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第2章:異世界の人々との出会い

第89話:ゴーレム作り6

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いきなり目が光り出したので驚いたが、目があるだけで怖さがいくらか和らいだようにも思われる。
もっとも、赤く輝く目を持つゴーレムは、のっぺらぼう時の不気味さは消えたが、単純に見た目が厳つくて怖い。

取り付けた魔石は無事にゴーレムの一部となった。
魔石が灯すことのできる色は、赤色、青色と紫色の三色であった。
そしてそれらを、ゴーレムの意思によって任意にその色を変えることができるようだ。
変えられるのは、色の濃さや輝きの強さ、そして点滅させることも消すこともできるようであった。


目の色を変えられることを確認した後、ゴーレムと確認しながら、意思表示の方法を取り決めた。
ゴーレムが肯定の意思表示をしたいときは目の色を青色に。否定の意思表示をしたいときには紫色に変えることとした。

通常時は赤色だ。
これは、ゴーレムが意図的に目の色を変えようとしない場合には、赤色が自動的に灯るらしいからである。
その他にも、目の色を点滅させたり、ときには消したりと、表情ではなく目の色でこちらと意思疎通を図ろうとしてくれている。

私としては、「怖さを和らげたい」との意図で、ゴーレムに目の代わりとなる魔石を取り付けたが、思わぬ副産物として、意思疎通が容易になった。
目の色を変える以外の効果は見られないようだが、肯定の意思表示をするために頷かせたり、否定の意思表示をするためのジャスチャーをさせたりする必要がなくなったことだけでも、大きな収穫であろう。


 ♢ ♢ ♢


ゴーレムに目を取り付け、思わぬ意思疎通手段を得られたところで、他の箇所の改造へ着手する。
とりあえず、私たちの作業を手伝ってもらうことを想定しているので“手”を改良しておく。
現状は2つに分かれ、物を掴むことは可能になっている。
しかし、細かい作業をすることができないのはもちろん、両手で何かを持ち上げる、といった動作もやりにくい形になっている。
そこで、とりあえず私たちと同じように、5本の指の手に改良し、作業を行えるようにしようと思う。


形が決まれば後は簡単だ。
通常よりも多く魔力を消費するとはいえ、私の魔力量や魔素から魔力への変換量は、かなり多いので問題にはならない。
ゴーレムの両手を、それぞれ人間の形と同じような形へと変化させ、魔法陣を使用することで、改良は簡単に完了した。


ゴーレムに確認してもらったところ、5本の指を自由に動かし、物を掴んだり、引っ張ったりと、人間にできる動きをおおよそ行うことができるようになっていた。


 ♢ ♢ ♢


とりあえずハード面でのゴーレムの改良は終わった。
次はソフト面だ。つまりゴーレムに基本的な動き以外の動きを教え、何らかの仕事を行える能力を身につけさせる必要がある。

このゴーレムに何の仕事をさせるかは少し悩んだ。
まあ、レーベルの部下的な位置付けで、家事などの手伝いをしてもらうのが、最初に作ったゴーレムの行き先としては無難だと思われる。


というわけで、レーベルに預けることにした。
レーベルは、最初に魔石に魔力を込めるのに苦労していた段階でアドバイスをもらって以降は、ゴーレム作りには関わっていない。
そのため完成したゴーレムを見て、かなり驚いていた。
なんでも、荒削りだが、このゴーレムに用いられている各部品や、それぞれの結合具合は、見たこと無いほどの高品質らしい。
レーベルのお墨付きをもらえたので、安心である。


レーベルには普段の身の回りの世話を任せている。
それに加えて、定期的に町へ行ってもらっている。
バイズ辺境伯に頼まれた軍馬の回収と提供なんかも任せていた。
最近では、食料庫や宝物庫が溢れ気味であったので、入手先を公表しないことを条件に、ファングラヴィットやフォレストタイガーの毛皮や牙、爪なんかを売ることもしていた。
彼らにとっては、数十年に一度出回るかどうかという貴重な素材ばかりらしく、外からは見えないように加工し、装備なんかに使うらしい。


私は暇な一方で、レーベルに任せている仕事が多すぎることは問題だと感じており、分担しようと考えてはいた。
しかし家事を私たちがやると、如実にそのクオリティが数ランク落ちるので、代わることも考えものだった。
結局、私が町に行く回数を増やす程度しかできていなかった。


そこで、ゴーレムである。
ゴーレムにレーベルが家事を仕込む。
うまくいけば、レーベルクラスの家事能力を獲得できるのではないかと思っている。


それに、ゴーレムに仕事を仕込むのは初めての試みだ。
本を読む限り、人に教えていくのとやることは変わらない感じであったが、元来、人に物事を教えることは難しい。
なので最初は、想定している中ではまだ指導が分かりやすく、指導者となる者のレベルが高い分野を選択することにしたのである。




 ♢ ♢ ♢


レーベルにゴーレムを預けて2週間。
ゴーレムに教育を施す方法は、至ってシンプルだ。
教えたい動きを説明する、実演する、手を添えるなどして実行させる、といった具合に、手取り足取り教えていく感じだ。
ただ、ゴーレムは人間とは違い、一度成功した動きは、直ちに身につくのだ。
「やたらと覚えの悪い新人」、なんてものは存在しないのだ。


レーベルは、ゴーレムに仕込む仕事を限定したようで、最初に任せていた掃除、食糧庫や宝物庫の整理は、レーベルが自らやるのと遜色ない程度に達していた。




その後レーベルと相談し、最初のゴーレムと同じものを3体作製した。
それぞれ、料理関係、木の実や薬草、野菜の収穫関係、魔獣の解体関係を仕込まれ、完璧にこなしている。
レーベルの指導能力もあるのだろうが、それにしてもここまで完璧にこなせるようになるとは思わなかった。


さらに、カイトにも1体のゴーレムを預けている。
こちらは他の4体とは毛色が違う。
最初から戦闘能力を重視して鍛えたのだ。

つまり、魔石へ直接命令式を書き込む段階から、戦闘で使うような動きを多く盛り込んだ。
さらに魔法陣を使用後に、レーベルとカイトが2人がかりで、動きを仕込んだ。
そして身体も、芯をより強固にして素早い動きや衝撃に耐えられるようにしつつ、腕や脚を太くしてある。
手はそのまま人間と同じ感じだが、今後武器を取り付けてみても面白いかもしれない。


今ではカイトの訓練相手を務めることができるようになっている
動きを仕込む際に、なるべく細分化し、1つ1つ丁寧に仕込んでいくことで、それぞれ別の動きとして書き込まれる。
書き込まれた個別の動きをどのように組み合わせていくのかは、ゴーレムに委ねられることになる。
そのため各戦闘用の動きを、ゴーレムが状況に合わせて選択する。
結果、ゴーレムは良き訓練相手となるわけだ。
それに、今後は拠点やその周辺の警備を任せることができそうである。




最初は、魔石に魔力を貯めるところから苦労したが、一度完成したら、同じものを量産することは容易かった。
魔石に魔力を貯めていくのは簡単だし、魔石に命令式を書き込むのもかなりスムーズになった。
それに、書き込む命令式の内容が同じなら、2つの魔石に同時に書き込むことができる。
イメージする内容は同じであり、書き込みながら込めていく魔力の量は、片手で絞っているレベルなので、片手ずつやることも余裕なのだ。
慣れれば、同時にできる数をもっと増やせる気もする。

そのため、数十分で1体のゴーレムを作り出せるまでになっていた。
魔石は大量にあるし、土人形を作るのに必要なのは私の魔力のみ。
魔法陣を使用した後に行う指導は、数体まとめてやった方が効率が良いし、しばらくはゴーレムを量産するかね・・・・・・


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