はずれスキル「ゴミ強化」で、ゴミ扱いされて追放された俺が鬼強化された。実家から帰ってきてほしいと言われたけどもう遅い。

アメカワ・リーチ

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「……ありがとうございます」

 ご飯を食べ終わったティオは、俺に頭を下げた。

「もっと食べなくて大丈夫か? 遠慮しなくていいぞ」

 俺が聞くと、ティオは首を横に振った。
 遠慮している雰囲気はなかったので、店員に銅貨を渡してレストランを出る。

 さて、次にやるべきは――

「あの」

 と、ティオが話しかけてくる。

「なんだ?」

「レイ様は冒険者なんですよね」

 ティオは、俺が腰に下げている剣を見てそう思ったのだろう。

「ああ、そうだな。と言っても、まだ冒険者になって数日だが」

「――私にも戦わせてくれませんか」

 ティオはいきなりそう言ってきた。
 それは全く考えていなかったので驚く。

「……戦えるのか?」

 俺が聞くと、ティオはぶんぶんと首を振る。

「でも、これからレベルを上げて、お役に立てるように頑張ります……! ご主人様のお役に立ちたいんです」

「そうか……」

 正直、戦闘経験がないのであれば、すぐに高ランクのダンジョンに行くと言うのは難しい。

 だが、幸い今の俺には時間もお金もある。
 ゆっくり成長レベリングに付き合ってあげるだけの余裕はあるのだ。

 流石にいつまでも一人で冒険者をやっているわけにはいかないし、ちょうどいい機会だ。
 パーティーメンバーになってくれると言うのなら、願ったり叶ったりだ。

「よし、じゃぁまずは武器屋に行くか」

「は、はい!」

 †

 俺は、先日剣を買い取ってもらった武器屋に再び足を運んだ。

「おお、レイの兄(あん)ちゃん!」

 俺の顔を見るなり、店主のおじさんは目を輝かせて俺の名前を呼んだ。

「兄ちゃんの売ってくれた剣、磨いて売りに出したんだ。そしたら、すぐ噂になって、高値であっという間に売れたんだ。おかげでぼろ儲けだ!」

「そうですか。それはよかったです」

「是非また売ってくれ。今度はもっと金出すから!」

「ええ、いつでも。ただ、今日は買いに来たんですが」

「そうか。何をご所望だ?」

 俺は後ろにいたティオに視線を向ける。

「この子に武器と防具を。剣はなるべく軽いやつで、防具は鎧とかじゃなくて、魔法服がいいですね」

「虫のキメラか。確かになるべく軽い方がいいな。予算はいくらだ?」

 おじさんは、角や茶色の肌を持つティオを見ても、特に何も思わないようだ。
 俺は、その反応を見て、これからもこの店は贔屓にしようと思った。

「いくらでも出すので、最高にいいものを頼みます」

「おう。じゃぁ今店にあるので一番のを出すぜ」

 そう言って、おじさんは店の奥から剣と服を引っ張って来た。

「剣は兄ちゃんが売ってくれた剣を加工したやつだ。たまたまだが、これだけサイズが小さいからまだ売れてなかったんだ。服は、王都の魔術師が魔術防護を施した一品だ。周囲の魔力を吸収して防御の膜を張るんだ。物理攻撃でも、魔法攻撃でもある程度なら弾いてくれる優れものだぜ」

「じゃぁ、それ買います。いくらですか?」

「流石に最高級のアイテムだ。値段は張るぞ。剣が20万ゴル、服が40万ゴル、合わせて60万ゴルだ」

「ろ、60万ゴル!?」

 値段を聞いてティオが飛び跳ねる。
 あまり比べても仕方がないが、ティオを買った時の値段が50万ゴルだったことを考えるとかなり高い。
 だが、

「わかった。60万ゴルですね」

 俺はすぐにマジックポケットから金貨を取り出す。

「まいど」

 俺は剣と服を受け取り、そのままティオに手渡す。

「ご、ご主人さま。私にそんな高価なものを……」

 確かに、60万ゴルは大金だ。ちょっと前の俺だったら、目が眩んでいただろう。
 ティオが驚くのも無理はない。

「別にいいさ。武器が強ければ、レベリングもスムーズだし、何より安全だ。それに代えられるものはない」

 俺が言うと、ティオは「ご主人さま……ありがとうございます。絶対にこの武具の分を稼いで返します」

「はは、それは頼もしいな」

 買った自分で言うのもなんだが、60万ゴルをダンジョンで稼ぐには、相当なモンスターを倒さないといけないが、まぁ本当に返してもらおうなどとは思っていないので別にいいか。

「じゃぁ、早速ダンジョンに行ってみようか」
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