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第3章
選別⑴
しおりを挟む「お、やっと来たか。」
訓練場へ入ってすぐ、団長に出迎えられた。
「いきなりすまん今年の避暑地への護衛は近衛隊とか関係なく選別しようと思ってな。近衛隊のほかに実力を見込まれた者に集まってもらった。今から簡単な模擬戦をしてもらい、上から残る者と連れて行く者を振り分けていく。」
騎士団長の簡単な説明に頭の上にハテナが浮かぶ。
何事かも分からないまま、話がどんどん進んでいく。
え、私たちも選別されるってことだよね?下手したら行けないかもしれないってこと!?
「マジか……」
行けないなら行けないでもいいけど、模擬戦っていうのがなぁ~私女だし舐められないように勝たないとって思っちゃう。
「対戦相手はこちらの独断と偏見で決めさせてもらった。一応騎士団と魔術師団は別にしている。勝ったからと言って必ず行けるわけではないが、今度の評価の参考にもさせてもらうから心してかかる様に。」
リート団長の言葉で士気が高まるのを感じる。
「あ、あと心配しなくても死なないようにシールドを張っているから全力で行けよー。」
ダンティアの言葉で全体がホッとした様に感じる。
言ってしまえばそのシールド内ではどんな攻撃を受けても死ぬことはない。って言っても肉体が耐えられないほどの攻撃を受けるとシールド外へ飛ばされるんだけど…うちの団員の固有魔法の一種で、貴重な魔法だ。模擬戦には打ってつけってことだね。ちなみに相応の痛みはあるよ。
それからどんどんと進んでいき、私の出番が来た。相手は魔術師団の下っ端、因みに私のことを化け物と言っていた奴だ。
団長が何を考えて組んだのかは分かりかねるが、いい機会だから遠慮せずに行こうと思う。どうせ死なないし。恨みはないけど、折角だし化け物がどんななのか身を持って体験してもらおうじゃんね。
「では、両者前へ。」
リート団長の声でシールド内へ入る。対戦相手の団員は少し怯えるような様子でこちらを見ている。
そんなに怯えなくてもいいのに。
「始め!」
言い終わるか終わらないかのタイミングで、相手の足元に魔法陣を構築する。その間わずか0.5秒。
すると瞬く間に魔法陣が光り、相手の全てを地面に押し付ける。所謂重力魔法だ。
「ぐわぁっ!」
うなり声を上げ、なすすべもなく地面にはいつくばっている団員に、観客席と化した待機団員たちが口々に話している様子が見える。
「やべぇ、俺当たらなくて良かった。」
「あんなんどうにもできないっしょ。」
「確かに。手も足も出ないって感じだよな。」
「っていうか!無詠唱だぞ!?魔法陣構築も人間業じゃねぇよ。」
何を言っているかは聞こえないが気にしないでおこう。
ふと観客席の方を見るとロイの姿が目に入る。物凄い人の中でもすぐに目に入るって、それだけ好きなんだと今更ながらに自覚する。
少し前までは好きってどういうものなのか分からないって言ってた頃が懐かしく感じる。好きな人の存在って自分を弱くするときもあるけど、誰に何を言われても気にしなくなるぐらいには強くもしてくれるんだと思う。
心なしかロイの目が優しく見つめてくれている様に感じる。気のせいかな……気のせいじゃないといいな。
ロイにばかり意識がいっていたから対戦相手に申し訳ないことをしてしまった。と思い、ふと見てみると魔法陣を構築していた。かなり広範囲の魔法陣でシールド内に自分のフィールドを作ろうとしているのだと推測する。たとえ相手のフィールド内であっても私の魔法が途切れることはないとは思うけど、私が目指すのは完全勝利。相手に魔法を使わせる何てことはしてあげない。
上から同じ魔法陣を構築し、相手と同等の魔力を込めることで相殺する。
「えっ、そんなっ!?」
まさか破られるとは思っていなかったのだろう。前から驚愕した声が聞こえてくる。が、私は魔法の構築を止めない。
重力魔法の重力を強くし、人が耐えられないレベルまで上げていく。
「う‶ぅ、あ‶…」
その声を最後に相手の団員はシールド外へ飛ばされた。
「勝者ナーシィ。」
シ―――――ン……
「おいおい、あんなことが可能なのかよ…」
「あんな魔法使われたらどうしようもねぇじゃん。」
私の魔法に戸惑いが見られるが気にしない。というか最初は相手の動きを止めるぐらいの物としか考えていなかったように感じる。でも、そのままシールド外へ飛ばされたということは殺せる魔法と言うことだと気づき、混乱させてしまたみたい。
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