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第四話 六万の侵略者
1.
しおりを挟む「大将! よくぞおいでなすった!」
――アルザス、ライル塩湖の湖畔。
すっかり、この国の中心地となったこの場所は、今や多国籍な場所に発展していた。
アルザスの民に加えて、ラセックスの駐屯軍、そして今ではシフ人の元兵士たちもそこに加わっている。
かつて兵糧を運んでいたものたちが、今は袋いっぱいに詰められた塩を運び出している。
今日は、塩湖にシフ軍団の将軍ベッテルハイム大将が、久しぶりに部下たちの元にやってきたのである。
アルザスの軍門にベッテルハイムの軍団が加わってから1ヶ月。
その間、ベッテルハイムは、首都アルザスでの仕事に追われていた。
部下たちの代表として、シフの兵士たちがアルザスの国民として生きていけるように、各種の準備を進めていたのである。
それもひと段落し、ベッテルハイムはようやく部下たちと過ごすことができるようになった。
「どうだ、仕事は」
ベッテルハイムが部下たちに聞くと、皆意気揚々と返事をする。
「仕事も、食べ物もあって、そりゃ幸せっすよ!」
「アルザスは、故郷に似てて、森の中より快適です!」
部下たちの声を聞いて、ベッテルハイムは、自身の判断が間違っていなかったと喜ぶ。
「それもこれも、あの軍師様のおかげだ」
ベッテルハイムは、自分が命を預けると決意した軍師の名前を口にする。
この1ヶ月、キバとは国防のための議論を重ねたが、彼の戦略家としての手腕には心底驚かされた。
キバはまだ少年だが、七王国のどの宿将をも凌駕する力を持っていた。
「塩を運ぶのに勤しむのはもちろん大事だが、訓練も怠るなよ。戦は絶対にくるからな」
「わかってます、大将」
キバから大陸の情勢を聞き、近々の戦争が避けられないことをベッテルハイムは確信していた。
それゆえ、今日から部下を再び鍛え直し、戦に備えるつもりだった。
――だが、世界は考えているよりもはるかに早いスピードで動きいていた。
「……べ、ベッテルハイム大将!」
突然、ベッテルハイムの元に、アルザスの役人が駆け寄ってきた。
「どうした?」
「キバ様が、あちらでお呼びです! 急ぎ、将軍と話したいと」
「何事だ?」
キバとはつい昨日別れたばかり。
昨日の今日で、呼び出されるとは、ただ事ではない。
――そして、役人の口から、その事情が明かされたとき、これまで死地をなんどもくぐり抜けてきたベッテルハイムも、さすがに驚かずに入られなかった。
「――ノーザンアングルとジュートの同盟が、攻めてきます。その数――六万!」
†
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