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しおりを挟む俺たちはさらにダンジョンを進んで行き、第二階層を歩いていた。
ティオは、順調にモンスターを倒して、すでにレベルアップもしていた。
だが、慣れない戦闘の連続でさすがに疲れも見えていた。
ダンジョンに入ったのも、剣を握ったのも初めてなのだ。無理もない。
当たり前だが、いくら強い武器を持っても、本人の体力や技量はすぐには追いついてこない。
俺が自身に“ゴミ強化”をかけたように、一気にステータスをあげてあげられたらいいのだが。
と、一瞬そう思うが、まぁでも急ぐ必要はない。
ゆっくり成長すればいい。時間はたっぷりあるのだから。
――そろそろ引き上げる頃かな。
と、そんなふうに考えていると、向こうからゴーレムが現れた。
――Dランクダンジョンにしては強力なモンスターだ。
ティオは、ゴーレムを見るなり、勢いよく突っ込んでいく。
「はぁぁ!」
だが、ティオの剣はゴーレムの防御力の前に弾かれてしまう。
さすがに、あれは剣の強さだけでは勝てない。
のけぞったティオに、ゴーレムの拳が飛んでくる。
――俺がすぐさま間に入って、そのままゴーレムを一刀両断する。
「あ、ありがとうございます! さすがご主人様……」
「そろそろ帰るか。疲れただろ」
俺が言うと、ティオは残念そうな顔をした。
まだ戦いたいらしい。
だが、気持ちはそう思っていても、明らかに体力は落ちていた。
「また明日来よう」
俺が言うと、ティオはしぶしぶと言う感じでうなづいた。
「はい、わかりました」
俺たちは、踵を返して、そのまま来た道を引き返していく。
「今日は夕飯、何にしようか。何か食べたいものあるか?」
俺は後ろのティオに聞く。
「……なんでもいいです……けど」
「けど?」
「パンケーキを食べれたら嬉しいです」
どうやら、ティオはそれがお気に入りらしい。
「わかった。じゃぁ、パンケーキが美味しいお店に行こう」
――そんなたわい無い会話をしながら帰路を歩く。
――――――――
――――
――だが。
突然の悪寒。
そして次の瞬間、振り返ると――
「――ッ!!!!」
ティオの首元にはナイフが突きつけられていた。
その持ち主は、髭を生やし、バンダナを額に巻いた男たち。
そしてその後ろにも数人の姿があり、皆獲物を構えている。
さらに振り返ると、反対側からも男たちが現れた。
ティオを人質に取られた上に囲まれた。
「……一体何の真似だ?」
俺が聞くと、男たちの代わりに、その後ろから現れた老人が口を開いた。
「ふひひ、あなたのマジック・ポケットを奪いにきただけですよ」
そう言う老人は――――あの奴隷商人だった。
「お前……」
ティオを無下に扱ったあの奴隷商人が、賊を率いて襲ってきたのだ
「さぁ、マジック・ポケットごと持ってるもん全部渡しな。そうじゃないと、この虫けらの首が飛ぶよ?」
ティオのHPはわずかしかない。
しかも、彼女を守っていた防具の魔力もほとんど尽きかけている。
やろうと思えば、ティオを殺すのはそう難しいことではないだろう。
――俺に選択肢は残されていなかった。
俺はポケットを取り出して、賊の方に投げる。
「ふひひ。こんな虫けらのため、バカなやつだ」
と、次の瞬間、後ろから盗賊が剣で斬りかかってきた。
俺は剣を抜く暇も与えられず、そのまま斬撃を受ける。
防具の魔力が衝撃を和らげるが、その勢いまでは防ぎきれず、全身に衝撃が響く。
「うっッ!」
壁に叩きつけられ、地面に転がり落ちる俺を見て、奴隷商人はゲラゲラと笑った。
「本当に……こんな虫けらのために、よくもまぁ……。やっぱり、外れスキルの所持者だけあるね。小汚い虫キメラと仲良くやるのがお似合いすぎて……。ほら、そっちも仲良く同じ目に合わせてやりな」
と、奴隷商人がそう言うと、男がティオの腹めがけて、蹴りを入れた。
「……うぐっ!!!」
呻くティオ。
それを見て、奴隷商人はますます笑う。
「ふひひ。ゴミ(・・)同士、一緒に仲良く苦しんで、最高じゃないか!」
――――だが。
その一言は、絶対に余計な一言だった。
「てめぇ…………」
俺は、立ち上がり奴隷商人を睨みつける。
「なんだ、どうした? いっちょまえに睨んじゃって。逆らったら、このゴミ(・・)虫ちゃんの首が飛ぶよ?」
――だから、その言葉が余計だって言ってんだ。
俺は――ティオの方を見て、叫んだ。
「――――“ゴミ強化”!!」
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