5 / 24
5.
しおりを挟む翌朝、改めて村長がやってきてお礼を言ってくれた。
そして昼から村人全員を集めて宴を催してくれる。
子供から大人まで、順番に俺にお礼を言いきてくれた。
「本当に、レイ様のおかげでこの村は救われました。この事実は、永遠に語り継いで参ります」
俺は少し恐縮しながら「いえ、そんな……」と頭を下げる。
「本当は、金品でお礼をしたいところですが、残念ながらこの村は貧しく、大したものは用意できません。本当に申し訳ありません」
そう言って村長はさらに深々と頭を下げてきた。
「いえいえ、そんな。全然いいんですよ」
「たったこれだけしかできず、心苦しいばかりです」
「寝床を貸してくれて、ご飯まで用意していただいて、本当に助かりました」
貧しい村では、この宴だって決して楽に行われているわけではないだろう。それでも、そんな表情一つ見せず、俺を歓待してくれることがありがたかった。
だから、逆に何か力になれればいいのだが……
「……ところで、村長。村に何か壊れたものとかありませんか? それをちょっと貸して欲しいのですが」
俺は村長にそう尋ねた。
「壊れた……ものですか?」
「ええ、ちょっと“ゴミの強化”が得意技でして……。もしかしたら直せるかなと思いまして」
俺は、神から与えられたユニークスキル“ゴミ強化”の力を、改めて試してみたくなったのだ。
おそらく、俺の考えが間違いでなければ、ゴミ強化のスキルにゴミ強化のステータス強化がかかって、ゴミのステータスを100倍にできる力になっているはずだ。
ただの凡人だった俺が、いきなり高レベルモンスターを瞬殺できたのだから、同じようにただのゴミでも、普通のアイテムくらいにはなるかもしれない。
「それでしたら、錆びたくわなどでしょうか……」
そう言うと、村長は若い者に指示をして、錆びたくわを持ってこさせた。
一面茶色に錆びついて、刃はかけており、到底使えたものではないだろう。確かに、まごうことなきゴミだ。
それを俺は受け取って、スキルを使ってみる。
「――“ゴミ強化”」
すると、くわが光り輝く。
――見た目は、さほど変わらない。
だが。
「ちょっと、あの辺でこれを使って見てもらえますか?」
俺は錆びたクワを持って来てくれた若者に、そうお願いした。彼は素直に少し離れたところに行き、くわを地面に向かって軽く突き刺した。
すると、
――ドカンッ!!
爆音がして、地面に穴が空いた。
「こ、これは!?」
村人たちが驚きの声をあげる。
スキルを使った張本人である俺も驚いた。
――クワが、まるで魔道具のように強力なアイテムに変わってしまったようだ。
やはり、ゴミであれば、ステータスを100倍に強化できるようだ。
「い、一体、何をされたんですか。あの者は魔法など使えませんが……」
村長が腰を抜かしたという声で聞いてきた。
「いや……まぁただのステータス強化……ですかね? ……多分これだと畑は耕せないでしょうから、モンスターに襲われたら使ってみてください」
あまりに強力になりすぎて、武器になってしまった。
だがまぁ、モンスターを撃退できると思えば、結果オーライだろう。
「――ありがとうございます。これは村の宝にいたします」
……ゴミが宝になってしまった。
そして俺は気がつく。
もしかして、“ゴミ強化”って結構使い道あるのか?
1
お気に入りに追加
1,395
あなたにおすすめの小説

良家で才能溢れる新人が加入するので、お前は要らないと追放された後、偶然お金を落とした穴が実はガチャで全財産突っ込んだら最強になりました
ぽいづん
ファンタジー
ウェブ・ステイは剣士としてパーティに加入しそこそこ活躍する日々を過ごしていた。
そんなある日、パーティリーダーからいい話と悪い話があると言われ、いい話は新メンバー、剣士ワット・ファフナーの加入。悪い話は……ウェブ・ステイの追放だった……
失意のウェブは気がつくと街外れをフラフラと歩き、石に躓いて転んだ。その拍子にポケットの中の銅貨1枚がコロコロと転がり、小さな穴に落ちていった。
その時、彼の目の前に銅貨3枚でガチャが引けます。という文字が現れたのだった。
※小説家になろうにも投稿しています。

治療院の聖者様 ~パーティーを追放されたけど、俺は治療院の仕事で忙しいので今さら戻ってこいと言われてももう遅いです~
大山 たろう
ファンタジー
「ロード、君はこのパーティーに相応しくない」
唐突に主人公:ロードはパーティーを追放された。
そして生計を立てるために、ロードは治療院で働くことになった。
「なんで無詠唱でそれだけの回復ができるの!」
「これぐらいできないと怒鳴られましたから......」
一方、ロードが追放されたパーティーは、だんだんと崩壊していくのだった。
これは、一人の少年が幸せを送り、幸せを探す話である。
※小説家になろう様でも連載しております。
2021/02/12日、完結しました。

無能なので辞めさせていただきます!
サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。
マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。
えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって?
残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、
無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって?
はいはいわかりました。
辞めますよ。
退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。
自分無能なんで、なんにもわかりませんから。
カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。

公国の後継者として有望視されていたが無能者と烙印を押され、追放されたが、とんでもない隠れスキルで成り上がっていく。公国に戻る?いやだね!
秋田ノ介
ファンタジー
主人公のロスティは公国家の次男として生まれ、品行方正、学問や剣術が優秀で、非の打ち所がなく、後継者となることを有望視されていた。
『スキル無し』……それによりロスティは無能者としての烙印を押され、後継者どころか公国から追放されることとなった。ロスティはなんとかなけなしの金でスキルを買うのだが、ゴミスキルと呼ばれるものだった。何の役にも立たないスキルだったが、ロスティのとんでもない隠れスキルでゴミスキルが成長し、レアスキル級に大化けしてしまう。
ロスティは次々とスキルを替えては成長させ、より凄いスキルを手にしていき、徐々に成り上がっていく。一方、ロスティを追放した公国は衰退を始めた。成り上がったロスティを呼び戻そうとするが……絶対にお断りだ!!!!
小説家になろうにも掲載しています。

家族に無能と追放された冒険者、実は街に出たら【万能チート】すぎた、理由は家族がチート集団だったから
ハーーナ殿下
ファンタジー
冒険者を夢見る少年ハリトは、幼い時から『無能』と言われながら厳しい家族に鍛えられてきた。無能な自分は、このままではダメになってしまう。一人前の冒険者なるために、思い切って家出。辺境の都市国家に向かう。
だが少年は自覚していなかった。家族は【天才魔道具士】の父、【聖女】の母、【剣聖】の姉、【大魔導士】の兄、【元勇者】の祖父、【元魔王】の祖母で、自分が彼らの万能の才能を受け継いでいたことを。
これは自分が無能だと勘違いしていた少年が、滅亡寸前の小国を冒険者として助け、今までの努力が実り、市民や冒険者仲間、騎士、大商人や貴族、王女たちに認められ、大活躍していく逆転劇である。

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。
だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった
何故なら、彼は『転生者』だから…
今度は違う切り口からのアプローチ。
追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。
こうご期待。

義妹ばかりを溺愛して何もかも奪ったので縁を切らせていただきます。今さら寄生なんて許しません!
ユウ
恋愛
10歳の頃から伯爵家の嫁になるべく厳しい花嫁修業を受け。
貴族院を卒業して伯爵夫人になるべく努力をしていたアリアだったが事あるごと実娘と比べられて来た。
実の娘に勝る者はないと、嫌味を言われ。
嫁でありながら使用人のような扱いに苦しみながらも嫁として口答えをすることなく耐えて来たが限界を感じていた最中、義妹が出戻って来た。
そして告げられたのは。
「娘が帰って来るからでていってくれないかしら」
理不尽な言葉を告げられ精神的なショックを受けながらも泣く泣く家を出ることになった。
…はずだったが。
「やった!自由だ!」
夫や舅は申し訳ない顔をしていたけど、正直我儘放題の姑に我儘で自分を見下してくる義妹と縁を切りたかったので同居解消を喜んでいた。
これで解放されると心の中で両手を上げて喜んだのだが…
これまで尽くして来た嫁を放り出した姑を世間は良しとせず。
生活費の負担をしていたのは息子夫婦で使用人を雇う事もできず生活が困窮するのだった。
縁を切ったはずが…
「生活費を負担してちょうだい」
「可愛い妹の為でしょ?」
手のひらを返すのだった。

お荷物認定を受けてSSS級PTを追放されました。でも実は俺がいたからSSS級になれていたようです。
幌須 慶治
ファンタジー
S級冒険者PT『疾風の英雄』
電光石火の攻撃で凶悪なモンスターを次々討伐して瞬く間に最上級ランクまで上がった冒険者の夢を体現するPTである。
龍狩りの一閃ゲラートを筆頭に極炎のバーバラ、岩盤砕きガイル、地竜射抜くローラの4人の圧倒的な火力を以って凶悪モンスターを次々と打ち倒していく姿は冒険者どころか庶民の憧れを一身に集めていた。
そんな中で俺、ロイドはただの盾持ち兼荷物運びとして見られている。
盾持ちなのだからと他の4人が動く前に現地で相手の注意を引き、模擬戦の時は2対1での攻撃を受ける。
当然地味な役割なのだから居ても居なくても気にも留められずに居ないものとして扱われる。
今日もそうして地竜を討伐して、俺は1人後処理をしてからギルドに戻る。
ようやく帰り着いた頃には日も沈み酒場で祝杯を挙げる仲間たちに報酬を私に近づいた時にそれは起こる。
ニヤついた目をしたゲラートが言い放つ
「ロイド、お前役にたたなすぎるからクビな!」
全員の目と口が弧を描いたのが見えた。
一応毎日更新目指して、15話位で終わる予定です。
作品紹介に出てる人物、主人公以外重要じゃないのはご愛嬌()
15話で終わる気がしないので終わるまで延長します、脱線多くてごめんなさい 2020/7/26
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる