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第3章
王太子……
しおりを挟むそれから陛下達国の重鎮たちには休んでもらって王太子の聴取が始まった。団長たちと私、ロイが入った。
王太子が今回の計画を企てた理由を話すにはあの頃の話をする必要があるとのことで……話はあの伯爵家がいた頃へ遡る。
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俺はあの時の行動を未だに後悔している。まぁ、ナーシィに出会えたという点では良い行動だったと思わずにはいられないが……
俺が10歳の時、街に出ていた俺は護衛を好きなことがしたく護衛を撒いて街を徘徊していた。何回もしたことがあるし、自国の城下町でまさか拉致なんて物騒なことがあるとは思ってなかったし、帰ってから軽く怒られるぐらいだと思っていた。無知だったんだ、何もかも。
その日は入ったこともない裏路地の様なところを見つけて、無性に興味が引かれて入ってしまった。
そこで見た光景は未だに忘れられない。異様な光景だ、1人の女性が複数人の相手をして、一撃で動かなくなる人だった者達。これは現実なのかとゾッとした……早くここから離れないと!そう思うのに、そう思うほど自分の足は思うように動いてくれなくて、焦りと自分もあの人だった者達のようになるのかもしれないと、生まれて初めて感じる死の恐怖に身体も思考も停止する。
まんまとその女性に見つかり、刃物を一振り………
「あら、よく見るとすごく綺麗な顔……ここで殺すのは勿体無いわ!」
いきなりテンションが上がった目の前の女性はパチンッと指を鳴らすとどこからともなく黒服の集団があらわれ、俺を拘束する。
子どもが出来る抵抗が敵うわけもなく、呆気なく拉致された。
これから何が起こるのだろうか…俺はもう二度とあの場所に帰れないのか…命は助かったものの絶望という二文字が現実に突き付けられる。
もしかしたら死んでいた方が幸せだったのかもしれないと思わざるを得ないほどの苦痛が待っているなんて、到底箱庭育ちの俺には考えられるはずもなく……
連れてこられた場所はどこかの国だろう貴族のお屋敷。自国に裏家業の様な事をする貴族があっただろうか…
上機嫌な目の前の女性、とてもじゃないけどさっきまで人を殺していた人には見えない。人を殺してもここまで普通の生活が出来るということはそれほど慣れていて、思考あるいは感覚が狂ってしまっているのだろう。
その目の前の女性は上機嫌のままある人に俺を紹介した。それがナーシィ。その時は名乗りもしてくれなくて、あの貴族の子供ぐらいにしか思ってなかったけど、あの何も映さない死んだような目はその時の絶望にいた俺の心をつかむにいは十分だった。
それから地下へ連れて行かれ、コレクションと呼ばれている人達の仲間入りをした。
それからの俺は、その伯爵夫人に従順な奴隷。俺の意思や気持ち関係なく、魔法で操られ、時には薬によって支配される。
知らない女たちの相手をさせられ、見世物になるのは日常茶飯事。夫人を満足させられるまで鞭や刃物で身体を傷つけられることもあった。俺より先にいたキレイな顔の男や女が、成長して気に入らないからと殺されるところや売られるところを何度もこの目で見た。初めは泣きもしたが、泣いたって誰も助けてくれない。どんなに願ったって死ぬこともできない。俺は生きながらに地獄を味わったんだ。
終わりの見えない地獄に俺の神経は麻痺していた。何をしても、何を見ても何も思わなくなってきたんだ。本当に辛かったのはその時。
俺はもう普通の人間じゃなくなったんだと……俺はこの人達と同じ人種になってしまったんだと思うと涙が止まらなかった。
そんな時だ、心を動かされたのは……………
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