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筋肉に会いたくて⑵
しおりを挟む「ナオ、帰っていたのか。」
その声とともに後ろからふわりと抱きしめられる感覚。私の肩に乗っている頭をサラリと撫でると、艶のある黒髪が靡く。
「クレマさん、ただいま。お仕事お疲れ様です。」
身体に回っていた腕の力が緩んだから、回れ右をしてクレマさんに抱き着く。すると、そのままギューッとして離してくれない。
それをウーゴさんは微笑ましそうに見てるし、ジーリオはちょっとウズウズしてる。ロマンさんはと思って目を向けると、ハンカチを噛んで恨めしそうにクレマさんの方を睨んでいる。どこぞの悪役令嬢だよ、悔しがり方がちょっと時代遅れだし。
「おかえり。もう家に帰ろうか。」
んーお仕事は大丈夫なんでしょうかねぇ。
パッとロマンさんの方を見ると鬼の形相でこちら、いやクレマさんを睨んでいる。絶対終わってないやつ。
「クレマさん、お仕事は大丈夫?」
「あぁ、大丈夫だ。帰ろう。」
そんな爽やかな顔で即答しなくても…いっそ清々しい。
「ストォォォォォォォォォォォップッ!!」
そんなクレマさんをロマンさんが見逃すわけもなく副団長が団長の首根っこを掴んで引きずっていく。
クレマさんがシュンと捨て猫の様なつぶらな瞳でこちらを見てくるが、仕事は仕事だ。
「ゔぅっ……僕、待ってるから早く終わらして来て?」
これが精いっぱいの譲渡だ。あんな顔で上目遣いで見つめられたら…私の心臓が耐えられない!
よし来たとばかりに反対にロマンさんを引きずる様に颯爽と去っていったクレマさんは数十分ほどで仕事を終わらせて戻って来た。いつもそれぐらいやる気を出したらいいのにね。
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