【完結】引きこもり陰キャの僕が美形に転生したら

嵐の前の…

僕がこの世界で一番怖いこと、それは家族や友達から嫌われること。一度覚えた家族や友達からの愛情は手放せるものではない。もう、あんな独りぼっちの生活には戻りたくない…
だから、良い子でいる様に、嫌われないように過ごしていたのに、神様は僕のことが嫌いなのかな…

「ディ、最近周りで変なこととか起きてないか？」

「どうしたの、いきなり。何もないよ？」

休憩時間、何気ない話をしていたのに突拍子のないことをいきなり聞いて来たアレクに驚きながらも、正直に答える。

「いや、無いならいいんだ。」

「うん？アレクは何かあったの？大丈夫？」

「あぁ、大丈夫。何もないから。」

少し様子がおかしいアレクに疑問を残しつつも、こんな時もあるかと呑気に流してしまう僕。
本当に何もないのだから心配することもあるまい。
クラスメイトの皆は優しいし、学園の勉強も頑張っているし、この上なく充実した生活を送っている。

「それよりアレク、今度の休日新しく出来た本屋さんに行かない？」

「いいな、行こう。その近くにカフェも出来たらしい。本を買ったらそこでゆっくり読むのも良いな。」

「それいいね！もう今から楽しみだなぁ。」

「フッ、気が早い。」

何て言いながら、アレクも表情を綻ばせている。
僕とのお出かけが少しでも楽しいと思ってくれているのかなって思うと、僕も嬉しくなる。
休日に友達と本屋巡って、カフェでゆっくりって子どもがやる遊びじゃないくらい分かってるけど、それが楽しいからいいんだ。

遊びに行く話で浮かれた僕は、さっきまでの可笑しなアレクのことなど忘れてしまっていた。
アレクが何もないのに、あんな態度をとるはずないのに、どうして深く考えなかったんだろう…この時の僕が何かしていれば、どうにかなったのかと思えてならない。