【完結】総受け主人公のはずの推しに外堀を埋められた！？

攻め要員⑴

「本日はお集まり頂きありがとうございます。私、サムソン＝シガンはソノア＝ベルデと婚約することを発表いたします。」

サムソン公爵家の次期当主の婚約披露パーティー。

そんな題材で招待状を貰ったのは数カ月前。サムソン＝シガンの相手は一人しか浮かばなかったが、ここ数年サムソンの傍にあいつの姿を見る機会が減った。

今、その状況は変わらないはずなのに、この時期に婚約。

全く何を考えているのか俺には検討もつかない。が、仮にも俺も好きだった相手だ。ファーストキスの相手は俺だと言ったら、あの坊主はどんな顔をするだろうなぁ。
ふ、一人勝ちしたんだ。それくらいは許されるだろう。














パーティー当日。

あの坊主の隣で、周囲に花が咲く様に笑うベルデの姿があった。

「(あの二人の間に何があったのかは知らないが、あの表情を見せられたら諦め…る訳がない。人のものには興味なかったが、ベルデなら人妻ってのもそそられるな。)」

ふと隣を見ると静かに涙を流している者がいた。

「(確か、こいつは…リージア＝ガレア、だったか。)」

何とか記憶の奥底から呼び起こす。

一言も話すことなく、ただただ涙を流す姿はとてもじゃないがうれし涙には見えない。

「(そうか、こいつもあの騎士様に惚れた口か。ふむ、あの坊主も残酷なことをするもんだ。)」

サムソン＝シガンが護衛騎士を好いていることは誰もが知る事実。それが明るみに出たのは、坊主の誕生日パーティーでの出来事がきっかけだ。