危険な森で目指せ快適異世界生活!

ハラーマル

文字の大きさ
上 下
57 / 337
第2章:異世界の人々との出会い

第52話:必要なものを揃えよう2

しおりを挟む
「・・・仕組みはよくわかんないんだけどさ、『剣と盾』のトイレが清潔で臭わないし、良かったの。あれを再現することってできる?」
「・・・トイレでございますか。おそらく、スライムでございますね。『ディーズスライム』と呼ばれる、小さなスライムでございます」
「・・・・・・スライム?」
「はい。『剣と盾』のような高級宿や、貴族の屋敷など高級な物件に備え付けられているトイレには、スライムが使われています。トイレの下部に、スライム用のプールがあり、そこに排泄物が集まります。『ディーズスライム』は、プールに落とされた排泄物を取り込み、養分とします。そのため、プール内が過度に汚くなることもなく、臭いがひどくなることもありません」
「なる、ほど・・・。そのスライムって、買えたりする?」
「もちろんでございます。ただ、結構、値が張りますが・・・」
「どのくらい?」
「1匹で金貨2枚になります。野生の個体は少なく、貴族の家などで分裂し、増殖した分が売りに出される程度ですから」
「もちろん、買います。何匹くらいいるかな・・・?」
「我々の家ですと、5匹もいれば十分かと」
「うーん。じゃあ、7匹お願い」
「・・・承知致しました」

よし。これは思わぬ収穫だ。
日本の清潔なトイレに慣れている私には、拠点のトイレは耐え難いものがあった。
合計で140万円と、めちゃくちゃ高かったけど、これは譲れない。
帰ったら、トイレの改造だ!


その後、買いたいものは伝え終わったので、トレイロの案内で、2階の別室にある、新品の服の売り場に向かう。
トレイロの部下の人 —さっき紹介してくれたところによると、番頭さんらしい— は、マットレスなどの準備をしてくれている。

この世界では、古着を着るのが一般的だ。
新品の服を買って着るのは、貴族や、商人など一部の金持ちだけらしい。
より金持ちだと、オーダーメイドになる。
トレイロは、『セルの実』を売った私たちを、よくわからない金持ちと見ているらしく、新品を勧めてくれた。
まあ、新品でも値段的に買えそうだし、新品を買おう。

服売り場には、新品の服がいくつも掛けてあった。
買うのが貴族だったりするだけあって、やたらと装飾の派手なものが多い。
森の中で暮らしている私たちにとって、装飾は邪魔なだけなので、それぞれシンプルなものをいくつか選んで、購入しておく。


服を選び終わったので、1階に下りる。
1階に下りてまず、カイトの武器を見てみることにした。
武器なんて私にはよく分からないので、レーベルとカイトがいろいろ話しているのを後ろから眺めている。

「カイト様が習っていたのは、どのような剣の扱いでしょうか?」
「・・・えーっと、こういうのです」

カイトが示したのは、両刃の真っ直ぐな剣だ。
それほど長さはなく、片手でも扱える感じ?
陳列棚には、装飾の凝った華美なものから、装飾の全くない実用向け?なものまでいろいろ展示されている。
華美なヤツは、儀式用とか?

カイトが示した片手剣の1つを、レーベルが取り、カイトに渡す。
カイトは剣を受け取ると、棚の無い場所へ移動し、剣を軽く振ってみている。
なんか、様になってるなー

「どう?カイト」
「・・・うん。習ってたのは、こんな感じの剣だよ。少しだけど扱い方も覚えてるみたい」
「ふーん。レーベルは、この剣の扱い方を教えられるの?」
「無論でございます。この剣はオーソドックスな片手剣ですから、扱い方も心得ております。カイト様は、『身体強化』をかなり使いこなせておりますので、剣を組み合わせることで、より強くなれると思います」
「なるほどねー。じゃあ、買おっか。訓練用に、レーベルのも買っとこう」
「そうですね・・・。加えて、訓練用の木剣も購入しておきましょう」
「おっけー」
「お姉ちゃんは買わないの?」
「私用の剣?」
「うん。お姉ちゃんなら剣も扱えそうだし」

・・・・・・いや、無理だから。
日本人の高校生に剣の扱いは無理よ。
いや、確かに。ここに並んでる剣を扱って、敵をばったばったと切っていけたら気分いいと思うけどさ・・・




買うか。
お金あるし。
展示されている剣の値段を見ても、『セルの実』の収入で十分に買える。
買わないと、練習することもできないしね。

「よし、買おう。使えたらかっこいいし」
「・・・・・・う、ん」

カイトが何か言いたそうにしているけど、無視だ。
いろいろ眺めて、少し短めで反りのある、剣を選んだ。
なんでも、2本1セットの両手剣らしいので、2本まとめて買っておく。
使えなかったら、カイトにあげればいいし。

「じゃあ、これを」

カイトはやはり何かを言いたそうにしているけど、スルーしておく。


「後は、食材かな? 野菜とか、調味料とか買いたいね」
「そうですね。肉は最高級のものが簡単に手に入りますが、野菜や調味料は見当たりませんので」

食材売り場に移動して、並んでいるものを見ていく。
見た目自体は、トマトやナスなど、見たことあるような野菜もあれば、真っ赤な葉野菜など、見たことのない野菜もある。
まあ、よくわかんないから、レーベルになげておく。

レーベルは、野菜を大量に選び、さらにそれぞれの種を選んでいた。
拠点の空き地で育てるらしい
まあ、毎回買いに来るわけにもいかないもんね。


こうして、異世界で初めてのショッピングは大満足に終わった。
倉庫のようなとこに、頼んだものがまとめてあったので、リンに収納してもらう。
『ディーズスライム』だけは、『マジックボックス』に収納できないので、カゴに入ったまま受け取った。
『マジックボックス』には、生きている魔獣や魔物は収納できない。植物は収納できるのに不思議なものだ。
受け取った金貨から代金を支払ったが、まだまだ金貨は残っている。

「皆様。本日は誠にありがとうございました。また何か必要なものがありましたら、是非トレイロ商会へお越しください。また、『セルの実』など貴重なものを入手された際にも、売り場所としてご検討いただければ幸いです」
「こちらこそありがとう。また来るね」

そう言って、トレイロ商会を後にした。


 ♢ ♢ ♢


買いたいものは買えたし、リンの従魔登録もできた。
領都に来た目的は達成したわけだ。
このまま帰ってもいいんだけど・・・

「用事は済んだけど、どうする?」
「うーん、僕は特に用はないけど・・・」
「ポーラ、もうちょっと町を歩いてみたい!」
「そうだね。もう少し町を散策してみようか」


せっかくだし、もう少し見て回ることにしよう。

しおりを挟む
感想 116

あなたにおすすめの小説

国外追放だ!と言われたので従ってみた

れぷ
ファンタジー
 良いの?君達死ぬよ?

「宮廷魔術師の娘の癖に無能すぎる」と婚約破棄され親には出来損ないと言われたが、厄介払いと嫁に出された家はいいところだった

今川幸乃
ファンタジー
魔術の名門オールストン公爵家に生まれたレイラは、武門の名門と呼ばれたオーガスト公爵家の跡取りブランドと婚約させられた。 しかしレイラは魔法をうまく使うことも出来ず、ブランドに一方的に婚約破棄されてしまう。 それを聞いた宮廷魔術師の父はブランドではなくレイラに「出来損ないめ」と激怒し、まるで厄介払いのようにレイノルズ侯爵家という微妙な家に嫁に出されてしまう。夫のロルスは魔術には何の興味もなく、最初は仲も微妙だった。 一方ブランドはベラという魔法がうまい令嬢と婚約し、やはり婚約破棄して良かったと思うのだった。 しかしレイラが魔法を全然使えないのはオールストン家で毎日飲まされていた魔力増加薬が体質に合わず、魔力が暴走してしまうせいだった。 加えて毎日毎晩ずっと勉強や訓練をさせられて常に体調が悪かったことも原因だった。 レイノルズ家でのんびり過ごしていたレイラはやがて自分の真の力に気づいていく。

メインをはれない私は、普通に令嬢やってます

かぜかおる
ファンタジー
ヒロインが引き取られてきたことで、自分がラノベの悪役令嬢だったことに気が付いたシルヴェール けど、メインをはれるだけの実力はないや・・・ だから、この世界での普通の令嬢になります! ↑本文と大分テンションの違う説明になってます・・・

大聖女の姉と大聖者の兄の元に生まれた良くも悪くも普通の姫君、二人の絞りカスだと影で嘲笑されていたが実は一番神に祝福された存在だと発覚する。

下菊みこと
ファンタジー
絞りカスと言われて傷付き続けた姫君、それでも姉と兄が好きらしい。 ティモールとマルタは父王に詰め寄られる。結界と祝福が弱まっていると。しかしそれは当然だった。本当に神から愛されているのは、大聖女のマルタでも大聖者のティモールでもなく、平凡な妹リリィなのだから。 小説家になろう様でも投稿しています。

豊穣の巫女から追放されたただの村娘。しかし彼女の正体が予想外のものだったため、村は彼女が知らないうちに崩壊する。

下菊みこと
ファンタジー
豊穣の巫女に追い出された少女のお話。 豊穣の巫女に追い出された村娘、アンナ。彼女は村人達の善意で生かされていた孤児だったため、むしろお礼を言って笑顔で村を離れた。その感謝は本物だった。なにも持たない彼女は、果たしてどこに向かうのか…。 小説家になろう様でも投稿しています。

【完結】それはダメなやつと笑われましたが、どうやら最高級だったみたいです。

まりぃべる
ファンタジー
「あなたの石、屑石じゃないの!?魔力、入ってらっしゃるの?」 ええよく言われますわ…。 でもこんな見た目でも、よく働いてくれるのですわよ。 この国では、13歳になると学校へ入学する。 そして1年生は聖なる山へ登り、石場で自分にだけ煌めいたように見える石を一つ選ぶ。その石に魔力を使ってもらって生活に役立てるのだ。 ☆この国での世界観です。

聖女の力を隠して塩対応していたら追放されたので冒険者になろうと思います

登龍乃月
ファンタジー
「フィリア! お前のような卑怯な女はいらん! 即刻国から出てゆくがいい!」 「え? いいんですか?」  聖女候補の一人である私、フィリアは王国の皇太子の嫁候補の一人でもあった。  聖女となった者が皇太子の妻となる。  そんな話が持ち上がり、私が嫁兼聖女候補に入ったと知らされた時は絶望だった。  皇太子はデブだし臭いし歯磨きもしない見てくれ最悪のニキビ顔、性格は傲慢でわがまま厚顔無恥の最悪を極める、そのくせプライド高いナルシスト。  私の一番嫌いなタイプだった。  ある日聖女の力に目覚めてしまった私、しかし皇太子の嫁になるなんて死んでも嫌だったので一生懸命その力を隠し、皇太子から嫌われるよう塩対応を続けていた。  そんなある日、冤罪をかけられた私はなんと国外追放。  やった!   これで最悪な責務から解放された!  隣の国に流れ着いた私はたまたま出会った冒険者バルトにスカウトされ、冒険者として新たな人生のスタートを切る事になった。  そして真の聖女たるフィリアが消えたことにより、彼女が無自覚に張っていた退魔の結界が消え、皇太子や城に様々な災厄が降りかかっていくのであった。

【完結】魔力がないと見下されていた私は仮面で素顔を隠した伯爵と結婚することになりました〜さらに魔力石まで作り出せなんて、冗談じゃない〜

光城 朱純
ファンタジー
魔力が強いはずの見た目に生まれた王女リーゼロッテ。 それにも拘わらず、魔力の片鱗すらみえないリーゼロッテは家族中から疎まれ、ある日辺境伯との結婚を決められる。 自分のあざを隠す為に仮面をつけて生活する辺境伯は、龍を操ることができると噂の伯爵。 隣に魔獣の出る森を持ち、雪深い辺境地での冷たい辺境伯との新婚生活は、身も心も凍えそう。 それでも国の端でひっそり生きていくから、もう放っておいて下さい。 私のことは私で何とかします。 ですから、国のことは国王が何とかすればいいのです。 魔力が使えない私に、魔力石を作り出せだなんて、そんなの無茶です。 もし作り出すことができたとしても、やすやすと渡したりしませんよ? これまで虐げられた分、ちゃんと返して下さいね。 表紙はPhoto AC様よりお借りしております。

処理中です...