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8.フェイの力
しおりを挟むなりゆきで村の「主人」になったフェイ。
当然、村は歓迎ムードだったが、しかしそれを祝うような余裕はなかった。
ハッキリ言って、村の食糧事情はかなり厳しいものがあった。
なにせ、ここは不毛の大地。
作物はなかなか育たず、わずかな小動物を狩って暮らすのが精一杯だった。
「まずは当面の食事をなんとかしないとですね」
フェイがそう言うと、村長は深くうなづく。
フェイの装置のおかげで安定して水を手に入れることができるようになったが、それだけでは生きてはいけない。
まずは食料を安定的に手に入れられるようにしなければならない。
――だが、フェイには解決策がいくつかあった。
「とりあえず、当面はお魚でいかがですか?」
フェイが言うと、村人たちは半信半疑で問い返してくる。
「魚を食べられるんですか」
「今日の夕飯には間に合うと思いますよ」
そう言って、フェイは地面に手のひらをついた。
「“マド・クリード”!」
土を操る精霊術で、再びゴーレムを作る。
「こ、これは!」
そして、おなじみの機械語を埋め込むと、ゴーレムたちはひとりでに歩き出した。
フェイは同じ作業を繰り返して、20体ほどのゴーレムを作り出す。
「ゴーレムたちに川まで食料を取りに行かせます」
フェイが言うと、村人たちは目を輝かせた。
「これなら安全だ!」
「しかし、すげぇ! こんなにたくさん使い魔を作るなんて!」
「20人で釣れば、魚なんてすぐに釣れるぜ!」
だが、フェイの狙いは魚を取りに行くだけではなかった。
「ちなみに、ゴーレムには帰りに川の周辺から土を持って帰ってきてもらいます。いい肥料になると思います」
「おお! 今まで川まで行くのが危険で、土を持って帰ってくるなんてとてもじゃねぇけどできなかったんだ!」
喜びと安堵の表情を浮かべる村人たち。
これで当面の食料事情は改善するだろう。
「ところで皆さん、ゴーレムには皆さんも自由に命令を下せます」
そう言うと、村長は驚く。
「我々が? しかし使い魔は機械語がわからないと動かせないのでは?」
村長の知識は正しかった。
しかし、フェイの周りではそうとも限らない。
フェイはもう一体ゴーレムを作り出す。
そして村人の一人に命令を試してみてと促した。
村人は、半信半疑のままゴーレムに命令を下す。
「地面を掘ってくれ」
――すると、ゴーレムは村人の言葉に応じて、実際に地面を掘り出した。
「す、すげぇ!!!」
村人は驚く。
普通、使い魔を動かすと言うのは、機械語を学んだものにしかできないことだ。
それが、なんの変哲もない彼にできてしまったのだから、驚くのも当然だった。
「簡単な労働なら、ゴーレムができますから、何かさせたい作業があれば遠慮なく使ってください。魔法石がないので、僕の魔力を分け与えるしかないので、無限に作れる訳ではありませんが」
「おお! 生活が楽になるぞ!!」
「さすが主人様だ!!」
村人の喜ぶ顔を見て、フェイは今までにないやりがいを感じた。
王宮でも人のためにいろいろなものを作ってきたが、しかし感謝されるようなことはほとんどなかった。
それが当たり前のものと受け取られていたからだ。
だから、こうやって喜ぶ人の顔が直に見えるのは本当にやりがいになった。
――王宮を追い出されて正解だったな。
フェイは心の底からそう実感したのだった。
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