【完結】総受け主人公のはずの推しに外堀を埋められた!?

抹茶らて

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推しの幸せが俺の幸せ

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「シガン様、私はシガン様が大好きです。私のお仕えする方はこの先もシガン様しか考えられません。これは私の本心です。…私がシガン様に怒ることなどありません。何をされても多分許してしまいます。」

そう言って困ったように笑うベル。
違う、俺はそんな顔をしてほしい訳じゃない。表情を歪ませたいわけじゃない。

ただ俺の手で、ベルを幸せにしたいだけなのに…

「それは公爵家に対する忠誠心から?」

「それもあるかもしれませんが、私は公爵家ではなくシガン様にお仕えしています。」

「ベル、教えて。どうして俺と距離を取った?今まで有耶無耶にしてきたけど、それではダメなんだ。(そんな状態で…無理やりになるかもしれない状態で俺の成人を迎えたら…)」

「っ…それは、その」

そう言って、ベルは初めて俺から視線を逸らした。

「…シガン様には思い人がいて…私はシガン様に近い存在なので、邪魔になると思い…」

「ベルが邪魔なわけっ!」

「私はシガン様の幸せだけを願っております。それがどんな形であれ、私が邪魔をするなど言語道断。私の存在意義がなくなってしまいます。」

ポロポロと零れるベルの言葉に比例するように、そのキレイな瞳から零れ落ちる雫。その言葉も態度も全てが、まるで俺のことが好きで好きで仕方がないと聞こえてくる。
これは俺の勝手な解釈だろうか。

「うん、じゃあなんで泣いてるの?」

「っ!」

「ベル、俺はねベルが思ってくれてるように俺もベルの幸せを願っているんだ。だからそんな悲しそうな顔してほしくないし、悲し涙なんて見たくない。」

「涙などっ!」

未だに止まらない涙を親指で拭い、舐める。ってしょっぱ。キレイな紫色の瞳から零れ落ちる雫はキレイで、神秘的で美味しいかもって思ってしまったけど、やっぱりしょっぱい。

「えっ舐め!」

いきなりのことに驚いたのか、目をこれでもかってくらい真ん丸に見開いたベルの涙は止まる。

「涙止まったね。俺が知らないうちにベルは泣き虫になっちゃったんだ。それなら、これからは俺が笑顔にしないとね。」







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