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温かいね⑵
しおりを挟む「大丈夫、大丈夫だよ。水野奈央。」
「あぁ、大丈夫だ。」
耳元から優しい低音ヴォイスが聞こえ、無意識のうちに震えていた身体がそっと包まれる。
「…クレマさん。」
「ナオ、俺はナオが大切で仕方がない。守られるだけじゃなくて一緒に戦いたいと頑張る姿も、ひた向きに努力する姿も、今日の自分を後回しにしてウーゴの尊厳を守ろうとするところも…容姿だけじゃない。全部が愛おしいんだ。」
「うん、うん…」
クレマさんが紡いでくれる言葉に、涙があふれる。
私がしてきたことを分かってくれる人がいる。頑張っていることを認めてくれる人がいる。それがどんなに報われることか…
「俺はナオの姿を見ると自分も頑張らないとって叱咤することが出来る。若いとき、ただただ自分の力を試したくて戦っただけで英雄と祭り上げられて、騎士団長にまでなってしまった。身体を動かすより、書類管理が多くなった今の立場がだんだんと煩わしくなってきていた。でも今は、騎士団にナオがいるから、頑張ろうと思える。」
クレマさん…クレマさんも葛藤があったんだ。
「ナオが悲しむと俺も悲しい。ナオが泣くと、俺も泣きたくなる。どうしようもなく胸が苦しくなる。だから、どうか一人で泣かないでくれ。俺がいるから。」
「うん…」
後ろを振り返り、クレマさんに抱き着く。
「あったかい…」
「本当は俺だけを見て貰いたいが…ナオ、俺以外もナオを思っている奴はいっぱいいる。特に騎士団の奴らはナオのことになると物騒だからな。」
空気を柔らかくしようと、ちょっと大げさに言うクレマさん。
「…ふふ、そっかぁ。」
ここには私を見てくれる人がいる。いきなり現れた私を信じて家族と思ってくれる人がいる。
今だけは下心のない、純粋な気持ちでクレマさんと抱き合っている。人の体温がこんなに落ち着くなんて、今まで知らなかった。
「やっぱりクレマさんの体温が落ち着くなぁ。ありがとう、クレマさん。」
「こちらこそ、ありがとうナオ。」
んふふ、こんな落ち込むのは私らしくないよね。私は私なんだから、誰に何と言われようと、筋肉、イケメンを楽しまないとね!
でも今は、今だけはこの腕の温もりを―――――
応援ありがとうございます!
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