【完結】腐女子の私が美少年⁉

担任には裏がありそう

コツッコツッコツッ……

出入り口の方から静かに、足音だけを鳴らして中に入って来たのはキレイな男の人がセミロングほどの透き通った黄みがかった緑色の髪を揺らしている。いや、女性に見えなくもないけど、喉ぼとけがくっきりと出ているのだから男だろう。

「皆さん、初めまして。Sクラスの担当となりましたディンセント＝シャーライと申します。以後お見知りおきを。」

うっとりするほどの重低音ヴォイス。ボイスじゃなくてヴォイスね。その中には艶や色気も含まれており、女子生徒の目がハートマークになっているのは気のせいではないはず。

私はクレマさんの声の方が好みですねぇ。

「さて、もう一波乱あったように思えますがこの学園内では私的な魔法の使用は禁止されております。だからと言って剣や暴力での喧嘩は処罰対象になりますので悪しからず。」

何もないような顔してチクリと咎められたように感じる。というか、何かあったと分かってるなら止めに入って来てよね。やな感じ～ま、私はジルを守ることが最優先だから校則なんて二の次なんだけど。

私の気のせいかもしれないけど、ジルのことを敵視？しているように感じる。そう思っていると、教壇から視線を感じ、担任に目を向けると私のことをガン見していた。え、ジルじゃなくて私のことを目の敵にしてる感じ？ああら、やだ～てっきりジルかと思ったよ。

これからこの人が担任なんだけど、上手くやっていけるか心配だ。

「――――です。一通り学園のことについての説明は終わりましたが何か質問がある方はいませんか？」

ひたすらに話していた先生がそこで一息つく。

ヤバい、私何も聞いてなかったじゃん。さすがとしか言いようがない。ジルを守るために一緒に行動するのにある意味教えてもらうために行動するようなものだよね。

「質問がないようなら本日はこれで終わりです。皆さん気を付けて帰ってくださいね。」

先生がそう言うと、クラスのほとんどが一斉に立ち上がって
先生のところまで行き、囲む。囲み取材みたいな感じ。先生個人についての質問をし続けている。女の子だけかと思ったけど、男子生徒もいる。

その異様な光景にこの世界では普通なのかと思ったけど……

「あれは人気どころじゃないな。裏がありそうだね。」

ジルがぽつりと溢した言葉に普通じゃないことを悟る。
バルはと言うと、あの生徒の大群の中にいるのだ。
見つめていると、皆の目に違和感を感じる。光がないような…

「じゃあ、僕は先に帰るね。ジルも何かあったら危ないし一緒に帰ろう？」

バルを含めたクラスの子と先生のことは、また後日探るとして…今日はクレマさんが待ってくれてるから早く帰らないと！

そうして帰り支度をして1番乗りで教室を出た私たちはクレマさんが待っているはずの食堂を目指す。
そんな私たちの背中を意味深な視線で見ている人がいるとは気づきもしなかった。