお任せする。ただ俺が、夕ご飯のときくったりとなっていて、皆に不思議がられたのは関係ない訳ではない…かな。
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