上 下
10 / 14

卒業パーティー

しおりを挟む


卒業式後の卒業パーティーでダンスを踊ったり、食事や会話を楽しんだりと各々が楽しんで過ごしていたひと時にその時はやって来た。

「ロイド様、聞いてください。私、アミリアス様にドレスを破られてしまって…制服で来るしかありませんでしたの。」

ローゼがいつものようにアミリアスにされたとロイドへ告げ口をしており、周囲の生徒は皆またかと言うようにその様子を見ていた。

「そうか…」

ロイドは一言だけ返すとそのままローゼを中心へ連れていき、声を張り上げた。

「楽しんでいるところすまない。今日この場でみなに迷惑を掛けていた罪を暴きたい。アミリアスこちらに。」

そうしてホールの中心にはアミリアスを支えるようにロイドが、そしてその後ろに使えるようにナーウェイド、キートリアが並ぶ。それに対面するようにローゼが…

「ちょっと、どういうことですの?どうしてその女が」

「ローゼ嬢がアミリアスに対していじめられたなどと虚偽の発言をし、その裏ではアミリアスを階段から落としたりなどをしていた。それらの悪事の証拠はもう出ている。」

自身だけが1人になる構図に不服を申し立てるローゼの言葉に、被せる様にロイドは話始める。

「そ、そんな私は虚偽の発言など…ましてやアミリアス様にそのようなことなど」

「まだ、続けるのか。いいだろう、証拠を今から話そうか。ナーウェイド。」

「はい、以前アミリアス様とそのご学友たちの会話を耳に挟んだことがあります。その時、アミリアス様はローゼ嬢と殿下の噂に関して物事はなる様にしかならないのだ、だから自分は見守るとおっしゃっていました。なので、ローゼ嬢の言う嫉妬からいじめをするのは考えられません。」

「まって、いじめられたのは本当で!!」

「次、キートリア。」

「はい、アミリアス様は王妃教育や実家のお手伝いをしており、加えて最近は公務もこなすようになっています。失礼ながら、ローゼ嬢を構っている暇はないかと…それに以前ローゼ嬢がアミリアス様に対してロイド殿下を自分のものにするのだと、そのためいじめられた方がやりやすいからいじめをされたと言えば嘘でも皆は自分を信じるのだと言っていました。」

「それは、その時はまだいじめられてなかったから!!」

「次、メラリオ先生。お願いします。」

「はい、以前アミリアス様が倒れてしまって保健室へ運ばれて来たことがあります。キートリア様の言う王妃教育や公務などで疲労の蓄積や寝不足が重なったのでしょう。それほど忙しい方がわざわざいじめなんてされるでしょうか。またそれから数日後、足に怪我をして来室されました。アミリアス様は言葉を濁して、自身で転んだと言っておりましたが背中や腕にも打撲や小さな傷があったため数段の階段から落ちたことが考えられます。そして、気になり調査した結果、アミリアス様と階段の踊り場で口論をしていた女生徒がいたという情報をつかみました。」

「それは、この女が自分で飛び降りて!!」

「ほぅ、まだ虚偽の発言を重ねるか…そなたがアミリアスにされたと言っていたいじめの内容一つ一つに自作自演だと言う証人がいる。アミリアス、すまなかった。私がローゼ嬢と変な噂になってしまったばかりに…」

そこで初めてアミリアスは口を開いた。

「ロイド殿下…あなたはローゼ嬢が好きなのではないのですか?」

「そ、それは…その、すまない。君の興味を引きたくて…少し女生徒と話す時間を多くとったら君は私を気にしてくれるのではと思って…本当にすまない。私の浅はかな考えで君を傷つけた。」

「そう、でしたの…許します。今謝ってくれましたし。私を想っての行動だと思うと嬉しいですわ。」

そう言って微笑んだアミリアスの笑みを、ロイドは初めて心から笑ってくれた気がしたと思った。

ロイドと婚約者となってから、淑女教育や王妃教育が始まったアミリアスはどこか一線を引いたような態度が寂しく感じていた。そのため、久しぶりに見たアミリアスのこの笑顔をこれから先何があっても守りたいと思うのであった。



「ちょっと待ってくださいっ!!私本当にいじめられてて…それに私は階段から落としたりしてません!!ほんとうです、信じてください!!」








しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

【短編完結】記憶なしで婚約破棄、常識的にざまあです。だってそれまずいって

鏑木 うりこ
恋愛
お慕いしておりましたのにーーー  残った記憶は強烈な悲しみだけだったけれど、私が目を開けると婚約破棄の真っ最中?! 待って待って何にも分からない!目の前の人の顔も名前も、私の腕をつかみ上げている人のことも!  うわーーうわーーどうしたらいいんだ!  メンタルつよつよ女子がふわ~り、さっくりかる~い感じの婚約破棄でざまぁしてしまった。でもメンタルつよつよなので、ザクザク切り捨てて行きます!

わたしは婚約者の不倫の隠れ蓑

岡暁舟
恋愛
第一王子スミスと婚約した公爵令嬢のマリア。ところが、スミスが魅力された女は他にいた。同じく公爵令嬢のエリーゼ。マリアはスミスとエリーゼの密会に気が付いて……。 もう終わりにするしかない。そう確信したマリアだった。 本編終了しました。

わたくし、残念ながらその書類にはサインしておりませんの。

朝霧心惺
恋愛
「リリーシア・ソフィア・リーラー。冷酷卑劣な守銭奴女め、今この瞬間を持って俺は、貴様との婚約を破棄する!!」  テオドール・ライリッヒ・クロイツ侯爵令息に高らかと告げられた言葉に、リリーシアは純白の髪を靡かせ高圧的に微笑みながら首を傾げる。 「誰と誰の婚約ですって?」 「俺と!お前のだよ!!」  怒り心頭のテオドールに向け、リリーシアは真実を告げる。 「わたくし、残念ながらその書類にはサインしておりませんの」

婚約者が不倫しても平気です~公爵令嬢は案外冷静~

岡暁舟
恋愛
公爵令嬢アンナの婚約者:スティーブンが不倫をして…でも、アンナは平気だった。そこに真実の愛がないことなんて、最初から分かっていたから。

護国の聖女、婚約破棄の上、国外追放される。〜もう護らなくていいんですね〜

ココちゃん
恋愛
平民出身と蔑まれつつも、聖女として10年間一人で護国の大結界を維持してきたジルヴァラは、学園の卒業式で、冤罪を理由に第一王子に婚約を破棄され、国外追放されてしまう。 護国の大結界は、聖女が結界の外に出た瞬間、消滅してしまうけれど、王子の新しい婚約者さんが次の聖女だっていうし大丈夫だよね。 がんばれ。 …テンプレ聖女モノです。

冤罪をかけられた上に婚約破棄されたので、こんな国出て行ってやります

真理亜
恋愛
「そうですか。では出て行きます」 婚約者である王太子のイーサンから謝罪を要求され、従わないなら国外追放だと脅された公爵令嬢のアイリスは、平然とこう言い放った。  そもそもが冤罪を着せられた上、婚約破棄までされた相手に敬意を表す必要など無いし、そんな王太子が治める国に未練などなかったからだ。  脅しが空振りに終わったイーサンは狼狽えるが、最早後の祭りだった。なんと娘可愛さに公爵自身もまた爵位を返上して国を出ると言い出したのだ。  王国のTOPに位置する公爵家が無くなるなどあってはならないことだ。イーサンは慌てて引き止めるがもう遅かった。

くだらない冤罪で投獄されたので呪うことにしました。

音爽(ネソウ)
恋愛
<良くある話ですが凄くバカで下品な話です。> 婚約者と友人に裏切られた、伯爵令嬢。 冤罪で投獄された恨みを晴らしましょう。 「ごめんなさい?私がかけた呪いはとけませんよ」

【完結】従姉妹と婚約者と叔父さんがグルになり私を当主の座から追放し婚約破棄されましたが密かに嬉しいのは内緒です!

ジャン・幸田
恋愛
 私マリーは伯爵当主の臨時代理をしていたけど、欲に駆られた叔父さんが、娘を使い婚約者を奪い婚約破棄と伯爵家からの追放を決行した!     でも私はそれでよかったのよ! なぜなら・・・家を守るよりも彼との愛を選んだから。

処理中です...