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平団員(モブ)サイド
しおりを挟む今日は俺たちのエンジェルの学園入学の日。
団長も一緒に朝早くから入学式に行っている。2人がいない間にナオちゃんのお祝いをするために騎士団総出で準備中だ。料理や飾りつけから始まり、プレゼントまで。
普段男所帯のためそんなことしないからか、思いのほか時間がかかってしまう。
何とか時間までに終わらせ、二人を待つ。マイエンジェルはどんな顔をしてくれるだろうか、喜んでくれるだろうか…
数年前にいきなり一人でこの世界に来たナオちゃん。初めて俺たちに挨拶したときは団長の陰に隠れて、ちょっと人見知りをしていた。それでも俺たちを仲間として自分も一緒に戦いたいと言い、訓練を始めてくれた。今では剣術も体術も、魔法も全てにおいてレベルが高く、騎士団の中で実力をも確かにしていった努力も愛おしく、更に溺愛する奴が増えた。一度も弱音を吐いたことなく、任務でも臨機応変に対処するため子供には見えないほど。
最初は良く思っていなかった実力派の奴らも今ではもれなく全員ナオちゃんの虜だ。
毎日帰って来るとは言え、自分たちの手の届かない所へ行くことは心配で心配で仕方がない。実力はあるが自分んに対してやや、いや大分鈍感だから変な奴に捕まりそうで気が気でない。例えばあの優男の面を被った皇太子とか、知的を装ったムッツリ眼鏡とか…
とにかく危険が一杯なのだ。邪魔な虫は排除すべく、騎士団の力を合わせて学園生活に備えたプレゼントを用意している。
帰りが待ち遠しい…
それから間もなくして、馬車が詰所の前に止まる。頭にハテナを浮かべながら馬車から降りてくる姿は天から舞い降りた天使そのもの。それぞれがお迎えの挨拶を送り、食堂、もといパーティー会場へエスコートする。
主役の席に座ってもらい、副団長を無視した団長の乾杯音頭でパーティーの幕が開く。
用意したプレゼントに天使は涙を流す。その涙に込められた思いを俺たちが知ることはないが、多分俺たちが考えている以上にたくさんのことを抱えているだろう。感謝とかはよく言ってくれるけど、思っていることを話してくれることはないから…でもその後の笑顔は心からのものだと思うから、やっぱり俺たちは何も聞かずその笑顔をひたすらに守ることに努めよう。
それから団長からのプレゼントで完全にシリアスと化したパーティーは無事に出来上がった奴らがぶち壊してくれる。
酒に弱い奴らがつぶれていく中、天使の様子がおかしいことになんとなく気づき始める。ニコニコしているのはいつも通りなのだが、なんだか妖艶な…上気した頬に潤んだ瞳、笑っているが力の抜けたようなふにゃりとした笑顔は……ご馳走様です。
じゃなくて!誰だよ!天使に酒を渡した奴は!ナイスッ!いやいやいや、子どもの飲酒はダメ、ゼッタイ。天使の飲酒もダメ、ゼッタイ。俺たちの心臓、もとい理性がもちません。
「クレマさん、皆、本当に今までありがとうね。これからも迷惑かけると思うけど、よろしくお願いします…皆、大好きッ!」
そうして、最後の一撃をもろに食らった俺たちはノックアウト。
うん、俺たちもナオちゃんが大好きだ。でも、ちょっとお酒は控えようね~おじさん達の寿命が縮まるからね~
長生きしてナオちゃんと少しでも長くいたいからね~
あーもうッでも可愛いから許す。可愛いは正義だ。
あの後、K.Oされて使い物にならなくなった俺たちを見捨てて団長は天使を抱っこして帰って行った。
あぁ、マイエンジェル…今日も生きててくれてありがとう。
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