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第2話 梅枝七海(14歳) の日記=立松千宙(14歳)

〈2月14日〉崖から突き落とされる

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 #バレンタインの今日、千宙にチョコレートを渡したらすごく喜んでくれた。その時、恋愛の話題になって、「俺の頭の中に、気が付くと七海がいつもいて、七海のことをもっと知りたいと思ってる」と彼は言っていた。私も同じで、彼の事を考える時間が増えているのは、恋する確かな証拠に違いないと思った。
 千宙と楽しく過ごして家に帰ると、転勤が決まった事、4月から静岡の中学校へ転校になる事をパパに告げられた。それまで好きだとか恋だとか語り合って楽しい時間を過ごしていたのに、崖から突き落とされる気分だった。私は立ち直れないくらいのショックで、千宙に伝えるのが辛くて涙が止まらない。
私はいつも千宙を傷付け悩ませてばかりで、何一つ彼女らしい事をして上げていない。以前、百瀬先輩の事で怒らせてしまい、しばらく気詰まりな雰囲気だった。だから、お正月に百瀬先輩と初詣に行き、キスを迫られた事は口が裂けても言えなかった。その日は先輩から逃げるようにして電車に乗り、気が付くと千宙の家に来ていた。初詣に行ったついでだとお守りを渡したが、本当は彼の胸で泣きたかった。先輩の言葉に乗ってしまった自分が馬鹿で、変に誤解されても嫌だったので、何があったかは話さなかった。もし話していたならば、私の勝手な行動のせいで、また彼をやきもきさせていたと思う。そして、今日の転校の話は、彼の心をまた傷付けてしまうだろうと思うと、とても言い出せない。#

 クリスマスに会って以来、二人は会えないまま正月を迎えた。七海は家の手伝いに、千宙は部活に忙しく過ごしていた。正月の三が日を過ぎて、百瀬竹彦が七海の家を訪ねて来た。初詣に行こうという誘いを七海は断ったが、しつこく誘われて行く事になった。お詣りをした後で再び告白してきた百瀬に、「そんな気はない」と断ると肩を引き寄せられた。七海は逃れようとしたが、彼の力は思ったよりも強く、そのまま肩を抱かれて強引に神社の裏に連れ込まれた。無理矢理キスしようとする彼の胸を思い切り突き飛ばし、必死で駅まで走って電車に乗った。
★千宙★突然七海が家に来て驚いた。いつもと様子が違って、あせっているような困っているような態度だった。初詣に行って来て、お守りを渡しに寄ったと言っていたが、学校が始まってからでも良いような気がした。それに誰と行ったのかも気になった。家に上がるように言ったが、そのまま帰ってしまった。★★★

 3学期が始まってから、七海は百瀬と会う事はなかったが、その時の嫌な思いを中々忘れる事ができなかった。千宙にも相談できず、暗い気分で落ち込んでいた。
 バレンタインの日には、七海も嫌な事は忘れて立ち直っていた。千宙だけに用意していたチョコレートを渡し、恋愛の話題で盛り上がった。
★千宙★俺の心の中には、いつも七海がいる。七海も俺の事を、いつも考えていると言っていた。お互いの心が通じ合っている証拠で、俺たちは恋し合っている。恋人同士と呼ぶにはまだだが、近い内にそのための行動を起こそうと思っている。まずはキスをして、それから先はそんなに焦らなくとも、七海とはずっと一緒だ。★★★

 千宙と悩ましい話をしてモヤモヤした気分で帰宅した七海は、父親から転校の話を告げられた。引っ越して学校を変わるという事よりも、ここまで育んできた千宙との恋が、この先どうなるのか不安で仕方なかった。そして、千宙に話せないまま一人で悩み、無駄に時間は過ぎていった。
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