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第1章:異世界の森で生活開始

第33話:実験しよう

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レーベルを迎えた翌日、私は、新たな食材を求めて、再び森を探索することにした。
今日も、昨日と同様に、食材探しをしながら、『竜人化』の特訓などをするため、カイト達はお留守番だ。
レーベルがいるから、2人を置いていくのも安心できる。
レーベルは、家や拠点を掃除しつつ、補強や修繕をしてくれるらしい。レーベル曰く、「これも執事の仕事です」、だそうだ。
・・・まあ、彼がやってくれるなら安心だろう。

カイトとポーラは、それぞれ魔法や『身体強化』での戦闘の練習をすると言っていた。なんでも、レーベルが訓練相手を務めてくれるらしい。
・・・レーベル有能すぎないか?

ちなみに、カイト達がすっかりレーベルに懐いていることに若干拗ねて、「1人で行く私の心配はしてないの?」と、面倒くさい女をしてみたところ、

「お姉ちゃん、めっちゃ強いし。やり過ぎないかだけが心配」
「コトハ姉ちゃんは、誰にも負けないもん!」
「コトハ様がこの森の魔獣ごときに負けるはずがございません」

と、なんとも、嬉しい?コメントが返ってきた。
・・・・・・カイトのコメントの後半部分は解せないが。



というわけで、今日もリンと2人で探索だ。
昨日は、拠点の南側に行ってみたので、今日は、西側へ行ってみることにする。
東側は、カイト達の流れてきた川があり、川を渡らないと、そこまで探索できる範囲が広くないので、後回し。北側は、最初からなにかと探索しているのだ。

西側へ進んでいく際に、昨日思いついた、『竜人化』を『身体装甲』で覆うことができるのか、実験してみる。
左腕を、指先まで『竜人化』、その上から上着を羽織って、手袋を付けるイメージして、『身体装甲』で覆ってみた。

・・・・・・できた、けど。
『竜人化』により、腕には鱗が生えて、手は指が長くなり、爪も伸びている。そのため、上着を羽織った腕の部分は、鱗がある分だけ腕が太くなりピチピチに、左手は手袋の各指先から爪が飛び出すような形になった。

まあ、失敗だ。求めていたのは、こういうことじゃない。
これでは、『竜人化』していることは隠せても、何か変なことをやろうとしているのは見え見えだ。完全に変なヤツである。
余計に警戒させてしまう・・・

失敗はしたが、第一段階として、『竜人化』の上から『身体装甲』を纏えることは確認できた。
ただ、『身体装甲』によって、『竜人化』により変化した特徴を押さえつけることはできないらしい。
となると、腕の部分は、ローブのような、ゆったりした形状にすれば、いいかな。
そう思い、左腕を『竜人化』させたまま、『身体装甲』でローブを羽織ってみた。
うん、うまくいった。

・・・・・・ただ、ローブを羽織って、その下が竜の鱗に覆われていて、手まで竜のそれに変化するとか、どっかのラスボスよね。
なんか、高出力の魔法でオーバーキルかましたり、竜の爪で切り裂いたりと、私、悪役要素多くない?

いや、まあ、この森の生き物にとっては悪役か。
でも、生きるためだし仕方がない。
「殺すのが可哀想だから、肉は食べない」とかいう偽善を振りまいている余裕はない。
相手は基本的に殺しにくるし、食うか食われるかだ。




とりあえず、森を歩くときは、全身をできるだけ『竜人化』により鱗で覆った上で、『身体装甲』でローブを羽織ることにした。ローブの下は、下着の上にタイト目のシャツとレギンス。靴はスニーカーだ。
これで、基本的に動きやすく、万が一『自動防御』を貫通する攻撃で奇襲されても、鱗が守ってくれるはずだ。そして、いざ戦闘となれば、ローブを脱いで、手足を『竜人化』させればいい。
『身体装甲』の後から『竜人化』を発動させると、『身体装甲』は消えるみたいなので、靴を履いていても問題ない。


 ♢ ♢ ♢


森の探索スタイルが確立され、喜々として森を歩いていたが、今日はやたらと、ファングラヴィットやフォレストタイガーに遭遇する。
大体2時間で、合計7体目だ。もちろん全部倒している。
最初は、ファングラヴィットやフォレストタイガーに遭遇すると、恐怖感と、地球上に存在しない生物に対する興奮がどこかあった。しかし、もはやそんな感情は欠片もなく、倒すのも作業と化している。より多く狩り主食にしているファングラヴィットなど、ただの“肉”だ。


・・・それにしても、なんで今日はこんなにファングラヴィットやフォレストタイガーに遭遇するんだろう。
普段の行動範囲からは出ているが、だからといってこんなに遭遇した経験はない。
それに、今日は魔獣の方から向かって来るのだ。

これまでは、ファングラヴィットは食事をしていたり、寝ていたりするところを強襲して倒していた。
敏感なのかフォレストタイガーは向こうから来るが、最近は全く見なかった。
それなのに、今日は向こうから・・・






・・・・・・オーラが無くなってる?
私から漏れ出した、魔力。それを感じた魔獣は、私から逃げていく。だから、最近は拠点の近く、行動範囲にファングラヴィットはいなかった。
フォレストタイガーも、私のオーラに気がついて、近づかないようにしていたんだろう。


そうすると、今日は近づいてくるのは、オーラが無いからでは?
でも、どうして?

・・・・・・・・・・・・思い当たるのは、『身体装甲』だ。
これまでも、森に行くときは、当然『身体装甲』で動きやすい服を作って着ていた。しかし、動きやすさ重視だったし、この森は結構歩きやすいので、全身を覆っていたわけではなかった。覆っていたのは大体、身体の7割くらいだ。
それに対して、今日は? 今、『身体装甲』の外に出ているのは、頭だけだ。
つまり、『身体装甲』で覆っている部分が多いほど、オーラを遮断できるということ?


うーん。なんか違う気がする。
『身体装甲』は関係していそうだけど、覆っている面積というのが引っかかる。
確かに、これまでよりも、今日のほうが、身体を覆っている面積は大きい。けど、劇的に変わる程かと言われれば、そうじゃない。


じゃあ、他に違うのは?
・・・・・・・・・鱗だ。今、私の身体は、顔面以外ほとんど鱗に覆われている。
厳密にいうと、鱗を身体に生やしてから、『身体装甲』で身体を覆っている。
それも、鱗が見えないように、鱗の上は全部・・・・・・


 ♢ ♢ ♢


いろいろと、可能性が出てきたので、『竜人化』や『身体装甲』を、切り替えて、どの状態が一番魔獣に遭遇するか、比較実験をしてみた。
その結果、やはり森の探索スタイル、『竜人化』して全身になるべく鱗を生やして、その上から『身体装甲』を纏うスタイルが、一番魔獣に遭遇した。つまり一番オーラを抑えられている。
逆に、一番魔獣と遭遇しなかったのは、意外なことにこれまでの移動スタイルではなくて、鱗のみのスタイルだった。どうやら、鱗は単にオーラを抑えるわけではなさそうだ。

結果として、少なくとも『身体装甲』に一定のオーラを抑える効果があるのは間違いない。あとは、鱗とオーラの関係が分からないと、見えてこない。
まあ、実験で、魔獣を狩りまくったので、今日はここまでにして、帰るとしよう。





・・・・・・帰ると、狩ってきた魔獣の多さに、「やっぱりやり過ぎた」とカイトから冷たい視線を浴びた。


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