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第4話 立松千宙(16歳)の日記=椿原六花(15歳)
〈10月11日〉六花の告白に迷う
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#六花の友だちの林雪乃の家族と、ひょんな事から奥多摩に行く事になった。雪乃の両親と幼馴染だという小金井央と6人で、父親の会社の保養所に1泊する事になった。それと言うのも、六花がどうしても一緒に行ってほしいと言ってきたからだ。六花からの頼み事は珍しく、林間学校も思い出されて快く承諾した。
奥多摩での1泊は、思っていたより楽しかった。小金井と雪乃の馴れ初めを聞いて、彼らと同じ中2で付き合い出した七海の事を思い出した。六花はそれを悟ったのか、俺の過去の恋愛経験を探ってきた。俺は思わず七海との事を漏らしていたが、話さない方が良かったかもと後悔している。
夜になって、六花と二人で星空を眺めながら話をした。途中で犬の遠吠えが聞こえてきて、彼女が腕にしがみ付いてきた。俺が「胸が当たって変な気持ちになるよ」と冗談混じりに言うと、彼女はあわてて離れてしまった。久し振りの女の子の胸の感触は心地良く、そのまま味わっていたかったのに惜しい気がした。その後で、六花が「好きだから」と口にし、俺が狼になっても怖くはないと言っていた。狼になってそのまま押し倒していたなら、二人の関係はどうなっていたのかを想像してみた。#
10月の連休の土日は部活も休みで、4人で電車とバスを乗り継いで奥多摩に出掛けた。雪乃の両親は、夕方に車で来て合流する事になっていた。
林雪乃は六花と同じクラスでいつも一緒に行動し、お互いに悩み事を打ち明ける仲だった。背は六花よりも高く、長い髪と目鼻立ちのはっきりした顔が際立っていた。子供っぽい六花に比べ、大人っぽい身体つきをしていた。一方、小金井央は雪乃の幼馴染であるが、中2の時から正式に交際を始めた。北王子高校の1年生で、卓球部に所属していた。
☆六花☆千宙さんに好意を持っている事を雪乃に告げると、それは恋だと言われた。自分では恋がどういうものか分からずに戸惑っていると、彼女がお膳立てをしてくれた。折角の機会を無にする訳にはいかず、私は彼に告白する決心をしていた。
昼間は千宙さんの恋愛経験を聞いて、おそらく心の中にはその彼女が潜んでいるのだと確信した。私は自分の気持ちを言い出せないままだった。お風呂の中で雪乃から「例の事は話せたの?」と訊かれ、「まだだ」と答えると、「この後二人だけにして上げる」と言われ、なぜか緊張していた。☆☆☆☆☆
雪乃の配慮で二人だけになった六花と千宙は、奥多摩の空に輝く星空を眺めていた。千宙の腕にしがみ付く場面もあったが、彼の「胸が当たって」という言葉ですぐに離れていた。
☆六花☆とうとう好きだと告白したが、「キスしたいと思うか」と訊かれて心臓が跳び出しそうになった。まだ恋がどういうものかも知らない私に、どういうつもりで訊いたのかは分からない。「したい」と言ったら、したのだろうか。やっと告白できたのに、まだ怖いからと答えてしまった。新しい風を呼び込むどころか、私から風をよけてしまった。彼の腕にしがみ付いたまま、キスを受け入れるべきだったのだろうか。☆☆☆☆☆
二人が話をしていたのは1時間半余りで、その間雪乃と央は部屋に籠った切りだった。二人が部屋から出て来たのは12時近くで、男子と女子に分かれて部屋に入った。さっきまで二人がいた部屋に六花が入ると、今までに嗅いだ事のない匂いがしたが、ベッドは綺麗に整えられていた。六花が「何してたの」と訊いても、雪乃は「別に」と答えただけだった。
奥多摩での1泊は、思っていたより楽しかった。小金井と雪乃の馴れ初めを聞いて、彼らと同じ中2で付き合い出した七海の事を思い出した。六花はそれを悟ったのか、俺の過去の恋愛経験を探ってきた。俺は思わず七海との事を漏らしていたが、話さない方が良かったかもと後悔している。
夜になって、六花と二人で星空を眺めながら話をした。途中で犬の遠吠えが聞こえてきて、彼女が腕にしがみ付いてきた。俺が「胸が当たって変な気持ちになるよ」と冗談混じりに言うと、彼女はあわてて離れてしまった。久し振りの女の子の胸の感触は心地良く、そのまま味わっていたかったのに惜しい気がした。その後で、六花が「好きだから」と口にし、俺が狼になっても怖くはないと言っていた。狼になってそのまま押し倒していたなら、二人の関係はどうなっていたのかを想像してみた。#
10月の連休の土日は部活も休みで、4人で電車とバスを乗り継いで奥多摩に出掛けた。雪乃の両親は、夕方に車で来て合流する事になっていた。
林雪乃は六花と同じクラスでいつも一緒に行動し、お互いに悩み事を打ち明ける仲だった。背は六花よりも高く、長い髪と目鼻立ちのはっきりした顔が際立っていた。子供っぽい六花に比べ、大人っぽい身体つきをしていた。一方、小金井央は雪乃の幼馴染であるが、中2の時から正式に交際を始めた。北王子高校の1年生で、卓球部に所属していた。
☆六花☆千宙さんに好意を持っている事を雪乃に告げると、それは恋だと言われた。自分では恋がどういうものか分からずに戸惑っていると、彼女がお膳立てをしてくれた。折角の機会を無にする訳にはいかず、私は彼に告白する決心をしていた。
昼間は千宙さんの恋愛経験を聞いて、おそらく心の中にはその彼女が潜んでいるのだと確信した。私は自分の気持ちを言い出せないままだった。お風呂の中で雪乃から「例の事は話せたの?」と訊かれ、「まだだ」と答えると、「この後二人だけにして上げる」と言われ、なぜか緊張していた。☆☆☆☆☆
雪乃の配慮で二人だけになった六花と千宙は、奥多摩の空に輝く星空を眺めていた。千宙の腕にしがみ付く場面もあったが、彼の「胸が当たって」という言葉ですぐに離れていた。
☆六花☆とうとう好きだと告白したが、「キスしたいと思うか」と訊かれて心臓が跳び出しそうになった。まだ恋がどういうものかも知らない私に、どういうつもりで訊いたのかは分からない。「したい」と言ったら、したのだろうか。やっと告白できたのに、まだ怖いからと答えてしまった。新しい風を呼び込むどころか、私から風をよけてしまった。彼の腕にしがみ付いたまま、キスを受け入れるべきだったのだろうか。☆☆☆☆☆
二人が話をしていたのは1時間半余りで、その間雪乃と央は部屋に籠った切りだった。二人が部屋から出て来たのは12時近くで、男子と女子に分かれて部屋に入った。さっきまで二人がいた部屋に六花が入ると、今までに嗅いだ事のない匂いがしたが、ベッドは綺麗に整えられていた。六花が「何してたの」と訊いても、雪乃は「別に」と答えただけだった。
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