【完結】俺は遠慮します。

抹茶らて

文字の大きさ
上 下
46 / 149

寮長の部屋

しおりを挟む



そうして始まった夏休み。
始まったばかりと言うのに寮の食堂はもうガラガラで、いつもの騒がしさとは違った静けさが広がっている。

「あっ、栄人様だ!栄人様も残るのかな。」

「キャー!それだったら僕たちラッキーだよね!」

……うん、ところどころはいつも通りかな。遅く起きちゃったから、朝昼兼の食事を食堂で終える。

いつも騒がしい隣の奴がいないと、なんかちょっと寂しく思える気もする。が、気のせいだろう。

「お前も残ってたのか。」

食事をしていた席で呆けていると、ズシッとした重みとともに気だるげな声が聞こえてきた。

「まぁ…そういう寮長も残ってるんですね。」

「寮長だからな。」

え、そういうもん?本人は満足げにドヤってるのだから、それ以上はツッコめまい。

「そうっすか。じゃあ俺帰るんで離してくれません?」

「そうつれないこと言うなって。俺の部屋行こうぜ?」

「遠慮します。」

「遠慮はなしだ。」

遠慮はなしって本当に遠慮してるわけじゃないのに…ただ行きたくないだけだっつーの。でも、それを言ってしまっていいものなのか、悩ましい。

「……単純に行きたくないんすけど。」

口が滑ったーっ!どうしよう、でも出てしまったものは仕方ない。相手の反応を待つしかない。

「へぇ?俺の部屋に行きたくないと?」

ニヤリと口角を上げて笑顔でこちらを見る寮長の目は笑ってない。
怖ぇ、なにこの人いつもダルそうな感じなのにこんな目するとか聞いてない!ダラダラと冷や汗がさっきから止まらないが、少しづつ気づかれないように距離を取る。

「ま、拒否権なんて元からないから。」

ミリ単位で後退していた俺を有無も言わさず俵担ぎして、その場を後にする寮長。

いや、いやいやいやいや。俺176㎝あるんだけどそれを担ぐって寮長中々の曲者だ。やる気ないフリして本当は何でもできるタイプか!ギャップ萌えを狙っているのか!?
担がれている間、現実逃避をするが俺の意見は関係なく進んでいく現実に嫌でも引き戻される。

とういうか、俺が担がれてる姿を結構な生徒に見られたくない?俺にも羞恥ってやつあるんですけど知ってました?寮長。
チキンな俺は直接言えないから、心の中にとどめる。

するといきなりの浮遊感の後、ボフンと柔らかい衝撃とともに自分がベッドにいることを理解する。
え?真面目にヤバい感じ?俺のお尻ピンチな感じ?

「おーい、いい加減戻って来い。別に取って食いやしねぇよ。」

寮長のその言葉にホッとする。

「そこで安心されるのはなんかムカつくな。」

そう言い終わるな否や、チュっと軽いキスをされ、そのまま深くなっていく。

「っん、あぁんっ…」

舌先からビリビリと甘い痺れが全身を巡っていく感覚がする。それに伴って力も抜け、必死の抵抗が寮長の腕に縋りつく形になって、それに満足したのか寮長は満面の笑みで顔を離した。

「フッ、気持ちよすぎてもっと欲しくなるだろう?」

気だるげな妖しい色気全開でそう言われると頷きそうになるが、もうほとんどない理性をフル稼働して踏みとどまる。

いきなりのキスに息が上がるのと同時に、脳に酸素が行かず頭が回らないから言い返したいのに言葉が出てこない。代わりにジトっと睨んでおいた。

そんな俺の様子を見て、顔をクシャッとさせながら笑った寮長はサラッと





「可愛いなぁ。」






…………………えっ?










しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語

紅林
BL
『桜田門学院高等学校』 日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する野球ドーム五個分の土地が学院としてなる巨大学園だ しかし生徒数は300人程の少人数の学院だ そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語である

ボクの推しアイドルに会える方法

たっぷりチョコ
BL
アイドル好きの姉4人の影響で男性アイドル好きに成長した主人公、雨野明(あめのあきら)。(高2) 学校にバイトに毎日頑張る明が今推しているアイドルは、「ラヴ→ズ」という男性アイドルグループのメンバー、トモセ。 そんなトモセのことが好きすぎて夢の中で毎日会えるようになって・・・。 攻めアイドル×受け乙男 ラブコメファンタジー

風紀委員長様は王道転校生がお嫌い

八(八月八)
BL
※11/12 10話後半を加筆しました。  11/21 登場人物まとめを追加しました。 【第7回BL小説大賞エントリー中】 山奥にある全寮制の名門男子校鶯実学園。 この学園では、各委員会の委員長副委員長と、生徒会執行部が『役付』と呼ばれる特権を持っていた。 東海林幹春は、そんな鶯実学園の風紀委員長。 風紀委員長の名に恥じぬ様、真面目実直に、髪は七三、黒縁メガネも掛けて職務に当たっていた。 しかしある日、突如として彼の生活を脅かす転入生が現われる。 ボサボサ頭に大きなメガネ、ブカブカの制服に身を包んだ転校生は、元はシングルマザーの田舎育ち。母の再婚により理事長の親戚となり、この学園に編入してきたものの、学園の特殊な環境に慣れず、あくまでも庶民感覚で突き進もうとする。 おまけにその転校生に、生徒会執行部の面々はメロメロに!? そんな転校生がとにかく気に入らない幹春。 何を隠そう、彼こそが、中学まで、転校生を凌ぐ超極貧ド田舎生活をしてきていたから! ※11/12に10話加筆しています。

元執着ヤンデレ夫だったので警戒しています。

くまだった
BL
 新入生の歓迎会で壇上に立つアーサー アグレンを見た時に、記憶がざっと戻った。  金髪金目のこの才色兼備の男はおれの元執着ヤンデレ夫だ。絶対この男とは関わらない!とおれは決めた。 貴族金髪金目 元執着ヤンデレ夫 先輩攻め→→→茶髪黒目童顔平凡受け ムーンさんで先行投稿してます。 感想頂けたら嬉しいです!

悪役令息シャルル様はドSな家から脱出したい

椿
BL
ドSな両親から生まれ、使用人がほぼ全員ドMなせいで、本人に特殊な嗜好はないにも関わらずSの振る舞いが発作のように出てしまう(不本意)シャルル。 その悪癖を正しく自覚し、学園でも息を潜めるように過ごしていた彼だが、ひょんなことからみんなのアイドルことミシェル(ドM)に懐かれてしまい、ついつい出てしまう暴言に周囲からの勘違いは加速。婚約者である王子の二コラにも「甘えるな」と冷たく突き放され、「このままなら婚約を破棄する」と言われてしまって……。 婚約破棄は…それだけは困る!!王子との、ニコラとの結婚だけが、俺があのドSな実家から安全に抜け出すことができる唯一の希望なのに!! 婚約破棄、もとい安全な家出計画の破綻を回避するために、SとかMとかに囲まれてる悪役令息(勘違い)受けが頑張る話。 攻めズ ノーマルなクール王子 ドMぶりっ子 ドS従者 × Sムーブに悩むツッコミぼっち受け 作者はSMについて無知です。温かい目で見てください。

それはきっと、気の迷い。

葉津緒
BL
王道転入生に親友扱いされている、気弱な平凡脇役くんが主人公。嫌われ後、総狙われ? 主人公→睦実(ムツミ) 王道転入生→珠紀(タマキ) 全寮制王道学園/美形×平凡/コメディ?

眠り姫

虹月
BL
 そんな眠り姫を起こす王子様は、僕じゃない。  ただ眠ることが好きな凛月は、四月から全寮制の名門男子校、天彗学園に入学することになる。そこで待ち受けていたのは、色々な問題を抱えた男子生徒達。そんな男子生徒と関わり合い、凛月が与え、与えられたものとは――。

Q.親友のブラコン兄弟から敵意を向けられています。どうすれば助かりますか?

書鈴 夏(ショベルカー)
BL
平々凡々な高校生、茂部正人«もぶまさと»にはひとつの悩みがある。 それは、親友である八乙女楓真«やおとめふうま»の兄と弟から、尋常でない敵意を向けられることであった。ブラコンである彼らは、大切な彼と仲良くしている茂部を警戒しているのだ──そう考える茂部は悩みつつも、楓真と仲を深めていく。 友達関係を続けるため、たまに折れそうにもなるけど圧には負けない!!頑張れ、茂部!! なお、兄弟は三人とも好意を茂部に向けているものとする。 7/28 一度完結しました。小ネタなど書けたら追加していきたいと思います。

処理中です...