【完結】俺は遠慮します。

抹茶らて

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「何をしているんですか?」

その声で現実に戻される感覚がした。

「……悠希、先輩。」

振り返ると俺の来た方向から悠希先輩が立っていた。多分俺を探してくれたんだろう。それなのに俺は居心地がいいからと目の前の人と…キス…っ!俺ほんと最低だ…あんなに酷いこと言った相手に探させてるなんて!

よく見ると会長たちもいる。

「何をしてるんですか?兄さん。」

…え?兄さん?確かにご家族の方だとは思ったけど、兄さん?そんなに近い繋がり?しかも、悠希先輩のお兄さんって何でもできて、悠希先輩が若干劣等感を感じた人じゃん。

「何って、ナニ?ふっ、うそうそ。ちょっと慰めてただけだ。こんなにキレイな子が泣きそうな顔してたら誰だって慰めたくなるだろう?」

いま、キレイな子って…え、俺?

「いえ、その役割は間に合っていますので。」

冷たく返す悠希先輩に対して、俺といたときと変わらない様子のお兄さん。

「でも、なぁお前そんな様子じゃその役目はお前じゃねぇぞ?何をしょげてんのかは知らないが、後輩に心配かける様じゃ、な?」

いや、前言撤回。ちょっとおちょくって楽しんでるわ、この人。
そんなことを考えてると後ろからふわっと抱かれる。あ、悠希先輩の香りがする。

「分かってます、それぐらい。私はちょっと栄人君に用があるので失礼します。」

「へぇ、栄人って言うのか。俺は旬祢。よろしくな。」

そう言いながら俺の手の甲にキスを落とすと艶やかに微笑んだ。

何も言えずに悠希先輩に引っ張られて部屋に戻る。会長たちはいつの間にかいなくなっていた。探すのだけを手伝ってくれていたらしい。
部屋に入ると悠希先輩とまた二人。沈黙が続く。それを破ったのは…

「栄人君、さっきはすみませんでした。私の為に言ってくれたのに…」

「いえ!俺が出過ぎた真似を!それに先輩の気持ちを無視して……俺こそすみません。」

「私、両親に時間を作ってもらってちゃんと話そうと思ったんです。今までのことが私の思い込みだったらって思うと、栄人君の言うように後悔してしまう気がして…もし勘違いじゃなければ…栄人君が慰めてくれますか?」

そう言った先輩はちょっと吹っ切れた顔をしていたように感じる。
俺が出て行ってからの短時間で何を考えたかは想像もつかないけど、悠希先輩の笑顔がまた見れるなら良かったかもしれない。

「もちろんです!」





そう思えたのは旬祢さんと話したからかなぁ。旬祢さんにちょっと感謝。





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