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また撫でてくれる?
しおりを挟むテスト前の貴重な時間を昨日変態に使ってしまったから今日は図書館に来ている。
おひとり様の勉強だ。……別に俺ボッチじゃないし。友達いるもんね。
「…………」
邪魔をする者がおらず、勉強が捗る。すらすらと問題を解いていき、1人で寂しかった気持ちも薄れていき、段々と目の前のことに意識が集中していく。
だから、気が付かなかったんだ。かなりの至近距離で見つめられていることに…
「………」
あぁ、この年はこのおっさんが国を作ったのか。頑張ったんだな、おっさん。俺が覚えておこう。
「………」
この数式当てはめたら時短じゃん!なんで先生教えてくれなかったのかね?いやん、い・け・ず♡
「………」
えーっとこの形が現在進行形でこっちが過去形、そんでこれが未来?全部似てて分かりずれぇ。ってそらそうか。
「栄人クンってなんで勉強するときそんなに百面相になるの?」
「うぇあっ!?な、〇¥¶§ξ×△П◆!?」
「ぶっ、あははははははっ!ふふ、あはははっははははは!!」
いきなり耳元で話しかけられて言葉にならない声を上げる俺に対して目の前で爆笑している会計。そしてそのまま、ちゃっかり横に座ってるし。
目に涙をためて笑う姿はさぞ楽しいのだろう。こんなにぶん殴りたくなる顔は初めて見る。
「………」
「あはははっふははっはははは!!」
ツボに入ったのか終わりが見えない笑いに、心底殺意がわく。
「ちょっ、ふふっそれ、危ない、からしまおう?ふふっ」
思わず持ってしまっていた俺の手にあるシャーペンを指しながら笑ってる…これは刺してくれってこと?
「ちょっちょっと!マジでたんま!目!目がマジだから!!いったん落ち着こう!うん、落ち着いて。」
「チッ、俺は最初から落ち着いている。」
「う~んキレイな舌打ち……ごめんなさい。」
「それより何しに来てるんですか?暇なんですか?テスト余裕なんですね。さすが先輩です。」
「ちょっちょ、答える暇もない質問と謎の圧はやめようよ~。俺は今日戸締りの担当だから見回ってただけ~。テスト前は下校時間が早くなるから、先生達の前に一度生徒会が見回りすることになってるんだよ。それで~たまたま下校時間過ぎても栄人クンが残ってたから話しかけただけだよ。ね?俺無罪~」
「はいはい、私めが悪うございました。じゃあ帰りますね。さようなら。」
「折角だからちょっと話そうよ~。俺栄人クンのこと結構気に入ってるんだよね。だから…ね?俺のこともっと知ってほしいし!」
言い分は分かるがテスト前じゃなくても良かろう。
「そう、会計は何を知ってほしいの?俺結構会計のこと見てるよ」
そう言いながら会計に目を移すとポッと頬を染めていた。ちょっと気持ちい悪い。
「俺のこと見てくれてんの?嬉しい!もっと見てて?それで~そのまま俺に惚れちゃって?」
段々と顔を近づけて、耳元でそう呟かれてゾワッと腰から背中にかけて何かが走る。
会計本気を出したらイケボと言うことが分かった。
「何言ってるんですか?そんなこと誰にでも言ってるといつか刺されますよ?」
ボソッ「誰にでも言ってるわけじゃないのに……」
俺の言葉を聞いてショボンとなってしまった会計がちょっと可愛く見えて、頭をよしよしと撫でた。
ボンッという音が聞こえてきそうなほど一瞬で顔を真っ赤にした会計が……
「な、なん、ななななにして…」
「あ、ごめん嫌だった?」
「い、嫌じゃない!!」
手を引っ込めようとすると大きな声が被せてきた。
「ふふ、分かった分かったから。落ち着け。」
会計ってチャラそうなイメージだったけど、全然見えないんだよね……とっさに出る言葉とか井草とかが特に…意識的に演じているとしか思えなくなってきた。
「さぁ、俺のせいで遅くまでごめんなさい。そろそろ遅いし、会計帰ろ?」
撫でられて気持ちよさそうだったからちょっと名残惜しいけど、外が暗くなってきたからそう声を掛ける。
「うん…また撫でてくれる?」
う‶……名残惜しそうにそう言われて、俺はダメージを受けた。チャラ男が可愛いとか何狙ってんだ。俺得かよ。
「ふふ、はい、また。」
頬が緩むのを感じながら、会計の額にキスをして帰路についた。
その後しばらく図書館で顔を真っ赤にして動けずにいた会計のことは知らずに、勉強が捗って上機嫌な栄人だった。
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ささやかながら、いつも拙作を読んでくださる皆様へバレンタインプレゼントとして本日2話投稿させていただきました。
これからも、引き続き「俺は遠慮します。」を楽しんでいただけたらと思います。
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