はずれスキル「ゴミ強化」で、ゴミ扱いされて追放された俺が鬼強化された。実家から帰ってきてほしいと言われたけどもう遅い。

アメカワ・リーチ

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 ――その頃、レノックス家では。


 レイの異母弟であるマルコムと、父親が話していた。

 レイが追放された今、マルコムがレノックス公爵家の跡取りとなっている。

「マルコム。お前は、必ずや大勇者になるのだ。そのために、まずは冒険者として名をはせる必要がある」

 父であるレノックス公爵が、息子に言い聞かせる。

「はい、父上」

「とはいえ、お前はまだまだ経験が浅い。まずは、街の近くにあるダンジョンで修行をしろ。“神聖剣”の力を引き出せるようにするのだ」

「わかりました、父上」

 †

 マルコムは、父の命を受けて、街のギルドへと向かった。
 もちろん、黒エルフの奴隷、アラベラも一緒である。

「おい、今あるダンジョンで一番難しいダンジョンを紹介してくれ」

 ギルドの建物の中に入るなり、受付に上から目線で頼むマルコム。

 それに、お姉さんは少しムッとした表情を浮かべたが、しかし努めて冷静に対応する。

「大変失礼ですが、新規の冒険者はまずはステータスのチェックがございますが、よろしいですか?」

 お姉さんがそう聞くと、マルコムは胸を張って「もちろんだとも」と答えた。
 超レアスキルである“神聖剣”を見せびらかすいいチャンスだと思ったのだ。

 実際“神聖剣”のスキルによって、マルコムのステータスは3倍に強化されていた。

「マルコム様はユニークスキル“神聖剣”をお持ちなのよ。その辺の冒険者とはわけが違うの」

 アラベラが横から自慢げに語る。

「へぇ、それはすごいですね……」

 受付のお姉さんは、驚いて見せた。ただ、その反応はマルコムが期待したそれに比べれば、かなり控えめだった。

 ――“神聖剣”は、超絶レアスキルだぞ?
 ボク以上の、ユニークスキルを持ったやつなんてそうそういるはずがない。
 とマルコムは内心でそう抗議する。
 
「それでは失礼して――」

 お姉さんは、鑑定の力でマルコムのステータスを見る。

「なるほど、ほとんどのステータスが60超えですか。ええ、CからBランクのダンジョンに行くには十分でしょう」

 と、受付のお姉さんは特に驚くこともなく言った。
 それにマルコムはムッとして聞く。

「――なんだ、それだけか? 18になったばかりで、ボクほど強力なステータスを持った男はそうそういないだろ?」

 だが、受付のお姉さんは「いや、まぁ確かに同い年の冒険者よりは高いですが……」と口ごもる。

「ですが、なんだよ」

 マルコムは聞き返す。
 お姉さんは、どうやらマルコムは言葉を濁しても察してはくれないと理解して、その事実をハッキリと告げることにした。

「昨日、同い年でステータス1000越えの冒険者が来たものでして」

「1000!? そんなばけものがいるのか!?」

「でも、あのかたは特別だと思いますから。あなた様も十分にお強いと思いますよ」

 とお姉さんは、とってつけたように言う。

 マルコムは内心で歯ぎしりした。
 同じ年齢で俺の何十倍以上のステータスを持った奴がいるのか。

 ……いや、だが、まだボクには伸び代がある。
 まだボクは神託を受けたばかりなのだ、俺より強い人間がいるのは当たり前だ。

「……それでは、早速ですが、今攻略可能なダンジョンでいうと、ボス討伐済みのBランクダンジョンでなどいかがでしょうか」

「Bランクか。まぁいいだろう。肩慣らしにちょうどいい」

「二階層の奥に、満月の日にだけ開く扉があるそうです。そこについても攻略を済ませてください。ボスを倒した方によると、全体的にあまりモンスターは出ないそうです。なので、1日で片付くかと」

「わかった。1日と言わず半日で片付けてやる」

 マルコムは自分の力を証明するために、ダンジョンへと繰り出すのだった。
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