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不思議な出会い

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「ここは……」

聞いたところで誰もいないのだから返事は帰ってこない。

「ここは、この旅館の名物の一つでもある庭園。綺麗だろう?」

「っ!」

びっくりした!声を出さなかっただけすごいと思う、俺。

「そ、そうなんですね…とてもキレイです。心が静まる感じがして魅入ってしまいました。」

俺が来た方向とは反対の廊下からスッと出てきた、声に人物に視線を向けながら話す。

その人物の顔を見た瞬間俺は固まった。え、なにこの人…なんでこんなにキレイな顔してんの?生徒会のメンバーも中々だけど、この人は次元が違う。薄い茶色の透き通った髪に目をしていて、何でも見透かされそうな感じがする。しかも着流しを着ていて、さらにミステリアスな雰囲気が増してる気がする。

「フッ、そうだろう。俺も嫌なことがあったらよくここに来ている。」

昔の記憶を懐かしむように目を細める様にして話す目の前の人は多分悠希先輩のご家族の方なんだろう。

「あの……いえ、何もないです。すいません。」

俺は何を言いかけたんだろう。この人に何か言ったところでまたお節介になるだけだろ。

「俺はこの辺で失礼します。」

そうだ、今は誰ともいたくない。
目の前の人の横を通ろうとすると、ガシッと腕をつかまれる。

「いや、今はいた方が良い。どうせなら俺が話を聞いてやろう。」

不思議な雰囲気の人だと思った。本当に今は残っていた方が良いと思ってしまったし、言い方が上からなのに気にならないし、話を聞いてほしくなる。

「あの、さっき先輩に余計なお世話なことを言ってしまって…折角俺に話してくれたのに、俺…先輩の誤解を解きたくてつい、先走ってしまって先輩を傷付けてしまったんです。それで怖くなって逃げてきたんです。あと一歩踏み込んでたら誤解が解けてたかもしれないのに、中途半端に踏み込んで傷つけて…俺何がしかったんだろうって…」

話せば話すほど自分勝手に思えて恥ずかしくなる。目の前の綺麗な人の顔を見れなくて視線が下に下がる。

「別に気にすることはないんじゃないか?君はその先輩を想って言ったことなんだろう?ならお節介でもいいじゃないか。その先輩とやらが君を想ってくれているなら、君が先輩を想って言ったことを理解してくれるだろう。」



そう、なのかな?



「もし分かってくれなかったら俺に言うといい。そんなことも分からない奴のそばは離れるべきだ。」

そう言いながら目の前の人は手を俺の頬にそっと壊れ物を扱うかのように触れる。
自分でしでかしたことに、自分で傷ついていた俺はその扱いが今はありがたくて、黙って受け入れる様にその手に自分の手を重ねる。


言葉は何も無く、月明かりに照らされた目の前の透き通る瞳に吸い寄せられるようにキスを交わす。

名前も知らない、初めて出会った不思議な人。

段々深くなるキスは今の俺の苦しい心を表しているようで、生理的な涙が出ても求められている間は応え続ける。

数分だったかもしれない、いやもしかしたら数秒だったかもしないキスが終わり目の前の人を見上げると指でそっと俺の涙をぬぐってくれる。

そして俺の額に優しくキスをする。労わる様に宝物のように……

この時間がずっと続いたら…と思ってしまった。言葉には言い表せないけど居心地がいい。



「何をしてるんですか?」







その声で現実に戻される感覚がした。








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