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29.公爵の暗躍
しおりを挟む「リートがドラゴンと契約しただと!!」
自宅に帰宅し、事の顛末を報告したカイトだったが、待っていたのは父の激昂だった。
「申し訳ありません……」
ビクつきながら謝るカイト。
「ええい……無能が。私は一度で選ばれたというのに……」
「本当に申し訳ありません……」
「……しかし、リートのことだ、どうせ大した事ないドラゴンに選ばれたんだろう。逆に言えばお前にはあの“青の卵”に選ばれる可能性も残っていると言うわけだ」
「……“青の卵”というと、もしかして700年生まれなかったという……?」
カイトが聞き返すと、父はハッとして聞き返す。
「まさかとは思うが……あやつが“青の卵”に選ばれたのか?」
「あの……父上……恐れながら」
自分さえ契約できなかった伝説の竜に、勘当した息子が選ばれたと知って、ウェルズリー公爵はさらに憤った。
拳を壁に叩きつけて怒りを露わにする。
「おのれ……!!」
もはやカイトは謝ることさえできなかった。
「……ええい。もういい。……大丈夫、問題ない……」
公爵は自分に言い聞かせるように言った。
「安心しろ、我々には東方騎士団長という後ろ盾がある」
それが公爵の強みだった。
現在の東方騎士団長は、ウェルズリー公爵の後任で、ほとんど子分のような存在だった。
公爵が騎士団長に頼めば、大抵のことはなんとかなるのだ。
「とにかく無理やりにでも第七位階まで出世させてやる」
そう言って、公爵は壁にかけてあったマジックミラーの前に立った。
遠距離で会話をするためのアイテムである。高価なものだが、公爵の財力を持ってすれば簡単に入手できる。
「――東方騎士団の団長室に繋げ!」
公爵が鏡に命令すると、少ししてから鏡に中年男性が写る。
現職の東方騎士団長だ。
「ウェルズリー公爵! お元気ですか」
「――ああ。今日はお前に頼みごとがある」
「なんでもお申し付けください」
とても騎士の頂点にまで上り詰めた男とは思えない腰の低さ。
騎士団長が、ウェルズリー公爵に大きな恩があるという事を如実に表していた。
「うちのカイトを第七位階まで出世させて欲しいのだ。できるか?」
聞くと、団長は「もちろんでございます」と頷く。
「さすが心強いな」
「タイミングがよかったです。実はカミラ王女から、アーガイル公爵のご子息を出世させてやって欲しいという依頼を受けていたんです。そのために、東方騎士団で“エース選抜”を行う予定でした。優秀な若者を早くから幹部候補として育てるための臨時昇進試験、という建てつけです。もちろんアーガイルのための試験でしたが、そこにカイト君もねじこめます」
「すばらしいな。これで今年の小隊長試験も受けられる」
小隊長は、第六位階(シックス)の者が務める役職だ。
受験するには、当然ながら第七位階の地位が必要だ。
ウェルズリー公爵は一安心の表情を浮かべる。
「それと……もう一つお願いがある。こっちはちょっと“黒い”んだが」
「なんなりと」
「痛めつけて欲しい男がいるのだ」
「それはどなたですか?」
騎士団長の問いかけに、ウェルズリー公爵は冷徹な言葉で答える。
「――リートだ」
その言葉を聞いて、さすがの騎士団長も動揺した。
「……ご子息を……?」
だが、公爵は冷たく言い返す。
「あいつはもう息子ではない。それどころか一族の恥さらしだ。目障りだ。手足の一本でも切り落として二度と剣を握れないようにしてくれ。最悪……殺しても構わん」
これまで公爵の命令で汚い仕事を多くしてきた東方騎士団長だったが、さすがに実の息子を半殺しにしろという命令には一瞬ためらった。
だが、公爵の目を見て、彼が本気だと知ると、頷くしかなかった。
「……ちょうどいい話がいます。ご子息を死ぬほど恨んでいる男がいるのです。彼はご子息に復讐するためなら“狂化”しても構わないと……」
その話を聞くと、公爵は「よし」と頷いた。
「頼んだぞ、団長」
「――承知致しました」
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