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しおりを挟むすでに踏破済みのダンジョンは、モンスターが少ないので、俺たちはどんどん先に進むことができた。
それに、俺の索敵スキルで、あまり経験値が得られない<コスパの悪い>相手を避けつつ進めるのも大きく、俺たちはあっという間に最下層に着く。
その間に、既にリリィのレベルは40に達していた。
単独でも一人前の冒険者だ。
「あ、ここ行き止まりです!」
リリィは俺たちが歩いて言っている先を指差して言った。
確かに、見かけ上、この先は壁になっていて進めないように見える。
だが、実際には違う。
「――リリィ、壁を“爆炎斬”で斬ってくれるか?」
俺が言うと、リリィは驚いて聞き返してくる。
「ダンジョンの壁って斬れるんですか?」
「普通は斬れない。でもここは特別だ」
「――なるほど」
不思議そうな表情を浮かべながらも、リリィは剣を抜いて、壁に向かって振りかぶる。
「“爆炎斬”!」
炎を纏った剣が壁にぶち当たる――と思いきや、実際にはそうはならなかった。
剣は空振りして、リリィは思わず体勢を崩しかける。
だが、その代わりに――斬った後――まるで紙を破ったように、壁がペラりと剥がれ落ちたのだ。
「こ、これは!?」
「隠し扉だ。炎系の斬撃で開くようになってる」
「す、すごい! よく見抜きましたね!!」
「実は前来た時に発見してたんだが、その時はボス攻略が優先だったからな。よかった、まだ誰も気が付いてなかったみたいで」
俺は剥がれた壁の先へと入っていく。
すると、中は小部屋になっていて、奥に宝箱が鎮座していた。
「あ、あれ!!」
「ああ、宝だな」
念のため、鑑定スキルで安全を確認する。
「よし、罠はないな」
俺は宝箱をゆっくり開ける。
中から出て来たのは銀色の指輪だった。
少しくすんだ銀色で、なんとも重厚感がある。
すぐに鑑定でその正体を調べる。
「これは……<加護の指輪>だ」
「加護の指輪、ですか? 何かレアアイテムですか?」
「ああ……。S級のな。一度だけ即死級の攻撃を無効にできる」
「え、それはすごい!!」
まさか、Aランクダンジョンに、こんなお宝が眠っているとは。
「これで、もっと安全に冒険できるな」
俺はそのまま指輪をリリィに手渡す。
「早速つけておいてくれ」
「え? 私が持ってていいんですか?」
「当たり前だ。前線に立つのはお前なんだから」
「でも、高いんですよね?」
「値段なんてどうでもいいさ。一番使う人が持っててくれ」
「あ、ありがとうございます」
と、リリィは俺の手から指輪を受け取り、大事そうに胸にしまう。
「……へへ。指輪……」
指輪が手に入ったのが、相当嬉しそうな様子だった。
やはりそこは女の子らしい、と言うことか。
まぁ、喜んでくれたのなら何よりだ。
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更新おそない?面白いからいいけど笑頑張れ!
派遣ではなく出向ではありませんか?
おもしろいけど5話で気になったことが。
「ディススペル」←これ「ディスペル」では?まあこの作品オリジナルかもしれないけど
あと「私の呪いはAランクの魔法使いでも解けなかったんです…」
解いた後「凄い!Sランクの魔法使いでも解けなかったのに!」←え?さっきよりグレードアップしとるやん…