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第3章

執着

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仕事が終わり、食事を済ませて部屋へ戻る。そのままベッドに入って休む………ふりをする。
みんなが寝静まる頃合いを見計らってムクリと起き上がる。

あれから色々考えたけど、私は魔術師だ。私に出来ないことなんて、ない…………はず。
自分のベッドの上から魔法陣を展開する。王都、それも王太子が収監されている場所まで姿を消して瞬間移動しようって魂胆だ。

出来るか分からないけど、やらないと出来るものも出来ないからね。要は物は試しってことだね。
次に目を開けた瞬間、目に入ったものは怪しく笑う隣国の王太子の姿。

え、私の姿見えてないよね(汗)

「もうすぐだ。あぁもうすぐだよ、ナーシィ。僕がどれほど待ちわびたか。初めて君に会った時から、惹かれていた。あの死んだような何も写さない瞳も、何者にも負けないその姿も全てが君の虜だよ。ふふふ、あはっあはははははは。」

狂ったように笑うその姿は狂気そのもの。恐怖を覚えると同時に、王太子の発言に引っかかる。『初めて会った時』『死んだような目』『何者にも負けない姿』その単語が表すのはきっとあの頃の私。

「はぁ、今の君は昔と比べてずいぶんと丸くなってしまった。全部あいつ等のせいだろう?だから僕が思い出させてあげる。そして、もう一度君に恋をするんだ。待っててね、ナーシィ。」

言葉の端々に言い表せないほどの執着を感じる。隣国へ攻め入った時の王家のオーラを毛ほども感じることができないぐらいに歪んでいる。

ゾクッとして思わず、クリスタル宮へ帰って生きてしまう。何かを企んでいるのは分かったが、肝心の何をしようとしているのかを知ることができなかった。

どうしよう……でも、あいつ等のせいってことはロイやサーシス、団長たちが狙われる可能性が高いよね。
ふと隣国の王太子のさっきまでの様子を思い浮かべてみようとして、変な違和感に気づく。

「あんなに怖かったのに、はっきりと思い出せない…?」

そう、見た目が何も思い出せない。陛下から話があった時もそうだ。キラキラした容姿っているのは分かったけど、顔が見た目が出てこなかった。だから、会ったことあるのかも分からなかった。

でも、どうして?なんで容姿を忘れてしまうの?見えてないわけではない…はず。でも、目を離した瞬間思い出せなくなる。何かの魔法?

もしそうだとすると、かなり危ない魔法だ。だって相手の容姿を思い出せないとふと目の前に現れても誰か分からず見逃してしまうことだってある。

誰かに危険が迫ってても、気づかないとこだってありうる。




これは早々に陛下へ報告した方が良いかもしれない。







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