【完結】総受け主人公のはずの推しに外堀を埋められた！？

護衛たるもの⑴

今年の長期休暇も当主教育をするため、公爵家へ帰省している。前にも増して、重要業務をこなしているシガンたん。




この休暇が終わったら学園にも持ち帰りの仕事があるとか…どんどん忙しくなっていくシガンたんを、見ていることしかできないのがもどかしい。










帰省して数日経った夕食時―――――

シガンたんの後ろで仕え、ご当主と婦人、シガンたんが談笑しながら話していた時の事。

「ねぇシガン、私街に降りようと思っているのだけれど…ベルデほどの腕の立つ人が今出払っているのよ。明日少しだけベルデのこと借りてもいいかしら？」

子持ちとは思えないほどに整った顔で、上目遣いからの可愛いおねだりを実の息子にする夫人。シガンたんも断ることは出来ないようで

「嫌だけど、いいですよ。ベルのことあまり困らせないでください。」

ちょっとムスッとした表情で承諾した。

「あらまぁ！シガンったら可愛い顔して、そんな表情もできるのねぇ。ベルデのお陰かしら。」

「お母様！余計なことは言わないでください！」

こんなに微笑ましい親子の痴話喧嘩があるとは、世の中も捨てたもんじゃない。













公爵夫人の護衛は思ったよりも楽しく、護衛と言うよりは一緒に楽しんでくれている感じがして嬉しくなった。こういうところがシガンたんとの血のつながりを強く感じる。

「そろそろ帰らないといけないわねぇ。今日は付き合わせてしまってごめんなさいね。」

「いえ、とても楽しかったです。ありがとうございました。」

「キャッ！」

馬車までの道のり、街での色んな出会い、出来事を振り返りながら楽しく話をしていたときだった。
婦人が小さく悲鳴を上げたのは。